栗看

~くりかん~

腹部のアセスメント【聴診・触診・打診・視診】を全部解説!

 みなさんこんにちは!

栗鈴です。

今回は、『腹部のフィジカルアセスメントの記事になります。』

 

腹部には、

肝臓、腎臓、脾臓、小腸、大腸、腹膜、腹腔、腹部大動脈‥と観るところがいっぱいの部位になります。

 

それだけにフィジカルアセスメントの実践は簡単ではありませんが、経験を積んで自然にできるようになる頃には、かなりの観察力が身に付いていることでしょう!

 

 



打診や触診で疼痛を与えないように注意!

はじめは苦痛を与えないことに配慮しながら、

じっくりと観察することを心がけましょう!

フィジカルアセスメントの達人を目指して頑張っていきましょうね〜(≧∇≦)b

 


では、さっそくやっていきましょう! 

腹部のフィジカルアセスメントの手順

 

<フィジカルアセスメントの準備>

•腹部の触診や打診などで刺激を与えるため、患者には事前に排泄を済ませてもらう。

•仰臥位をとり、膝を屈曲させ、両手は身体の横に置きリラックスしてもらう。

•打診や触診により、腸蠕動を亢進する可能性があるため、視診→ 聴診→打診→触診の順で行う。

•疼痛を増強させ、その後のアセスメントが行えなくなるのを防ぐため、疼痛のある部位のアセスメントは最後に行う。

•実施者は手を温めておき、部屋の温度を調節する。

•バスタオルやタオルケットを用意し、プライバシーの保護や保温に努める。

※肝臓の打診※

・触診を行いやすくするため、対象者の右側からアセスメントを行う。

 

<腹部の問診>
  • 栄養状態(食欲の変化、食事摂取量の変化、体重の増減)
  • 食習慣(1日の食事回数、内容、1回の食事量、嚥下困難の有無 )
  • 悪心
  • 嘔吐(有無、回数、吐物の色、量、性状)
  • 腹痛(有無、部位、期間、疼痛の性質、食事摂取との関係)
  • 排便習慣(回数、便秘、下痢、便の色、におい、排便時痛の有無 、排便時の出血の有無、下剤・浣腸の使用の有無)
  • 排尿習慣(回数、色、におい、排尿困難の有無、排尿時痛の有無 )
  • 腹部に関する既往歴(潰瘍、胆のう疾患、肝炎、虫垂炎、憩室炎 、ヘルニアなど)
  • 女性の場合、必要時妊娠・分娩の既往について

 

<腹部のアセスメントの実施>

腹部の視診

1.発疹や皮膚病変などの皮膚の異常や、静脈の怒張の有無を観察する。

[正常所見]
・表面は一色で、なだらかで、平坦である。正常でも、細かい静脈 や白色の線条痕、治癒した外科的瘢痕が見られることもある。
[異常所見]

  • 黄疸⇒肝炎の疑い
  • 皮膚の光沢や緊張⇒腹水貯留の疑い
  • 皮下静脈の怒張・隆起⇒下大静脈瘤、肝硬変の疑い
  • 皮膚の変色、暗紫色の線条⇒クッシング症候群の疑い
2.腹部の外形、輪郭を上と横から観察する。


[正常所見]
・左右対称であり、輪郭は体格によっても個人差があるが、通常、 平坦か円形である。
[異常所見]

  • 腫瘤
  • 不自然な凹凸
  • 陥没
  • 左右非対称
  • 舟状腹(腹部の陥没)⇒栄養不良
  • 腹部の異常な膨隆⇒腹水の貯留や腫瘤の存在の疑い
3.腹部表面の動きを観察する。

[正常所見]

  • 痩せた人では、腸の蠕動や腹部大動脈の拍動が観察される。
  • 呼吸性運動は、特に男性の腹部で見られる。

[異常所見]

  • 顕著な腹部大動脈の拍動⇒腹部大動脈瘤や脈圧の拡大(高血圧、大動脈弁閉鎖不全、甲状 腺中毒)の疑い
  • 膨満した腹部に伴う顕著な胃腸の蠕動⇒腸管閉塞の疑い
4.臍の位置、色調、形状を観察する。


[正常所見]

  • 正中に位置し、変色、炎症やヘルニアの徴候がなく、陥没してい る。

[異常所見]

  • 位置の偏位
  • 突出
  • 発赤・浸出物などの炎症所見
  • 外側に反転した臍⇒腹水や腫瘤の疑い
  • 臍の広がり、外側への反転⇒臍部ヘルニアの疑い

 

