こんちには、栗鈴です。
今回の記事は、『筋萎縮性側索硬化症(ALS)の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』になります。
よろしくお願いします。
- はじめに
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態生理
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因・増悪因子
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疫学・予後
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の検査値
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の合併症
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の看護問題の例
- #1 嚥下障害のために、誤嚥・気道閉塞の危険性がある
- #2 筋委縮、嚥下困難があり栄養を必要量摂取できない
- #3 身体可動性障害のため、日常生活に支障をきたしている
- #4 構音障害のためコミュニケーションがとりづらい
- #5 筋力低下、筋委縮に伴う身体運動の障害のため転倒や外傷の危険がある
- #6 筋力低下に関連した排便パターンの変調をきたしやすい
- #7 疾患の性質、予後、機能喪失に関連した悲嘆、不安がある
- #8 疾患の性質、予後、役割障害に関連して家族プロセスに変調をきたす
- おわりに
- 参考文献
はじめに
「アイス・バケツ・チャレンジ」などで有名になった神経難病が筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう:ALS)です。
「手が上がりにくい」「階段が昇りにくい」などの症状から発症することが多く、何でもないと思っていたところから診断がつくことがあります。原因不明かつ予後不良とされており、精神的なショックがおこりやすい疾患でもあります。
患者さまが療養生活を前向きに計画できるように、早期からケアチームを形成して全面的な支援を行っていくことが大切です!しっかり勉強をしておきましょう!
それでは、やっていきます。
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態生理
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位ニューロン(大脳皮質運動野)と下位運動ニューロン(脊髄前角・脳幹の運動神経細胞)が次第に脱落することにより、全身の筋力低下、筋萎縮が進行する神経疾患で、運動ニューロン疾患の1つである。
- 全身の随意筋の運動は、大脳皮質運動野にある運動神経細胞(ベッツ細胞)からの刺激が、脳幹や脊髄前角にある運動神経細胞に伝達され、支配する筋を収縮させることで制御されている。
- これらの運動神経細胞が次第に変性・脱落すると、四肢、体幹の筋のみならず、顔面、咽頭、呼吸など、全身のあらゆる随意筋の筋力低下が起こる。
- 原則的に、運動系(上位および下位運動ニューロン)以外の系統は侵されない。
- すなわち、感覚系、協調運動系、自律神経系、高次機能は保たれるため、感覚障害、自律神経障害、知能障害は伴わない。
- 消化管平滑筋や心筋は随意筋ではないため、ALSでは障害されない。
- 病理像としては、脳幹・脊髄前角の運動神経細胞の脱落(減少)と、それに置き換わるグリア細胞の増生(グリオーシス)がみられる。また、残存する運動神経細胞にはプニナ小体を認める。
- 筋は、神経原性変化と脂肪変性を認める。
- 錐体路、特に脊髄側索(外側皮質脊髄路)・前索(前皮質脊髄路)には変性像(軸索の脱落、グリオーシス)がみられる。
- 大脳皮質運動野の病理変化は目立たないが、ベッツ細胞の脱落やマクロファージによる貪食像を認めることがある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因・増悪因子
