栗看

~くりかん~

易感染性(感染リスク状態)の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】

こんにちは、栗鈴です。

今回の記事は、『易感染性の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』になります。よろしくお願いします。

 

 

はじめに

 易感染性とは、感染症にかかりやすくなっている状態のことです!感染症を予防して治療することは、医療従事者にとっての義務であり使命だと思います!たいていの人は日常的に手洗い、うがい、お風呂などで体を定期的に清めながら生活をしていますが、病院ではそうした清潔行動が制限されていたり、セルフケアが不足していて介助が必要な方が多くみられます。したがって、主体的に医療従事者が感染予防行動を実施していかないと、どんどん環境の汚染が進み、感染リスクが増大し、院内感染を引き起こすことになります!易感染性の性質を学んだ上で看護ができれば、必ず質の高い感染予防に繋がっていきます!しっかり勉強をしておきましょう!

感染予防は、感染しやすい人を感染させないことが最重要です!

 

易感染性の総論

  • 生体防御機構が低下して感染症にかかりやすくなった状態を易感染性という。
  • 易感染性患者のことを『compromised host』 (感染防御低下宿主)と呼ぶ。
  • 易感染性については3つの側面がある。
  1. 感染を繰り返しやすい
  2. 感染が重症化、遷延化しやすい
  3. 健常者では見られない感染症(日和見感染症)に罹患する

である。

  • 感染症の成立には、病原体、感染経路、宿主 (患者)の3つが関わってくる。したがって易感染性を考える際にも、この3つの要素がどのように関与しているかを区別して考える必要がある。

生体防御の仕組み

  • 生体防御機構には、
  1. 正常な皮膚・粘膜
  2. 貪食細胞
  3. 液性免疫
  4. 細胞性免疫

が必要である。先天性に機能を欠失した免疫不全症(原発性免疫不全症)の患者の解析から詳細が明らかになってきている。

  • 一般的に臨床では易感染性の指標として
  1. 好中球数<500/μl以下
  2. IgG< 500mg/dl以下
  3. CD4陽性T細胞数<500/μl以下

が用いられる。

  • 感染症が成立するためには、まず病原体が 宿主(患者)に入り込む必要がある。鼻粘膜、口腔粘膜、気道粘膜、消化管粘膜、皮膚が入り口になる。
  • 皮膚は固い角質層で守られ、細菌などの侵入を防いでいる。
  • 幼児は角質層の発達が未熟で皮膚の感染症を起こしやすく、また、第三者に広げてしまう(伝染性膿痂疹:とびひ)。
  • 粘膜は粘液や抗菌物質で覆われ、また気道上皮は繊毛で覆われ、侵入してきたホコリや病原体を体の外へ絶えず運び出している。これらが大きな塊となると、痰となって排出される。
  • 繊毛の運動機能に障害がある、痰が過度に粘稠になり繊毛運動で排泄されにくい、痰がうまく排出できないなどの場合は、結果的に感染のリスクが上昇する。
  • 下痢もまた病原体を排出しようとする生体防御反応の一つである。下痢を薬で抑えることは必ずしも良いことではない。
  • 気管挿管、各種カテーテル挿入は皮膚、粘膜のバリア機構を破綻させ、病原体の侵入を容易にさせ、結果的に感染症のリスクを増加させる。
  • 嚥下障害のある患者では誤嚥により肺炎を繰り返すことがある。 広義のバリア機能の破綻といえる。
  • 病原体が体内に入り込むと 生体内の免疫反応が繰り出され、貪食細胞、液性免疫、細胞性免疫が協力しあい、病原体の増殖を防ぐ。
  • ウィルスに対する免疫防御:ウイルスが増殖するためには、細胞に感染する必要がある(偏性細胞内寄生体)。ウイルスが細胞に感染する前にウイルスと反応し感染を防ぐ生体物質として免疫グロブリン( 中和抗体)がある。免疫グロブリンはウイルスに一旦感染した後にT細胞B細胞がウイルスを認識し、協調してB細胞から産生される。ウイルスが細胞に感染するとNK細胞D細胞が感染した細胞を殺してウイルスの増殖を止めるように働く。したがって、ウイルス感染に対する免疫の中心はリンパ球(特にT細胞)であり、リンパ球機能に異常があるとウイルス感染を起こしやすく、しかも重症化する。
  • ウイルスに感染する前に、あらかじめ免疫グロブリンを作らせるために予防接種が行われる。
  • 細菌、真菌に対する免疫防御:細菌・真菌の大半は自分で増殖して感染症を引き起こす。結核菌、サルモネラ菌、リステリア菌などの一部の菌は食細胞(主にマクロファージ)内でも増殖が可能で、通性細胞内寄生体と言われる(感染時には主に細胞内で増殖する)。細菌や真菌は主に好中球、マクロファージによって貪食され処理される。細菌に抗体や補体が反応すると貪食されやすくなり(オプソニン作用)、また補体の一部は走化因子となり好中球を集積させる。マクロファージに貪食された細菌が殺されるためには、T細胞により、マクロファージが活性化される必要がある。 マクロファージは貪食した病原体の抗原を体細胞に提示して獲得免疫への橋渡しをする。以上により、好中球の質的・数的異常および抗体・補体の異常では細菌感染を引き起こしやすくなり、結核菌などの通性細胞内寄生体ではT細胞の異常も易感染性に関連してくる。
  • 莢膜(きょうまく)多糖体で覆われる細菌は一般に貪食されにくい。乳幼児の肺炎や髄膜炎の原因として重要なインフルエンザ桿菌b 型肺炎球菌は抗体によるオプソニン化がないとほとんど貪食されない。このため、2つの細菌に対して抗体を誘導するワクチンが開発され、予防効果が認められている(日本では前者に対するワクチンが2008年、後者に対するワクチンが2010年に始まった。いずれも任意接種である)。