腹部の聴診

1.腸蠕動音を聴診する。
  • 通常、腸蠕動音は回盲弁の領域で聴取されるため、右下腹部の回盲弁領域が聴取しやすい。
  • 腸蠕動の有無を確認するためであれば、どこか1か所のみ聴取すればよい。
  • 腸蠕動音が完全に欠如していると判断するためには、同一箇所で5 分間聴取しなくてはいけない。

[正常所見]

  • 「ゴボゴボ、グルグル」という音が5~30回/分腹部のどこで も不規則に発生する。回数を数える必要はなく、腸蠕動音が正常か 、減少しているか、亢進しているかを判断する。

[異常所見]

  • 腸蠕動音の亢進(大きく、高調性の音が頻回の場合)⇒早期の機械的な腸の閉塞、胃腸炎、下痢、緩下剤の使用、沈静化したイレウス
  • 腸蠕動音の減弱・欠如⇒腹部外科手術後や腹膜炎、麻痺性イレウス
    5分間に1回も聴こえなかった場合にのみ「欠如」と判断する
2.血管音を聴取する。

聴診器のベル側を軽くあて、腹部の主な動脈上(ほぼ正中線上)で血管雑音の有無を確認する。
[正常所見]

  • 腸蠕動音や心音が響いてくるのみで、血管音は聴取されない。

[異常所見]

  • 血管雑音の聴取⇒動脈瘤や血管の狭窄の疑い
  • 肝臓・脾臓上のコマ音(静脈性のブンブンという音)の聴取⇒門脈圧亢進の疑い

 

腹部の打診

全体の打診では、系統的に、もれなく、腹腔内の臓器をイメー ジしながら打診する。疼痛のある部位があれば、最後に打診する。

1.腹部の9つの領域全てを系統的に打診する。


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リダイレクトの警告

[正常所見]

  • 仰臥位では腸内の空気は上部に集まるため、腹部の大部分(腸管上)は鼓音が聴かれる。
  • 肝臓、脾臓などの臓器上や、便塊の貯留部位、尿が充満した膀胱上では濁音が聴かれる。

[異常所見]

  • 鼓音であるはずの部位で濁音となる。⇒腫瘤の存在や腹水貯留の疑い
  • 腫大した臓器上での濁音⇒腫瘤の存在や腹水貯留の疑い
  • 鼓音の亢進⇒ガスによる拡張の疑い
2.肝径(肝臓の縦幅)の測定を行う。

 a.右鎖骨中線上で乳頭付近から下方に向かって打診し、肺の共鳴音から濁音に変化した点を肝臓の上縁として印をつける。

 b.右鎖骨中線上を臍付近から上方に向かって打診し、鼓音から 濁音に変化した点を肝臓の下縁として印をつける。 

c.2つの印の距離を測定し、肝径とする。
[正常所見]

  • 成人の正常な肝径は6~12cmで、男性の平均は10.5cm 、女性の平均は7cmである。

[異常所見]

  • 肝径の増大⇒肝腫大の疑い
  • 肝の下縁が不明瞭⇒腸内のガス貯留による拡張の疑い
  • 肝の下縁が高い位置にある。⇒腹水や妊娠の場合 
3.脾臓濁音を確認する。

左腋窩中線からやや後方寄りの第9~11肋間隙へと濁音の打診を行いながら、脾臓の位置を見つける。
[正常所見]

  • 脾臓濁音の範囲は通常、成人で7cm以内である。

[異常所見]

  • 腋窩中線より前方での濁音⇒単核細胞症、外傷や感染などによる脾臓の腫大の疑い

 

腹部の触診

対象者がリラックスして、腹壁の緊張が解けるようにする。4つの領域を系統的に、腹腔内の臓器をイメージしながら触診する。

 

1.浅い触診(指を約1~2cmほど腹壁に沈める)から行う。

[正常所見]

  • 圧痛や腫瘤はなく、腹部はやわらかく弛緩し、筋性防御はない。

[異常所見]

  • 圧痛、疼痛や表在性の腫脹
  • 筋性防御⇒腹腔内の炎症(腹膜炎)の疑い
2.筋性防御とは

腹壁を押し下げ痛みが出現するときに起こる腹筋 の緊張のことである。腹腔内の炎症時(腹膜炎時) に見られる症状の一つである。

 

3.深い触診(指を約4~5cmほど腹壁に沈める)を行う 。

[正常所見]

  • 正常でも、剣状突起や盲腸、S状結腸で軽度の圧痛を感じること があるが、腫瘤や筋性防御はない。

[異常所見]

