栗看

~くりかん~

訪問看護ミニ小説『いえナース』第1話「訪問看護ってなに?」

いえナース 第1話「訪問看護って何?」

 

【自宅】
主人公:

今日から訪問看護ステーションで働くぞ〜。

全く経験したことないから緊張するな‥頑張るぞ!

 

【電車】
主人公:

はじめての電車通勤だ!

東京の電車って、混むんだなぁ‥少し苦手かも‥

これからしばらく満員電車で通勤かぁ‥

働く前から心配になってきた‥

 

【またたび訪問看護ステーション(事務所内】
主人公:

事務所に着いた!
はぁ~どきどきするな〜…

 

おはようございます!

 

スタッフ一同
おはようございま〜す

 

白浜 優子:
あっ!今日から配属になった南(みなみ)さんですね!管理者の白浜 優子(しらはま ゆうこ)です!宜しく!

 

南 小町:
はい!南 小町(みなみ こまち)と申します!宜しくお願いします!

 

白浜:
初日だから、
とりあえず午前中は仕事の内容を簡単に説明するからね!

午後は、訪問看護の同行についてもらうから、よろしく!

たくさん経験つんでいこうね!

 

南:
初日からもう訪問についていくんですね…!(大汗)

わかりました!宜しくお願いします!

 

白浜:
訪問の同行は、プリセプターの江見さんについていってね!

 

江見:
おはようございます〜
江見 由美恵(えみ ゆみえ) です。よろしくお願いします。

 

南:
こちらこそよろしくお願いします!(下から読んでも、えみゆみえ だ‥!)

 

江見:
わからないことだらけだと思うけど、困った事があれば誰でも相談してね!

 

南:
ありがとうございます!(優しいプリセプターだ…!よかった〜泣)

 

【午前】

白浜:
それじゃあ簡単に訪問看護について説明するね!

 

訪問看護は、看護師がお家に訪問して、ご利用者様に看護する仕事だよ!

 

身体を拭いたり、着替えたり、お風呂を手伝ったりのような内容もあるし…

 

痰が出せない人の痰を吸引したり…

 

糖尿病の方にインスリンの打つのを手伝ったり…

 

便秘の人に浣腸をしたり…

 

点滴の指示があれば、点滴をしたりする。

 

まぁ病院や施設と環境が違うだけで、ほとんどやることは同じかな!

 

あとはお家によって、看護で使う物品の内容や、ケアのやり方が違うね!

 

お家のやり方に合わせて看護をするところが、病院とは結構違うかもね!

 

南:
そうですね…お家によって看護の方法が違う…そこが一番難しそうです。

 

白浜:
そうだね。はじめが難しいのはどこでも一緒だから、まずは慣れること!

 

訪問の同行の時に、江見さんの看護の動きをよく見てみるといいよ!

 

南:
はい!わかりました!
ありがとうございます!

 

それでは、訪問先のご利用者さまの情報収集をしておいた方が良いでしょうか?

 

白浜:
今日はとりあえずついてきてもらうだけだから、情報収集は、あとででいいよ!

 

それよりも、訪問先のお家を見て、訪問看護の雰囲気をしっかり感じ取ってほしいかな!

 

文字ではわからない情報や気付きがたくさんあると思うよ!

 

南:
なるほど…わかりました!
ありがとうございます!

(あえて情報なしでってことか…病院では情報収集からスタートが当たり前だったから、すごい新鮮だな…)

 

【午後:事務所の外】

 

南:
江見先輩!訪問に同行する南です!

これからよろしくお願いします!

 

江見:
よろしくお願いしま〜す。

訪問は電動自転車でいくよ〜。

電動自転車乗ったことある?

 

南:
いやー…ないですね…。

 

江見:
バッテリーの付け替えと、電源のON/OFFができれば、あとは楽ちんに走れるだけだから、何にもこわくないよ!

 

南:
そうなんですね!わかりました!

 

【移動中】

 

南:
本当だ!これなら楽ちんですね!

 

江見:
でしょ!

ただし、バッテリー切れには注意してね!

充電がきちんとできてないと、次の日は持たないよ〜

あと、結構バッテリーが重いから、足とかに落とさないようにね〜

 

南:
雨とかで手が滑ったりする時はちょっと怖いですね…。気をつけます!

 

【訪問先の家:外】
江見:
ついたよ〜。お疲れ様!

 

南:
(とうとうご利用者さまのお家に訪問する時がきた…!緊張するな〜)

 

ピンポーン!

 

東条:
はーい。

 

江見:
こんにちは〜
またたび訪問看護でーす

 

ガチャ。

 

東条:
どーもー
よろしくお願いします。

 

江見:
よろしくお願いします。
今日は2人できました!

