こんにちは。栗鈴です。
今回の記事は、『CVポート(皮下埋め込み型ポート)の看護【穿刺・抜去の方法、挿入中のケア】』です!
宜しくお願い致します。
はじめに
CVポートの穿刺は、経験業務によっては、あまり実施したことがない看護師は多いと思います。実際にやってみると、静脈穿刺より手順は簡単ですが、穿刺や固定方法は少しコツがありますので、実施したことがなくて自信がない方は、ぜひ今回の記事を見ていただけると参考になると思います!でも初めて実施する際は、必ず先輩看護師に見てもらいながら実施するようにして下さいね!場数は大事です!
皮下埋め込み型ポート:ポート針穿刺・抜去・ケア
<ポート専用針穿刺>
必要物品
- ポート専用針
- フラッシュ液(可能な限り10ml以上のプレフィルドシリンジ)
- ポビドンヨードなど消毒薬付き綿棒2本、またはポビドンヨード液などの消毒薬・綿球・鑷子
- ドレッシング材
- ガーゼ
- 固定用テープ
- 指示された輸液、輸液ルート、消毒用アルコール綿
- 使い捨て手袋
- マスク
- 針捨て容器
[必要時]
- 袖付きビニールガウン
- 10ml以上の容量のシリンジ
- 18G針
- 生理食塩水ボトル
手順
1.
患者本人であることを確認し、処置の目的と内容を説明し同意を得る。
患者誤認防止のため、リストバンドでフルネームを確認する。
可能であれば患者に氏名を名乗ってもらう。
2.
羞恥心に配慮し、ドアやカーテンを閉め、周囲の環境や患者の体位を整える。
患者が安楽に処置を受けられるようにするとともに、処置を行いやすくする。
3.
手指消毒し、使い捨て手袋を装着する。
必要に応じてマスク、袖付きビニールガウンを装着する。
滅菌手袋の使用を推奨している製品もあるが、現時点でポート管理における手袋装着についてのエビデンスは確立されていない。本手順では使い捨て手袋を使用。
4.
ポート部を露出し、ポートの縁部、セプタムの中心部分を触診にて確認する。
穿刺位置を確認する。
5.
発熱、ポート周囲の発赤、熱感、硬結、疼痛など、感染徴候やポートの漏れを示唆する徴候がないか確認する。
- 異常が認められた場合、直ちに医師に報告する。
6.
フラッシュ液でポート専用針を満たす。
- セプタムの損傷を防ぐため、必ずポート専用針を使用する。ポート専用針は、治療に必要な最小の針径の針先がポートの底に軽くあたり、皮膚から翼部が離れすぎない長さのものを選択する。
- フラッシュ液は、生理食塩水を使用することが一般的であるが、製品説明、医師の指示に従い使用する。
フラッシュ液は極力プレフィルドシリンジ製品を使用する 。 - 使用するシリンジのサイズは製品説明に従い、通常10ml以上のものを使用する。過度の圧力がかかることを防ぐため、10ml以上のシリンジを使用をする。
- 必要ならば、閉鎖式の静脈ライン用コネクタを取り付ける。閉鎖回路にすることで、血流感染のリスクを減らす。
- 輸血、採血を行う際は、静脈ライン用コネクタで溶血などのリスクがあるため、製品説明に従い使用する。
7.
空気の混入がないこと、ポート専用針に異常がないことを確認し、ルートのクランプを閉じる。
8.
穿刺部周囲を広範囲(10~13cm)に中心から外側へ向かって円を描くようにポビドンヨード液で3回程度消毒する 。
- ポビドンヨードにアレルギーがある場合は、消毒薬を変更する。
- 日本では0.5%クロルヘキシジンアルコールまたは10%ポビドンヨードが推奨されている。
9.
消毒後、2分以上乾燥させる。
- ポビドンヨードが作用するためには皮膚との接触時間が少なくとも2分程度必要であり、ポビドンヨード液の乾燥がその目安である。
10.
利き手でない方の拇指と示指、中指でポートの外側を挟み、皮膚を伸展させる。
- ポートのほとんどは、円形であるため、3点でポートを固定するのが望ましい。
- 針刺し事故防止と、血流感染防止のため、ポートより可能な限り離れた部位の皮膚を押さえて伸展させる。
11.
利き手でポート専用針の保護キャップ部または翼部を持ち、ポートに対して垂直に穿刺する。
- コアリングを避けるため、専用針を使用し、針先がセプタム内に確実に進むように垂直に穿刺する。
- 穿刺部位は、穿刺するたびに少しずつずらす。中心部分に集中的に穿刺すると、セプタムが損傷されやすく、穿刺耐用回数が少なくなる可能性がある。
12.
針先が底にあたる感覚があるまでゆっくり針を押し進める。
- 針先をタンク内に確実に刺入させ、薬剤の皮下漏出を防止する。針先を過度に刺入させると、針先がセプタム底面に押しつけられて変形し、抜去時にセプタムを損傷する恐れがある。
13.