  • 圧痛
  • 激痛
  • 腫瘤
  • 筋性防御⇒腹腔内の炎症(腹膜炎)の疑い

 

4.反動痛(反跳性圧痛)の有無を観察する。

示指・中指・環指の 指先で垂直に腹壁を押し、その後素早く離す。


[正常所見]

  • 正常では、反動痛(ブルンベルグ徴候)はない。

[異常所見]

  • 反動痛(反跳性圧痛)がある(ブルンベルグ徴候)⇒腹腔内の炎症(腹膜炎)の疑い
5.肝臓辺縁の触診を行う。 
  1. 左手を対象者の右背部(第11~12肋骨の高さ)にあて、腹部内容物を支持するために腹側へ軽く持ち上げる。
  2. 右手の指は圧を加え肋骨下縁に、正中線と平行に置く。
  3. 対象者に腹式呼吸(深呼吸)を依頼する。
  4. 右手の示指側面を肋骨弓内に入れ込むように、手を深く押し込む。
  5. 吸気時に横隔膜は肝臓を下方へ押し下げるため、肝臓の辺縁が指に触れることがある。

[正常所見]

  • しっかりとした、一定の隆線であり、圧痛や腫瘤はない。正常時は何も触れないことが多い。

[異常所見]

  • 肝臓の辺縁が不整
  • 腫瘤や圧痛がある
  • 右肋骨下縁より1~2cm以上下方で触診できる。⇒肝臓の腫大(何cm下方で触れるのかを記録する)
6.脾臓の触診を行う。
  1.  左手を第11~12肋骨の高さで対象者の左背部に置き、腹側に軽く持ち上げる。
  2. 右手は肋骨弓の下方に位置するように左腹部に斜めに置き、 指先は左腋窩の方向に向ける。
  3. 対象者に腹式呼吸(深呼吸)を依頼する。
  4. 右手に圧を加え、肋骨弓の下まで下げる。

[正常所見]

  • 何も触れない。

[異常所見]

  • 脾臓が触知される。⇒脾臓の腫大の疑い
     ※通常の3倍程度腫大している場合に、脾臓が触知できる。単核細胞症や外傷で脾臓は腫大する。腫大している脾臓を触れた場合は、 触診を中止し医師に報告する。腫大した脾臓は脆弱で過度な触診で破裂する可能性がある。左肋骨弓から何cm下方で触れるのかを記 録する。
7.腎臓の触診を行う。
  1.  左手を右背部(第12肋骨付近)に置き、腹側に軽く持ち上げるように支持する。
  2. 右手を腹直筋に平行になるように上腹部に置く。
  3. 対象者に腹式呼吸(深呼吸)を依頼する。
  4. 吸気時に右手を 右上腹部に浅く押し込む。
  5. 呼気時に腎臓の下縁を挟み込むように右手で触れる。

[正常所見]

  • 左腎臓は右腎臓よりも1cm上方に位置しているため、触知できない。また、右腎臓は痩せ型の女性で触れることがあるが、 通常何も触れない。

[異常所見]

  • 腎臓が触知される。⇒腎臓の腫大の疑い
  • 圧痛や腫瘤がある。

腎臓の叩打診

1.対象者を座位にする。

2.実施者は左手を対象者の脊柱角に置き、右手の尺骨側で叩打する。
[正常所見]

  • 振動は感じるが疼痛は感じない。

[異常所見]

  • 鋭い疼痛⇒腎臓や副腎領域の炎症の疑い

腹水のアセスメント

1.対象者本人、または介助者の手の尺側をしっかりと対象者の腹部の正中線上に置く。

2.実施者の左手を右側腹部に添え、右手で左腹部をたたく。
[正常所見]
・腹部が膨満していても、ガスや脂肪組織であれば、波動は感じない。
[異常所見]
・波動が感じられる。
->かなりの量の腹水が貯留していると考えられる。心不全、門脈 圧亢進、肝硬変、肝炎、膵炎やがんの場合に、腹水が発生する。

 

以上になります!

いかがでしたでしょうか。

 

症状がある箇所の訴えがあれば、容易に観察することができますが、症状がなく、自分の手と目と耳での観察に判断が委ねられると、フィジカルアセスメントはとたんに難しくなっていきます。

これはもう、経験を重ねて正常と異常を嗅ぎ分けられるようにしていくしかありません。


ここで知識を習得したら、すぐにでもとにかく実践を積み重ねていきましょう!

 

観察することでしか経験はできない。

ナイチンゲールの言葉です。

 

どんどん観察していきましょう!( ・∀・)

 

おわり

 

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