 

南:
今月から配属になりました 南と申します!今日は江見さんの同行で参りました!よろしくお願いします。

 

東条:
新人さんですね。お話は聞いてますよ。よろしくお願いします。

 

南:
(東条 勝美 とうじょう かつみ さん‥、

情報はとらなくていいって、言われたけど、心配でこっそりカルテを拝見したところ、年齢85歳、主疾患は慢性心不全で、介護度は要支援1。
奥さんには先立たれて一人暮らしだけど、生活は1人で出来ていて、もの忘れ等の認知機能低下もなく、概ね元気な方らしい‥。元気な方への訪問看護って、一体、何をするんだろう‥)

 

【訪問先の家 リビング】

 

江見:
すみません、先に洗面所をお借りします。

 

東条:
どうぞ。

 

【洗面所】

 

南:
まずは手を洗うんですね。

 

江見:
洗面所だけでなく、お家によっては台所をお借りして手を洗うこともあるよ。

 

手を洗ったあとは洗面台を汚したままにしないように、できれば水滴などは簡単に拭いたほうが印象が良いかな。

 

洗面所を使ってほしくないという方もいるから、その時は手指消毒用のアルコールを使うよ。

 

なので、携帯用のアルコールスプレーは必要だね。それほど使わないけど。

 

南:
アルコールスプレー、念のため持っておくようにします!

 

【訪問先の家 寝室】

 

江見:
それではまず、お熱と血圧を測りますね。

 

東条:
お願いします。

 

 

江見:
お熱(体温)が36.6℃
脈(脈拍)が72回/分
酸素(SpO2)が97%
血圧が172/68ですね。

 

南:
んっ!血圧が高いですね。

 

東条:
この頃はなんだか血圧が高くなります。

朝は自分で血圧測ったんですが、182/82で、昼よりも高かったんです。

症状はなんともないのですが、気持ちの問題なのか、なんとなく疲れがありますね…。

 

江見:
症状は疲れが少しあるんですね。

生活面では特に変わったことはありませんか?

 

例えば…

最近塩分が多い食事がちょっと増えたとか…

そういうのは特にないですか?

 

東条:
そうですね…。
それほど食事の内容は変わっていないと思うんですけどね。

 

江見:
そうなんですね。水の飲む量も特にいつもと変わりませんか?

 

東条:
うーん‥
そういえば、少しコーヒーを飲むのが増えたかもしれません。コーヒーは疲れた時に飲んじゃうんですよね‥。

 

江見:
そうでしたか。東条さん、コーヒーお好きですもんね。でも血圧は気にされているから、いつもカフェインレスを飲まれていますよね。

 

東条:
ええ‥。でも最近はカフェインレスが物足りなくて、普通のコーヒー飲んじゃってました。すみません。

 

江見:
いえいえ、やっぱりたまにはカフェインありも飲みたいですよね。

 

カフェインは血管収縮作用で血圧が上がるので、多すぎると少し心配になりますけど、たまになら、いいんじゃないですかね。

 

カフェインも、血圧に少し影響ありますけど、もしかしたら水分量も今週は多かったかもしれませんね。

 

東条:
ですね‥足も少しむくみが強いみたいなので、やっぱり、そういうことですよね。気をつけます。

 

江見:
まー気にしすぎるのも不安が強くなっちゃうので、ひとまずはお水の飲む量を少し気にしつつ、体重やむくみをチェックしながら過ごしていきたいですね。

 

あまり疲れがひどかったり、息切れ等があれば早めの受診でもいいかもしれません。

 

東条:
わかりました。気を付けていきます。血圧もそれで下がると嬉しいんですけどね。

 

江見:
そうですね。血圧はまぁ180くらいが続くようなら、血圧の薬が少し調整された方が安心かもしれません。そこは先生に相談ですね。

 

東条:
江見さん、水の飲み過ぎに気をつけたいんですが、何か良い工夫がありますかね?

 

江見:
うーん。
飲む水の量を記録して気をつけていくのが基本ですけど、それだけだと我慢が大きくて、結構きついんですよね。

 

グビグビと飲んでしまうと、どうしても飲み過ぎになりやすいですから、そうならないような飲み物を飲んでいくのがいいかもしれません。

 

東条:
飲み過ぎになりにくい飲み物…ですか。例えば、どうしたらいいでしょうかね‥

 

江見:
東条さんの体に合うもので、というのが前提ですけど、

 

例えば、
氷水でキンキンに冷やしたものをちょっとずつ飲むとか、


コーヒーをぬるくせずに熱々にしてチビチビ飲むとか、


酸っぱめのレモネードを作って飲むとか、


すぐゲップがでるような強めの炭酸水を少しずつ飲むとか、


そういうアバウトな工夫でいいんですよ。

 

腎臓のはたらきが落ちている方の場合は、ミネラルや電解質も気にしつつ、ですけどね。

 

東条:
なるほど。コーヒーはいつも少しぬるーくして、すぐグビッと飲んじゃうので、今日からは熱々にしてチビチビ飲もうと思います。

 

江見:
そうですね。いきなりコーヒーを完全にやめるまではしなくていいので、飲む水分量が増えすぎないように気をつけてみてください。それでも血圧やむくみや体重に変化がなかったら、またその時考えましょう。

 

東条:
ありがとうございます。江見さん、いつも私の心に寄り添ってアドバイスをくれて、本当にありがとう。

 

コーヒーもあんまり良くないって分かってるんだけど、やっぱり好きなんだよねぇ‥

 

江見:
好きなものは好き、ですよね。

私は、東条さんが好きだったり大切にしているものを、私も好きになって大切にしていきたいなって思うんです。

 

だから、東条さんがコーヒーが好きだというなら、その気持ちを無視することはしません。

 

東条さんの好きなものを取り上げたりすることはしたくないんです。

 

東条さんが好きなものを大切にしながら、東条さんを支えていけたらなって、思うんです。

 

血圧を下げる方法なら、まだ色々選択肢がありますから、安心して大丈夫ですよ!いざとなったらいい血圧下げる薬もありますから笑!