ポート専用針のルートのクランプを開ける。
14.
必要ならば、シリンジをゆっくり引いて、血液の逆流を確認する。
- 穿刺針が適切な位置に留置されているか、カテーテルの閉塞がないかを確認する。特にカテーテル・ピンチオフなど、注入された場合に重大な有害事象を引き起こす可能性の評価のために行う。
- 血液の逆流を確認すべきか否かは事前に医師に確認してから行う。カテーテルの閉塞や感染の原因となる恐れもあるため、製品説明、施設の基準や医師の指示に従う。
- 製品によっては血液逆流の確認を行ってはならないものがあるため、添付文書を確認した上で実施する。逆流確認により破損する恐れがある製品もある。
15.
抵抗の強さを確認しながら、フラッシュ液をゆっくり注入する。
- 過度の圧力をかけてフラッシュ液を注入すると、ポート本体やカテーテルを損傷する危険があるため、通常、10ml以上のサイズのシリンジを用い、ゆっくり注入する。
- 抵抗が大きい場合、無理に注入せずに医師に報告する。カテーテルの閉塞の恐れがあり、無理に注入すると、カテーテルの破損、断裂や、皮下漏出などの危険性がある。
- 抵抗が極端に小さい場合や、ポート周囲に冷感や違和感が出現した場合、医師に報告する。カテーテルの破損、皮下漏出などの恐れがある。
16.
必要量をフラッシュしたのち、ルートのクランプを閉じる。
- 必要なフラッシュ液の量は製品により異なるが、最低でも、カテーテル内部容量の2倍にする。
17.
ポート専用針の翼部をテープで固定する。
- セプタム内でのポート専用針の動きを最小限に抑える。
- 固定すると滴下状況に影響を及ぼす可能性があるため、全体の固定は輸液開始後に滴下状況を確認しながら行う。
- 皮膚面と翼部が離れている場合は、滅菌ガーゼなどを翼部の下に敷いてから固定する。
- 刺入された針がぐらつくと、ポートを損傷する可能性があるため、ポート専用針をセプタムに対して垂直に保ち、針先の位置がずれないようにする。
18.
医師の指示に従い、輸液を開始する。
- カテーテル関連血流感染を防ぐため、三方活栓は可能な限り使用せず、閉鎖式の輸液ルートを使用し、清潔操作で行う。
- 抗がん剤の場合、皮下漏出により、重大な有害事象を引き起こす危険性が高いため特に注意が必要である。可能な限り、生理食塩水など、皮下漏出で重大な有害事象を起こすリスクの低い薬剤を先に投与し、問題がないことを確認してから投与することがのぞましい。
- 自然滴下があることを確認する。
- 滴下不良の場合、ポート専用針の不完全穿刺、カテーテル先端の位置異常あるいはカテーテルの破損、断裂などの疑いがある。
- ポート周囲の皮膚の腫脹、疼痛や冷感、違和感がないことを確認する。カテーテルの破損、断裂、皮下漏出などの恐れがある。
19.
穿刺部、翼部を覆うようにドレッシング材を貼付する。
- 患者の状況に応じ、透明ドレッシング材、ガーゼ付きドレッシング材、ガーゼをあてテープ保護をする。発汗、出血、浸出液などがみられる場合は、ガーゼ付きドレッシング材が適している。
20.
貼付した日時、ポート専用針の針径、長さをドレッシング材に記載する。
- 貼付日時を記載することで、交換時期の確認が容易となる。ポート専用針の針径、長さを記載することにより、次回穿刺時の専用針の選択の目安となる。
21.
個人防護具を外し、手指洗浄をする。
22.
患者に輸液を開始したことを告げ、寝衣を整える。
- 刺入部に違和感がある場合は看護師に連絡するよう伝える。
23.
使用した物品を適切な方法で片付ける。
24.
処置の内容と結果をカルテに記録する。
<ポート専用針の抜針>
手順
1.
患者本人であることを確認し、処置の目的と内容を説明し同意を得る。
- 患者誤認防止のため、リストバンドでフルネームを確認する。可能であれば患者に氏名を名乗ってもらう。
2.
羞恥心に配慮し、ドアやカーテンを閉め、周囲の環境や患者の体位を整える。
- 患者が安楽に処置を受けられるようにするとともに、処置を行いやすくする。
3.
手指消毒し、使い捨て手袋を装着する。必要に応じてマスク、ガウンを装着する。
- 血液および体液への偶発的な曝露を防ぐ。
4.
輸液終了後、必要ならば(抗がん剤投与後や先端が開口型のポート専用針の場合など)生理食塩水のボトルをつなぎ、ルート・ポート内のタンク部分・カテーテルの全体を洗い流す。
- 抗がん剤投与後の場合、抗がん剤漏出による薬液曝露を防ぐ。
- 先端が開口型(逆流防止弁がついていないもの)の場合、ヘパリンロックの前に生理食塩水によりカテーテル内をよく洗い流す。製品説明、医師の指示に従い使用する。
5.