- 運動系のみが変性・脱落する原因は不明である。
- 脳内のグルタミン酸過剰状態が運動神経細胞死をきたすのではないかとするグルタミン酸過剰説、グアムや紀伊半島などに発症者が多いことから、環境のなかに原因があるのではないかとする環境説、脳内の神経栄養因子が欠乏することが原因ではないかとする神経栄養因子欠乏説などの仮説がある。
- 一部の常染色体優性遺伝のALSでは、第21番常染色体にあるスーパーオキサイドジスムターゼ1(Cu/Zu SOD1)遺伝子の突然変異が証明されている。実際、SOD1遺伝子変異を有するトランスジェニックマウスではALSを発症する。しかしSOD1活性との関連性はなく、なぜこの遺伝子変異でALSを発症するかは不明である。
- 孤発性ALSでは、下位運動ニューロンの細胞質や一部の大脳皮質の神経細胞に、TDP-43というタンパク質が異常に蓄積していることが近年証明された。このことが運動神経細胞脱落の原因につながる可能性が指摘されている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の疫学・予後
- 我が国での有病率は2〜7/10万人、年間発症率は0.4〜1.9/10万人であり、男女比は約2:1で男性が多い。
- 50歳代から60歳代に発症のピークがあら、5〜10%が家族性といわれている(SOD1遺伝子変異を含む)。
- 初発症状は、上肢あるいは下肢の筋力低下、嚥下障害、構音障害などさまざまで、その後徐々に進行し、症状は全身の筋に及ぶ。
- 進行のしかたやその速度も様々であるが、一般に発症により1〜5年(大部分の症例は2〜3年)で呼吸筋麻痺による呼吸不全をきたすことが多く、人工呼吸器を使用しなければ死に至る。
- 人工呼吸器装着例では、さらに数年十数年の生存が期待でき、その場合、生命予後は臥床状態での全身合併症による。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状
- 下位運動ニューロン障害による症状と上位運動ニューロン障害による症状が組み合わさって出現する。
- 主症状は筋力低下であるが、下位運動ニューロンが障害された場合には筋萎縮や線維束性収縮を認め、腱反射は減弱あるいは消失する。
- 上位運動ニューロンが障害された場合には、筋緊張や腱反射が亢進するとともにバビンスキー兆候などの病的反射が陽性となる。
- 咽頭・喉頭・舌といった筋群が侵されると、嚥下障害や構音障害を認め、舌筋の萎縮、舌の線維束性収縮、咽頭反射の消失などの兆候がみられる(球麻痺、仮性球麻痺)。
- 呼吸筋障害が加わると呼吸不全に陥る。
- 運動系以外の系統は原則的には障害されない。
- 眼球運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害、褥瘡はきたしにくく、四大陰性徴候とよばれる。しかし、人工呼吸器を装着した長期生存例では、これらの症状が現れることがある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の診断
- 上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が全身の筋で進行していることを証明し、類似疾患を除外する。
- 問診と神経学的診察にて上位および下位運動ニューロン症候を確認する。
- 除外すべき疾患として、頚椎症(変形性頚椎症、頚椎椎間板ヘルニアなど)、脳・脊髄腫瘍、末梢神経障害(とくに多巣性ニューロパチー)などがある。これら治療可能な疾患を見逃さないことが重要である。
- 診断を確定させるための診断基準としては厚生省神経変性疾患調査研究班診断基準(2001年改訂)がある。
https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/report/nanbyou/01_20141211.pdf
↑
日本医師会のページ
ALSの診断基準(厚生省神経変性疾患調査研究班診断基準)は11ページ参照
- 診断確実性にグレードをつける国際的なものとしてEI Escorial 改訂 Airlie House診断基準(1998年)があり、