 

一緒に頑張っていきましょう〜

 

東条:
はい!ありがとうございます!

 

江見:
それでは、お疲れということなので、今日も元気にリハビリしましょうね♪

 

東条:
はいっ!お手柔らかにお願いします〜

 

【訪問先の家:家の前】

 

南:
(その後、訪問時間までストレッチや筋力トレーニング、リラクゼーションを江見さんが東条さんに行いました。東条さんはとても満足されたご様子でした。)

 

江見さん、ありがとうございました!

 

東条さん、江見さんのアドバイスにもリハビリにもとても満足されてたみたいでしたね!

 

江見さん、すごいです。

 

江見:
いやぁ〜東条さんとはいつもあんな調子だよ!
でも血圧はやっぱり心配だから来週の訪問までに少し落ち着くといいんだけどね。
本当に危ないかなって時は、シビアに話し合わないといけないときもあるからね〜。

 

南:
そうですよね‥。カフェインも、あまり心臓には良くないし、禁止されることもありますもんね。

 

江見:
まぁその時はその時で、色々考えるから、なんとかなります!

 

南:
(そのへんは適当なんだな‥

でも、もし訪問でお話した時に、コーヒーを飲むのを止めるようにと言ったとしたなら、東条さんはどんな気持ちになったんだろう‥。きっと悲しい気持ちになっただろうな‥)

 

南:
江見さん、もし来週東条さんに訪問した時に、血圧がまだ高いままだったら、その時は、コーヒーをを止めるように言いますか?

 

江見:
うーん、そうだなぁ。
カフェイン禁止!
って先生に言われたら仕方ないけど、そうじゃないなら、コーヒーを止めて、とは言わないね。

 

訪問の時も言ったけど、
私は、「その人が好きだったり大切にしているものを、私も好きになって大切にしたい」んだ。

 

だから、言わない。

 

他の手段を考える。

 

考えればいっぱい手段はあるからさ。

 

そこを考えるのが、訪問看護師の役割だと思うよ?

 

南:
江見さん‥
ありがとうございます。

それが江見さんの「看護観」なんですね。すごく、わかる気がします。

 

江見:
うん。

訪問看護は自分の「看護観」がそのまま看護になるんだよ。

南さんも訪問していけば、自分の「看護観」が明らかになると思うよ!

 

南:
私の看護観‥

病院にいた時は、ただやらなきゃいけないことをミスらないようにっていう思いで、一生懸命やるだけだったけど‥

一生懸命やれば、それだけでいいやと思ってたけど‥

看護観が分かれば、もっと良い看護ができるのかな‥

 

頑張らなきゃ!

 

【またたび訪問看護ステーション 事務所内】

 

南:
(その後、看護師の先輩が続々と訪問から戻ってきて、申し送りが行われました。訪問看護師初日の出勤はあっという間に時間が過ぎていきました‥)

 

白浜:
南さん、今日はお疲れ様でした!
時間だからもう帰っていいよ!
明日もよろしくね!

 

南:
はい!ありがとうございます!お疲れ様でした!明日も宜しくお願いします!

 

【電車】

 

南:
(‥仕事が終わったら、気が抜けて急に疲れがどっときた‥まだ私、仕事っていう仕事してないんですけど‥)

 

【自宅】
南:

家、到着‥
疲れた‥もう寝たい‥
生きるって、大変だな‥

‥生きるって、大変‥か‥

そりゃそうだよな‥病気がなくて生きていても大変なんだから‥

 

病を抱えている人はもっと‥

 

はー、
泣き言、言ってられないなぁ〜‥

 

(江見):
(訪問看護は、自分の「看護観」がそのまま看護になるんだよ!)

 

南:
私はどうして看護師になったのかな。

 

私の看護観…か…

 

なんとなくだけど、
だれかが生きていくことに、役に立ちたい

って、今、思ったな。

 

だれかの役に立てたって、本気で実感してみたい。

 

そういうのでも、いいのかもしれないな。

 

誰かを「自分の力」で助けたい。

 

だからきっと、私は訪問看護師になろうとして、今日から訪問看護師になったんだよな。たぶん。

 

 

よーし!

 

私は今を大変に生きている人たちを、全力で支えていく人間に、なるぞー!


‥そのためにはまず、速攻で寝なきゃっと‥!

 

おやすみなさい‥zzz‥

 

第1話 おわり

 

続く