皮膚・粘膜バリア障害時にみられる感染症の主な原因菌

  • 黄色ブドウ球菌:血管留置カテーテル、外傷、熱傷、褥瘡、腹部手術、糖尿病
  • カンジダ:血管留置カテーテル、外傷、熱傷
  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌:血管留置カテーテル
  • 緑膿菌:外傷、熱傷、褥瘡
  • グラム陰性桿菌:外傷、熱傷、褥瘡、腹部手術、糖尿病
  • 嫌気性菌:褥瘡、腹部手術、糖尿病
  • 腸球菌:腹部手術
  • A群溶連菌:糖尿病

液性免疫障害で感染を引き起こす主な病原体

  • 莢膜保有菌:肺炎球菌、肺炎桿菌、インフルエンザ菌B型など
  • 毒素産生菌:黄色ブドウ球菌、A群連鎖球菌、大腸菌、ウェルシュ菌など

細胞性免疫障害で感染を引き起こす主な病原体

  • 真菌:カンジダ、クリプトコッカス、アスペルギウス、ニューモシスチス・イロヴェチ
  • 細胞内寄生菌:結核菌、非定型抗酸菌、サルモネラ族菌、レジオネラ菌、リステリア菌
  • ウイルス:水痘、帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス
  • 原虫:トキソプラズマ、クリプトスポリジウム

免疫不全症

  • 病原体に対する生体防御機構が働かず、易感染性を特徴とする病態が免疫不全症で、原発性二次性がある。
  • 原発性免疫不全症は、先天的に易感染性を呈する疾患であり、多くの疾患で遺伝子異常が確定されている。易感染性に加え、家族歴などが診断を進める上で参考になる。また、特定の病原体に易感染性を示すことが多いため、病原体の同定は診断の手がかりとなる。乳児期にニューモシスチス肺炎、サイトメガロウィルス肺炎、心筋感染症に罹患した場合は重症なタイプが疑われ、診断手順に従って早期に診断を進める必要がある。重症な免疫不全症では乳幼児期に造血幹細胞移植を行わないと救命できない。
  • 二次性免疫不全症:糖尿病、肝不全、腎不全、担癌患者などは、病気が進行すると貪食能、殺菌能、オプソニン活性の低下など、免疫機能 全般の低下をきたす。疾患の治療として使用される免疫抑制薬(ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス水和物、メトトレキサート)などは、主にT細胞機能を低下させ、医原性の易感染性をもたらす。
  • 担癌患者:体内に癌を有し、癌による重要臓器の破壊や物理的圧迫など様々な悪影響を受け 、全身状態が極めて不良な状態にある。

易感染性の治療法・対症療法

  • 原発性免疫不全症の場合は、造血幹細胞移植や遺伝子治療が根本治療である。
  • 二次性免疫不全症では、原因となる基礎疾患 (糖尿病、肝不全、腎不全、がんなど)の治療および原因薬剤の減量、中止を目指す。
  • 全ての場合に感染予防対策( 誤嚥予防を含む )を行う。
  • 液性・細胞性免疫機能が強く障害されている場合には、予防的γブログリン補充療法、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST) 合剤(ニューモシスチス肺炎予防)、抗真菌薬、抗ヘルペスウィルス薬を投与する。

易感染性の看護問題の例

#1 易感染性である

#2 適切な感染予防行動がとれない

#3 患者・家族が感染症への不安を抱えている

 

#1 易感染性である

看護診断

感染リスク状態

リスク因子

慢性疾患

不適切な一次防御機構

不適切な二次防御機構

免疫抑制

薬物

長期目標

感染を予防できる

短期目標

感染予防のための適切な行動がとれる

観察計画(OP)

  • 臨床検査値(白血球数、好中球数、IgE、CD4 陽性T細胞数)
  • 体温の変化
  • 粘膜炎や下痢
  • 皮膚の角質層
  • 便の硬さ、便秘の有無
  • 咳、痰な有無、息切れ、呼吸困難の有無
  • 頻尿、排尿困難、血尿、混濁尿
  • 体内に留置されているカテーテル挿入部位の紅斑、疼痛、腫脹など

ケア計画(TP)