輸液ルート、ポート専用針のルートをクランプし、必要ならば、輸液ルートを外す。
- 抗がん剤投与後は、ルートは外さない。[詳細][理由] ルートを外すことで薬液曝露の危険性がある。
6.
接続部を消毒後、フラッシュ液の入ったシリンジをルートに取り付ける。
- カテーテルの閉塞や接続を外す際の薬液への曝露を防ぐため、フラッシュした後に抜去する。抗がん剤投与後は特に薬液曝露に注意する。
- 先端が開口型(逆流防止弁がついていないもの)の終了後のフラッシュ液は、ヘパリン加生理食塩水などを使用することが一般的であるが、製品説明、医師の指示に従い使用する。
- フラッシュ液は極力プレフィルドシリンジ製品を使用する 2)。
- 先端に逆流防止弁付きのものは、生理食塩水でルート全体を洗い流していれば、シリンジでのフラッシュは不要であり、製品説明、医師の指示に従う。
- 先端に逆流防止弁付きのものは、ヘパリンロックの必要はないとされている。しかし、血流感染を防止するため、生理食塩水または注射用蒸留水でルート内をしっかり洗い流す必要がある。
7.
ポート専用針のルートのクランプを開け、ゆっくりフラッシュする。
- 過度の圧力をかけてフラッシュ液を注入すると、ポート本体やカテーテルを破損する危険があるため、通常、10ml以上のサイズのシリンジを用い、ゆっくり注入する。
8.
必要量フラッシュしたのち、シリンジを押している状態でポート専用針のルートをクランプする。
- シリンジにフラッシュ液が少量残った状態でシリンジを押しながらクランプすることで、血液の逆流を防ぎ、カテーテルの閉塞を予防する。
- 必要なフラッシュ液の量は製品により異なるが、最低でも、ルート・ポート内タンク部分・カテーテル内部容量の2倍にする。
9.
貼付していたドレッシング材やテープを緩める。
- 針刺し事故を防ぐため、翼部やルートについている部分のテープは無理に全て剥がさず、皮膚への固定部のみ剥がす。
10.
利き手でない方の手で、皮膚を押さえ、利き手でポート専用針を持ち、まっすぐ上に引き抜いて抜針する。
- 抜去時の針刺し事故、セプタムの損傷を予防する。患者の不快感を最小限に抑える。
- 安全装置がついているものは作動させて抜針する。針刺し事故を防止する。
- 安全装置の作動方法は製品により異なるため、製品説明に従う。
11.
速やかにポート専用針を針捨て容器に破棄する。
12.
出血がある場合、滅菌ガーゼで抜去部を圧迫して止血する。
13.
抜去部周囲の皮膚の発赤、腫脹、疼痛や違和感がないことを確認する。
- 感染徴候、皮下漏出の有無など、異常がないか確認する。
14.
抜去部周囲を中心から外側に向かって円を描くようにポビドンヨード液で消毒し2分以上乾燥させる。ポビドンヨードにアレルギーがある場合は、消毒薬を変更する。
- カテーテル関連血流感染を防止する。
- ポビドンヨードが作用するためには皮膚との接触時間が少なくとも2分程度必要であり、ポビドンヨード液の乾燥がその目安である。
15.
ガーゼまたは、ドレッシング材を抜去部に貼付する。
16.
個人防護具を外し、手指洗浄をする。
17.
患者に終了したことを告げ、寝衣を整える。
18.
使用した物品を適切な方法で片付ける。
19.
処置の内容と結果をカルテに記録する。
<皮下埋め込み型ポート挿入中の看護>
手順
1.
輸液中は、滴下の状態、ポート周囲の皮膚の腫脹、疼痛や冷感、違和感がないことを定期的に確認する。
- カテーテルの破損、断裂、皮下漏出、感染などの異常を早期に発見する。
2.
ドレッシング材を定期的に交換する。
- カテーテル関連血流感染を防止する。
- 透明ドレッシング材は5~7日ごと、または剥がれたとき、明らかに汚染されたとき、穿刺部位の確認が必要なときに交換する 。
- ガーゼドレッシング材は、2日ごとまたは、明らかに汚染されているときに交換する。
3.
施設の基準に従って、疼痛を評価する。
4.
持続輸液に用いるポート専用針は7日ごとに交換する。
- 針の交換頻度に関しては、INS(米国輸液看護協会)、ONS(米国がん看護協会)は、7日ごとの交換は一般的な方法であるとしている 。
5.
使用していないポートは、医師の指示および製品説明に従い、2~4 週間に1 回以上の頻度でフラッシュを行う。
- 開存性を維持する。フラッシュ液は、生理食塩水または注射用滅菌蒸留水を使用することが一般的であるが、製品説明、医師の指示に従い使用する。
以上になります!
おわりに
CVポートは、中心静脈栄養の目的と仕組みを理解して実施することが大事です。CVポートの技術を熟知して、トラブルや緊急時の適切な対処法を身に付けて、安全に穿刺・抜去と挿入中の観察・ケアが行えるようにしていきましょう!
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