- 臨床的に確実なALS
- 臨床的に可能性大なALS
- 臨床的に可能性大であり検査所見で裏付けられるALS
- 臨床的にALSの可能性あり
- 臨床的にALS疑い
に分離され、5.は基準から除外される。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の検査値
- 血液・生化学検査では、筋逸脱酵素(CK、ALT、LDH)の高値、呼吸不全による低クロール血症と重炭酸血症、筋力低下による血清Cr定値などを認めることがあるが、特異的な所見ではない。
- 脳脊髄検査では蛋白が軽度上昇することがあるが診断的意義に乏しい。
- 末梢神経伝導検査:運動神経では、原則的に伝導速度は正常であるが、複合筋活動電位が低下する場合に限り速度は軽度低下する。感覚神経では速度もふり幅も正常である。
- 針筋電図:安静時に線維自発電位や陽性鋭波などの脱神経電位を認める。また、筋収縮時の運動単位は減少し、高振幅・多層性電位などの神経原生変化を認める。
- 頭部MRI:まず、症候の原因となるような脳内病変(腫瘍や血管障害など)がないことを確認する。ALSでは内包から延髄の錐体路にかけての変性がT2強調画像上高信号域としてみられることがある。また、大脳皮質運動野の変性が、T2強調画像で低信号域としてみられる場合がある。
- 脊髄単純X線撮影・脊髄MRI:症候の原因となるような脊椎病変や脊髄病変がないことを確認する。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の合併症
- 唾液の嚥下困難のため、流涎が目立つことがある
- 仮性球麻痺症状として、強制泣き、強制笑いを認める。
- ALSに認知症の合併する一群がある。その認知症症状は、アルツハイマー病とは異なり、性格変化、自発語の減少、集中力の低下、保続などが主症状の前頭側頭型認知症であることが多い。予後はALSの進行による。
- 自由に体を動かせないこと、筋力低下、低酸素血症などから、体の痛みや全身倦怠感を訴えることが多い。
- 嚥下障害や呼吸筋障害から、気道感染を起こしやすい。また、臥床状態が長期になると肺炎や尿路感染症も起こしやすくなり、これらが死因となることもある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法
- ALSには有効な根本治療法はない。したがって患者本人が病気やその予後について十分理解し同意したうえで対症療法を行うことが重要であり、個々人のQOLを尊重する必要がある。
- 脳内のグルタミン酸過剰状態が原因、あるいは悪影響を来しているとの仮説から、リルゾール(リルテック)が用いられることがある。平均3か月の寿命延長効果があるとされるが、筋力・呼吸などの進行に変化はなく、また、努力性肺活量が60%以下の場合は効果がないとされている。副作用としてごく少数例に、嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振などの消化器症状、無力感、めまい、錯覚などの神経症状、肝機能障害、貧血、好中球減少などがみられる。
- その他は対症療法となる。
- ALSでは嚥下機能が障害されるため、食材の形態の工夫(大きさ、形、軟らかさ、ねばり、とろみなど)や食べる姿勢やタイミングの工夫が必要である。
- さらに進行し経口摂取困難になると、経口摂取以外の栄養・水分の確保が必要となる。一般には経管栄養、とくに内視鏡的胃瘻造設術(PEG)を行う症例が多い。内視鏡を安全に行うためには努力性肺活量が50%以上あることが望ましいとされている。何らかの理由でPEGが施行できない場合には、経鼻胃管、手術的胃瘻形成術が選択されることもある。
- 呼吸筋障害に対する呼吸補助(人工呼吸)の方法として、鼻マスクあるいは顔マスクによる非侵襲的陽圧換気(NPPV)と、気管切開を行ったうえでの侵襲的陽圧換気(IPPV)がある。ある程度の自発呼吸と嚥下や発話機能が保たれている場合には、通常NPPVの間欠的使用から導入される。しかし、気道分泌物や誤嚥物の喀出が困難になったり、呼吸筋麻痺がさらに進行したりすると、NPPVでは十分な換気量を確保できず、さらなる生命維持にはIPPVが必要となる。