  • 発熱がなくても1日に3回程度は体温を測定する
  • 病室を清潔にする(換気、ドアノブや蛇口の清潔を保つ)
  • 医療者の手洗いを確実に行う
  • 衛生的な食事を提供する
  • スキンケアにより皮膚のバリア機能を保つ
  • 患者が自分で清潔の保持ができない場合には 、口腔ケアや全身清拭、陰部洗浄などを介助する
  •  体にカテーテルなどが留置されている場合は 挿入部位の清潔に努め、適切な間隔で交換する
  • 投与支持されたG-CSF(顕粒球コロニー刺激因子)製剤は確実に投与する
  • 予防的に抗生物質や抗菌薬を投与する場合は確実に行う
  • 易感染性が重度かつ長期化 する場合には、個室か、高性能微粒子フィルター装備の病室( クリーンルーム)とし、面会を制限して清潔な環境を提供する

教育計画(EP)

  • 自分でできる感染予防法を教育する
  1. 手洗いや口腔ケアの方法
  2. 体調が悪くない限り毎日入浴すること
  3. 切り傷や火傷しないようにすること
  4. 陰部の清潔を保つ方法
  5. スキンケアの方法
  6. 口腔ケアの必要性
  7. 人混みを避けること
  • 易感染性が重度で自宅療養をしている場合は 、1日に2回程度は体温を測定し、38度以上の発熱があれば医療機関に連絡するよう説明する
  • 予防的に処方された抗生物質や抗菌薬を確実に服用するよう説明する
  • 易感染性であることを家族に理解してもらい 、入院中は面会時の家族のマスク着用や生もの、生花の持ち込み制限について協力を得る
  • 自宅療養中の場合は、易感染性の程度によっては 外出や生物の摂取制限について家族の協力を得る

 

#2 適切な感染予防行動がとれない

看護診断

非効果的自己健康管理

診断指標

治療計画を毎日の生活に組み込むことができない

危険因子を減少させる行動をとることができない

長期目標

適切な感染予防行動を取れる

短期目標

感染予防の必要性を理解できる

観察計画(OP)

  • 手洗いや咳嗽の実施状況
  • 歯磨きなど口腔ケアの実施状況
  • シャワー浴や入浴の実施状況
  • 摂取している食事や間食の内容
  • 易感染性が重度な場合には、マスクの着用状況
  • 易感染性が重度な場合には、外出を回避しているか
  • 抗生物質や抗菌薬が処方されている場合の服薬状況
  • 感染予防の必要性についての患者や家族の理解度

ケア計画(TP)

  • 体調が悪いなど、何らかの理由で身体の清潔を患者自身で保てない場合、全身清拭や口腔ケア、陰部洗浄などを介助する
  • 何らかの理由で服薬を自己管理できない場合は、抗生物質や抗菌薬の服用を介助する

教育計画(EP)

  • 感染予防のために行う事柄をパンフレットなどを用いて説明する
  • 易感染性となった原因や感染予防行動の根拠を説明する
  • 感染予防行動を生活の中に組み込めるよう、患者の生活習慣を情報収集し、実施できる方法を共に考える
  • 好中球数や免疫力の指標となる臨床検査値を患者に伝え、易感染性であることの理解を深める
  • 易感染性の回復の見通しを説明する

 

#3 患者・家族が感染症への不安を抱えている

看護診断

不安

診断指標

警戒する

用心深くなる

緊張の増大

長期目標

感染予防行動を取る中でも、心理的安楽を保てている言動が聞かれる

短期目標

不安を言葉に出して表現できる

心理的安楽につながる生活上の工夫ができる

観察計画(OP)

  • 不安や緊張の表情や言動
  • 感染予防行動についての言動や行動
  • 体調についての言動
  • 病状や治療に対する質問の有無の内容
  • 個室で過ごしている場合は、他者との関わりの状況や確認によるストレスの程度

ケア計画(TP)

  • 不安が供出できるような落ち着いた態度で接する
  • 治療や処置を行う場合は、説明を十分に行い、心配や質問がないか聞き、丁寧に答える
  • バイタルサイン測定後や検査実施後は、その結果を速やかに説明する
  • 感染予防行動をとりながらも生活の中でできる楽しみや遊び、リラックスできることを探し継続する
  • 強度の不安の場合は医師に報告し、精神科や 臨床心理士からの支援を得る

教育計画(EP)

  • 感染症が心配になることは当然であることを伝える
  • わからないことや心配なことは看護師に表出して良いことを伝える
  • 感染予防行動を取りながらも、これまで通り できることを共に探す
  • 感染した場合に行う治療法を説明する

以上になります!

おわりに

 臨床では、慢性疾患(糖尿病、肝不全、腎不全、癌)や副腎皮質ステロイドを投与している患者さまが多く、易感染性の状態になっている方が多く見られます!感染予防を徹底すると同時に、感染が疑われる症状の早期発見に努め、感染が疑われる場合には治療をすみやかに開始することが重要です!

 また、易感染状態を認めない患者さまでも、治療経過によって易感染性を生じたり、進行したるすることもあるため、常に感染リスクをアセスメントしながら確実に感染予防ができるようにしていきましょう!

 可能な場合には、患者さま自身に手洗いやうがいの徹底を促すなどの指導も重要です!

参考文献

緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図 287‐300P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院

 

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