こんにちは、栗鈴(くりりん)です。
今回の記事のテーマは『意識障害の看護計画の例』になります。
宜しくお願い致します。
- はじめに
- 意識障害の病態生理
- 意識障害の原因または考えられる疾患
- 意識障害に随伴する症状
- 意識障害の診断
- 意識障害の看護問題の例
- #1 舌根沈下による気道閉塞、換気量低下による無気肺、気道分泌貯留による沈下性肺炎を起こしやすく、呼吸障害による低酸素血症がみられる
- #2 体動不能のため、褥瘡、静脈血栓、便秘が起こりやすく、易感染状態にある
- #3 意識障害に伴う誤嚥のリスクがある
- #4 セルフケアが困難である
- #5 話す能力、相手からのメッセージを受け止める能力に障害がある
- #6 家族が予後や意思疎通ができないことに対する不安を抱いている
- おわりに
- 参考文献
はじめに
意識状態の確認は状態観察の基本であり、体温や脈拍、血圧、SpO2などと同等に重要な観察項目です!
意識状態に異常がある≒意識障害は、時に生命の危機に直結する事態となることがあります!脳の不可逆的変化を引き起こした場合は、後戻りできない状況に陥る場合もあります。そうした状況を起こさないためにも、正確な観察と看護ケアができるように一緒に勉強しておきましょう!
それではやっていきます。

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意識障害の病態生理
- 意識には①覚醒、②認識の2つの要素があり、これが障害された状態を意識障害という。
- 一般的には覚醒の障害を指すことが多い。せん妄、無言無動、失外套症候群といった覚醒のみでは表現しにくい特殊な意識障害もある。
- 意識は上行性網様体賦活系(橋および中脳の被蓋傍正中部~視床下部に存在)から大脳皮質全体への広範な投射経路があり、これを介して大脳皮質が賦活されることにより維持される。
- したがって意識障害がある場合には、上行性網様体賦活系もしくは両側大脳皮質の広範な障害の存在が考えられる。
- 意識障害の原因は多岐にわたるが、その病態は中枢神経系自体に一次性に病変がある場合と、全身疾患の影響で二次性に中枢神経系が障害されている場合に大別される。
意識障害の原因または考えられる疾患
一次性に中枢神経が障害される疾患
1.脳血管障害
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、静脈洞血栓症など
2.外傷
脳挫傷、頭蓋内血腫(硬膜外、硬膜下、脳内)など
3.炎症
脳炎、髄膜炎、脳腫瘍、硬膜下膿瘍、急性散在性脳脊髄炎、全身性エリトマトーデス、その他の血管炎など
4.腫瘍
原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、悪性リンパ腫、髄膜癌腫症など
5.てんかん
重積発作、全般発作、複雑部分発作、発作後もうろう状態など
6.その他
中心性橋髄鞘崩壊症、水頭症
全身疾患に伴い二次性に中枢神経が障害される疾患
1.代謝・内分泌
糖代謝異常(低血糖、高血糖)、電解質異常(ナトリウム、カルシウム、マグネシウムの異常)、肝障害(高アンモニア血症など)、腎障害(尿毒症)、内分泌異常(甲状腺中毒症、副腎皮質機能不全など)、ビタミン欠乏症(ビタミンB1欠乏症:ウェルニッケ脳症、ビタミンB6血症、ビタミンB12欠乏症、ナイアシン欠乏症:ペラグラ脳症)、ミトコンドリア異常症(MELAS:ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群、リー脳症)
2.循環・呼吸
低酸素血症(心不全、肺炎、貧血、窒息など)、高炭酸ガス血症(慢性閉塞性肺疾患:COPD)、高血圧症(高血圧性脳症)
3.中毒
薬物中毒(睡眠薬、抗精神病薬、抗てんかん薬、麻薬、農薬など)、アルコール中毒(急性・慢性)、一酸化炭素中毒、水中毒
4.体温異常
高体温、低体温
5.その他
敗血症に伴う脳症、精神疾患など
意識障害に随伴する症状
- 突発する頭痛(くも膜下出血など)
- 頭痛・発熱・髄膜刺激徴候(脳炎、髄膜炎など)
- 嘔吐(脳炎、髄膜炎、脳腫瘍、頭蓋内血腫、脳梗塞、脳出血など)
- けいれん(てんかん、脳炎、脳腫瘍など)
- 神経局所徴候(脳梗塞、脳出血、脳挫傷、脳炎、脳腫瘍など)
- 外傷(脳挫傷、頭蓋内血腫など)
- 冷汗・頻脈(低血糖など)
- クスマウル呼吸・アセトン臭(糖尿病性ケトアシドーシス)
- アンモニア臭(高アンモニア血症)