- 栄養管理、呼吸管理をどの程度対症的に行うかは、病気の予後を十分理解した上で、患者本人が決定する事項である。とくに、人工呼吸器を装着しないという意思がある場合には、息苦しさや倦怠感に対し、抗不安薬やオピオイドなどが投与されることがある。
- 進行性の疾患であり、全身の筋力低下とともに介護量が増大する。また、経管栄養、補助呼吸を導入すると医療度も高くなる。QOLの面から、必ずしも長期療養患者にとって入院生活が最適とは限らない。在宅ケアの必要性の向上とともに支援ネットワークなどの整備が進められている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の看護問題の例
#1 嚥下障害のために、誤嚥・気道閉塞の危険性がある
#2 筋委縮、嚥下困難があり栄養を必要量摂取できない
#3 身体可動性障害のため、日常生活に支障をきたしている
#4 構音障害のためコミュニケーションがとりづらい
#5 筋力低下、筋委縮に伴う身体運動の障害のため転倒や外傷の危険がある
#6 筋力低下に関連した排便パターンの変調をきたしやすい
#7 疾患の性質、予後、機能喪失に関連した悲嘆、不安がある
#8 疾患の性質、予後、役割障害に関連して家族プロセスに変調をきたす
#1 嚥下障害のために、誤嚥・気道閉塞の危険性がある
看護診断
誤嚥リスク状態
リスク因子
嚥下障害
神経筋系の障害
非効果的気道浄化
長期目標
必要な栄養と水分が誤嚥なく摂取でき、経口摂取の限界を見極めて代替方法(経管栄養法)へ移行できる
短期目標
誤嚥性肺炎の徴候がない
観察項目(OP)
- 嚥下・咀嚼状態
- 食事に関するADL(食事時の姿勢、食事方法)
- 気道浄化状態:咳をする力、流涎
- 随伴症状の有無と程度(咳、誤嚥、悪心、嘔吐、つかえ感、残留感)
- バイタルサインズ:発熱の有無、呼吸状態、SpO2値
- 検査:嚥下造影・CRP、胸部X線写真など
- 食事摂取量と内容(水分も含む)
- 食事時間
- 食事に対する思い:嚥下困難や食事内容について
- 口腔内の状態
ケア計画(TP)
- 食べやすい環境調整
- 嚥下しやすい体位の工夫
- 必要時、排痰援助や吸引など気道浄化援助
- 咳嗽力を高める呼吸理学療法、機械的咳介助の利用
- 嚥下状態と嗜好を考慮した食事内容に変更する
- 半固形物(プリン・ヨーグルトなど)や増粘剤(とろみアップ剤など)の利用
- 食事後の口腔内の保清
- 咀嚼筋のリハビリテーションを行う
- 嚥下状態が悪くなれば医師に報告する
- 必要時は、経管栄養、輸液管理、水分出納管理を行う
教育計画(EP)
- あわてず、ゆっくり食事をとるよう指導する
- うまく嚥下できない時は、ゆっくり呼吸を整えるように説明する
- 咀嚼筋のリハビリテーションについて説明する
- 嚥下障害を起こしやすい食物を避けるよう指導する
- 家族に食事介助方法やその留意点について説明する
- 経口摂取の限界、代替方法の情報提供、意思決定の支援
#2 筋委縮、嚥下困難があり栄養を必要量摂取できない
看護診断
栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
診断指標
嚥下困難の徴候
急激な体重減少
上肢の筋力低下
長期目標
必要摂取量の摂取ができ、低栄養状態にない
短期目標
必要な介助、代替方法により、栄養摂取が出来る
観察項目(OP)
- 食事時の姿勢、食事方法
- 筋力低下、筋委縮の程度
- 四肢拘縮の有無と程度
- 嚥下・咀嚼状態
- 栄養状態のチェック
- 食事摂取量・水分摂取量と内容
- 食事中の疲労度と食事時間
- 食事に対する思い、経管栄養法の受け入れ
- 嗜好品
- 口腔内の状態
ケア計画(TP)
- 食べやすいように姿勢や配膳などの環境を調整する
- 嚥下しやすい体位を工夫する
- 必要時排痰援助や吸引などの気道浄化を試みる
- 摂取する順序を工夫する
- 自助具を活用する
- 嚥下状態と嗜好を考慮した食事内容に変更する
- 半固形物や増粘剤を利用する
- 食事後の口腔内を保清する
- 食事における困難感に対して精神的に支持し励ましの声掛けを行う
教育計画(EP)