- 羽ばたき振戦(高アンモニア血症、尿毒症、高炭酸ガス血症)
- 発熱、頻脈、多汗、眼球突出(甲状腺中毒症)
- 発熱、下痢、皮膚色素沈着(副腎皮質機能不全)
- チアノーゼ(低酸素血症)
- 高体温(重症感染症)
- 低体温(アルコール中毒)
意識障害の診断
- 重症の意識障害の場合には一見してそれと分かるので直ちに対応する。
- 軽症の場合には認知症と間違う場合もあり、注意が必要である。
- 診断のポイントは、病歴聴取、一般身体所見、神経学的所見の確認を救急処置と並行して滞りなく行うことである。
病歴聴取
- 患者自身から詳細な病歴を聴取することは困難であり、患者と会話ができたとしても正確な情報を得ることは難しい。したがって、家族など他者からの情報が重要である。認知症との区別は、経過で症状の変動があるかを確認する。
- 発症様式:突然発症か、徐々に増悪したか、どの程度の速さで増悪したかなど
- 随伴症状:発熱、けいれん発作、不随意運動の有無など
- 基礎疾患の有無:膠原病、感染症、内分泌・代謝性疾患など
- 常用薬の有無とその内容
- 既往歴:意識障害の既往の有無、胃切除歴の有無など
- 飲酒歴:アルコール多飲の有無のほか、偏食の有無についても確認する
- 最近の精神状態:精神症状がある場合、薬物大量摂取や水中毒等の可能性を示唆
一般身体所見
- バイタルサイン:血圧、脈拍、体温、呼吸状態
- 一般内科学的所見:頭頸部、胸腹部、四肢の異常について確認
- 外傷の有無:衣服を脱がせて全身を確認する(眼窩周囲、耳介後部の血腫の有無、耳・鼻からの髄液漏出の有無:頭蓋底骨折の可能性を示唆)
- 咬舌の有無
- 尿・便失禁の有無
- 皮膚色調:低酸素血症時のチアノーゼ、一酸化炭素中毒時の鮮紅色など
- 呼吸臭:アセトン臭、アンモニア臭などは代謝性疾患を示唆
神経学的所見
- 重症度の把握:ジャパン・コーマ・スケール(JCS)、グラスゴー・コーマ・スケール(GCS)を用いて評価する。また具体的な状況(強い痛み刺激で3cm程度上肢を屈曲した、呼びかけに対して容易に開眼したが5秒で目を閉じたなど)も記載しておくほうがよい。
- 呼吸パターンの判定、脳ヘルニア徴候の有無
- 神経局在徴候の有無:共同偏視、麻痺など
- 髄膜刺激徴候の有無:項部硬直、ケルニッヒ徴候など
意識障害の治療法・対症療法
- 治療は原則として原因診断に基づくべきである。しかし、意識障害においては短時間に刻々と患者の状態が変化し船名に危険が及んでいる場合も少なくない。その場合には直ちに治療を開始する必要がある。原因診断は重要だが、それにこだわって治療が遅れるようなことがあってはならない。
- まずはバイタルサインを確認し、モニター装着、静脈路確保、尿道カテーテル留置などの基本的な救急処置を行う。
- 呼吸不全、循環不全があれば直ちにそれらの治療を開始する。
- けいれん発作を伴っている場合には抗けいれん薬(ジアゼパム、フェニトイン等)を投与する。
- 脳ヘルニア徴候があれば、頭蓋内圧降下薬(グリセオール等)を投与する。
- 低血糖発作の可能性がある場合にはブドウ糖の静脈投与を行う。
- ウェルニッケ脳症が疑われる場合にはビタミンB1(アリナミンFなど)の投与を行う。
意識障害の看護問題の例
#1 舌根沈下による気道閉塞、換気量低下による無気肺、気道分泌貯留による沈下性肺炎を起こしやすく、呼吸障害による低酸素血症がみられる
#2 体動不能のため、褥瘡、静脈血栓、便秘が起こりやすく、易感染状態にある
#3 意識障害に伴う誤嚥のリスクがある
#4 セルフケアが困難である
#5 話す能力、相手からのメッセージを受け止める能力に障害がある
#6 家族が予後や意思疎通ができないことに対する不安を抱いている
#1 舌根沈下による気道閉塞、換気量低下による無気肺、気道分泌貯留による沈下性肺炎を起こしやすく、呼吸障害による低酸素血症がみられる
看護診断
非効果的呼吸機能リスク状態
リスク因子
中枢神経系の抑制、呼吸パターンの変化、異常呼吸、呼吸抑制、舌根沈下、咳嗽反射抑制
長期目標
呼吸機能が最大に維持できる
短期目標
常に気道が確保される
低酸素血症を起こさない
肺炎、無気肺等の呼吸器合併症が起こらない
観察計画(OP)
- 呼吸数、リズム、深さ
- 舌根沈下によるいびき様呼吸の有無
- SpO2をモニタリングする
- 呼吸音の聴取を定期的に行う(副雑音の有無、呼吸音の左右差)
- 血圧変動(収縮期血圧の上昇と脈圧拡大)、徐脈
- 意識状態
- 血液データ:CRP、赤血球沈降速度(赤沈)、白血球