- 可能な限り自力での食事摂取が行えるように、食事の一口量、食事の速さ、食事方法について説明する
- 家族に食事介助の方法や介助時の留意点について説明する
#3 身体可動性障害のため、日常生活に支障をきたしている
看護診断
セルフケア不足シンドローム
診断指標
食事行為に関するセルフケア不足
清潔・更衣に関するセルフケア不足
排泄行為に関するセルフケア不足
長期目標
援助を得ながら、日常生活が保持できる
短期目標
不足しているADLに対する支援を受け入れることができる
観察項目(OP)
- 筋力低下、筋委縮の程度
- 食事、清潔、更衣、排泄に関するADL
- 四肢拘縮の有無と程度
- 食事時間、方法
- 皮膚の状態
- 口腔内の状態
- 排尿回数、排尿間隔
- 排便回数、排便間隔
ケア計画(TP)
- 全身清拭、入浴など保清援助を行う
- できない部分の日常生活動作について介助を行う
- 口腔内の保清を行う
- 爪切りを行う
- 着脱衣しやすい衣服を選択して更衣を行う
- 物品は手の届く位置に置くなどして環境整備を行う
- 排便習慣を一定に近づけられるよう生活リズムを整える
- ADLに応じて排泄を介助する(尿器、ポータブルトイレ、トイレ等)
- カーテンの開け閉めなどのプライバシーの保持を必要に応じて本人に代わって行う
教育計画(EP)
- 動作困難な部分は介助を求めるよう説明する
- 家族にも患者のADLの情報を提供し、できる限り見守るよう説明する
- 着脱しやすい衣服を用意してもらう
- 退院時に向けて、自宅のトイレなどの環境整備や福祉用具貸与、住宅改修の必要性について説明し、ケアマネージャーやケースワーカーとの相談を促す
#4 構音障害のためコミュニケーションがとりづらい
看護診断
言語的コミュニケーション障害
診断指標
構音障害
呼吸障害
気管切開
長期目標
意思や欲求の伝達が円滑に行える
短期目標
障害を補完する代替手段が維持できる
観察項目(OP)
- 発声、構音障害の程度
- 声の大きさ、話す速さ、口の動き
- 呼吸状態
- 表情や態度
- 精神状態
- 残存機能の程度
- コミュニケーション障害の潜在的状態(張力、視力、認識障害、注意力または短期記憶力の不足)
- 聴力、視力に影響する症状(中耳炎や羞明)
ケア計画(TP)
- 可能な限り患者が歯化しやすいように声掛けを行う
- 患者の伝えようとしている言葉を理解するように努める
- 会話の時間に余裕を持ち、あせらないような環境を作る
- 頻回に訪室し、コミュニケーションを図る
- 障害の程度に合わせコミュニケーション方法を相談・選択、工夫をする:文字盤の使用(単語、対面式、五十音)、ジェスチャー、筆談、まばたき、眼球運動、パソコン
- ナースコールの工夫(センサーや足用コールなど)
- 呼吸・発語訓練を行う
- 患者の具体的な欲求を筆記しておき、スタッフ間で統一できるようにする
- 家族とコミュニケーションがとれるように間に立ち、家族関係を保てるようにする
- 散歩などの気分転換を行う
教育計画(EP)
- ゆっくり、大きく口を開けて発声するように説明する
- 代替手段に関する情報提供
- 家族にコミュニケーションの取り方を説明する
#5 筋力低下、筋委縮に伴う身体運動の障害のため転倒や外傷の危険がある
看護診断
身体損傷リスク状態
リスク因子
全身の筋委縮と筋力低下
廃用症候群
長期目標
廃用症候群を予防できる
短期目標
転倒なく日常生活が送れる
観察項目(OP)
- 筋力低下、筋委縮の程度
- 歩行や移動に関するADL
- 筋委縮に伴う疼痛、不快症状
- 四肢拘縮の有無と程度
- ベッド周囲の環境
ケア計画(TP)
- ADLに合わせた援助を行う
- 体調の悪いときは手すり、杖、車椅子などの使用を勧める
- 廃用症候群の予防のため、疲労が残らない程度の機能訓練や日常生活のなかでリハビリテーションを行う
- 生活の中に背面開放座位などを取り入れて、寝たきりに移行させない
- 多動的な関節拘縮予防などを行う
- 環境整備:動作時の身軽な服装、床、病室、照明など
教育計画(EP)
- 動作困難な部分は介助を求めるように説明する
- 家族に患者のADLの情報を提供し、できるだけ見守りように説明する
- OT(作業療法士)、PT(理学療法士)の指導をもとに、自動運動の必要性を説明する
#6 筋力低下に関連した排便パターンの変調をきたしやすい
看護診断
便秘
診断指標
固い便、排便が週3回以下
長期目標
排便がコントロールされ、快便感が得られる
短期目標
定期的に排便ができる
観察項目(OP)
- ADLの把握
- 筋力低下、筋委縮の程度
- 四肢拘縮の有無と程度
- 排便状態、排便間隔
- 怒責の有無
- 腹部膨満感、腸蠕動音
- 食事量とその内容、水分量
ケア計画(TP)
- 水分摂取を促す
- 腹部マッサージを試みる
- 腹部の用手圧迫、定期的な体位交換を行い排ガスを促す
- 温罨法を実施する
- 医師の指示により坐薬、浣腸、緩下剤を使用する
- 排便困難時は必要に応じて摘便を行う
教育計画(EP)
- 排便コントロールについての必要性を説明する
#7 疾患の性質、予後、機能喪失に関連した悲嘆、不安がある
看護診断
悲嘆
不安
診断指標
苦悩
葛藤
否認
焦燥感
緊張した表情
長期目標
疾患に対する思いを表出できる
観察項目(OP)
- 悲嘆の訴え、睡眠状態
- 表情、口調、イライラ感、緊張感
- 疾患の理解や受け止め方
- 医師からの病状説明の内容(急変時の対応、患者の意向)
- 痛み、痺れ、しめつけ、脱力、硬直、振戦などの症状悪化の有無
- 予後に対する患者の受け止め方
- 患者が信頼している人
- 面会状況、家族の言動、接し方、受け止め方、家族関係
- 患者の求める情報の質・量
ケア計画(TP)
- 処置や治療を行う際は、説明しながら行う
- コミュニケーションを頻回に行い、支持的態度で接する
- 落ち着いた態度で接する
- 医師から病状説明をしてもらう(疾患の性質、病状、予後、急変の対応)
- 疾患、病状、予後に対する言語の統一を図り、患者が混乱しないように配慮する
- 散歩などで気分転換を図る
- 不眠が続くときは声掛けや環境調整を行い、医師へ報告する
教育計画(EP)
- 不安などの精神的動揺があるときは、一人で悩まないで伝えるように説明する
- 家族・患者の信頼している人の面会を多くしてもらう
#8 疾患の性質、予後、役割障害に関連して家族プロセスに変調をきたす
看護診断
家族機能破綻
家族介護者役割緊張
診断指標
コミュニケーションパターンの変化
長期目標
家族が思いを表出でき、円滑な関係を保つことができる
観察項目(OP)
- 患者・家族の不安、負担、欲求、思い
- 患者・家族の役割(キーパーソンはだれか確認)
- 家族間の関係、協力体制
- 家族間のコミュニケーション
- 家族のストレスに対する適応能力
- 家族の健康状態、疲労度
- 社会資源に対する知識
ケア計画(TP)
- 必要に応じて社会資源の活用および情報提供を行う
- 他のコメディカルと連携を図る
- 必要時は、医師から患者や家族に病状説明をしてもらう
- 家族の訴えや不安を傾聴し、よりよい方法を提供する
- 家族とのコミュニケーションがとれるよう間に立ち、家族関係を保てようにする
- 家族の疲労が予測される場合は、早めに休養が取れるように配慮する
教育計画(EP)
- 家族にコミュニケーション方法を説明する
- 家族に介護方法を説明する
- キーパーソンを中心に、統一した説明を行う
以上になります!
おわりに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では呼吸障害、嚥下障害、構音障害、転倒リスク、便秘、不安、家族の不安などを生じます!それらの障害が軽減され、安心して療養できているかどうかを常に確認して十分なケアが提供されるように努めていきましょう!
参考文献
病期・病態・重症度からみた疾患別看護過程+病態関連図 1177‐1197P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院
あと、X(旧ツイッター)『栗鈴』もやっております!
適当なことばっかりポストしておりますが、プロフィールの方にアドレスがありますので、お暇があれば覗きにきてください~
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