ケア計画(TP)
- 気道確保ができる体位をとる
- 指示に応じられれば深呼吸を促す
- 口腔ケアを行う
教育計画(EP)
- 排痰や口腔ケアなどの必要性について説明する
- 喀痰が粘稠な場合、吸入の必要性を説明する
- 自力で排痰できない場合は、吸引の必要性を説明する
#2 体動不能のため、褥瘡、静脈血栓、便秘が起こりやすく、易感染状態にある
看護診断
不使用性シンドローム(廃用症候群)
診断指標
皮膚統合性障害リスク状態
末梢組織循環障害リスク状態
便秘リスク状態
感染リスク状態
長期目標
体動不能に伴う合併症が起こらない
短期目標
良好な皮膚状態を維持できる
静脈血栓症の予防に向けた対応を継続できる
普段の排便状況に近い回数の自然排便がある
感染症を起こさず過ごせる
観察計画(OP)
- 皮膚発赤の早期発見、表皮剥離など畏怖組織の破綻(褥瘡の有無)
- 同一体位をとっていないか、同一部位が圧迫を受けていないか、ベッド上ファウラー位や車椅子乗車時などには身体がずれ落ちていないか観察する
- 便の性状、回数、排便時の苦痛の有無
- 尿量、尿の性状(浮遊物や出血、凝血の有無)、排尿週末時疼痛の有無を観察
- 水分出納管理の上、必要水分量の把握
- 喘鳴の有無、肺音聴診(副雑音、呼吸音の減弱など)
- 不穏や著しい体動、ベッドフレームへの四肢の打ち付けなど
ケア計画(TP)
- 定期的な体位変換を行う
- 定期的な排尿・排便を誘導する(トイレ、病状により床上排泄)
- 水分出納管理を行い、適宜水分を補う
- ベッド転落防止のため、必要に応じベッド柵や離床センサーマットなどを配置する
教育計画(EP)
- 自力で動ける場合には、許可された範囲(ベッド上など)で関節運動や自力での体位変換を行い、同一姿勢とならないように指導する。
#3 意識障害に伴う誤嚥のリスクがある
看護診断
誤嚥リスク状態
リスク因子
意識障害、嚥下障害
長期目標
誤嚥せずに患者の代謝需要及び活動レベルに応じた栄養必要量が毎日摂取できる
短期目標
誤嚥を起こさない
観察計画(OP)
- 嚥下障害の有無
- 喘鳴の有無、呼吸音の聴取(副雑音の有無)を行う
- 血液検査データ(白血球、赤沈)
ケア計画(TP)
- 意識障害時、分泌物が多いときは、特に気道吸引の準備をしておく
- 口腔ケアを行い口腔内の細菌を減少させる
- 嚥下できない時は経管栄養または点滴静注の指示を受け実施する
- 経管栄養注入後は上半身を30度以上挙上しておく(30分程度)
- 経口摂取開始時は、嚥下時の嘔吐反射がないか、甲状軟骨が上下(喉頭挙上)して嚥下するかを確認する
教育計画(EP)
- 誤嚥の徴候と予防法を説明し、徴候がみられた場合には報告するように伝える
- 安全な栄養摂取の方法を説明する
#4 セルフケアが困難である
看護診断
セルフケア不足
診断指標
食物を口まで持っていくことが出来ない
トイレやポータブルトイレで排泄できない
全身または体の一部を洗えない
長期目標
患者自身が食事、排泄、清潔、更衣の日常生活動作に参加する
短期目標
自助具などを用いて摂食行為ができる
排泄補助具(ポータブルトイレ等)を使用する能力を示す
身体の清潔が保持でき、清潔の心地よさについて表出がみられる
観察計画(OP)
- 運動麻痺、感覚麻痺の程度、関節可動域、日常生活動作能力の程度
- 意識レベルの程度
- 食物を口に運ぶ、食器を持つなどの動作の可否と必要援助内容
- 排泄のニーズを表現する手段の有無とその具体的方法
- 排泄習慣と既往(便秘や排尿障害)
- 尿意・便意の有無、排泄パターン(排泄時間・タイミング)
- トイレまでの移動動作、便器上での姿勢保持の可否
- 全身の皮膚、粘膜の状態を観察する(特に口腔内、陰臀部の状態)
ケア計画(TP)
- 意識障害が一定程度警戒し、経口摂取可能と判断できた場合、食事環境と患者の姿勢を整える
- 咀嚼・嚥下能力に応じた食事形態を選択する(嚥下食の開始時は特に誤嚥に留意する)
- 尿意・便意を表現できない場合はおむつを使用し、膀胱留置カテーテルの挿入は最小限にする
- トイレ排泄の場合、移動・排泄時の転倒・転落を防止する
- 意識障害が一定程度軽快したら尿意・便意が不明瞭でも排泄を誘導し、失禁を防止する
- 急性期は全身清拭、陰部洗浄、口腔ケアを看護師が実施する
- 意識障害が一定程度軽快したら、患者自身ができることから清潔行為ができるよう支援する
- 衣類の着脱が容易になるよう、袖・裾が広く、前開きの着衣を選択する
教育計画(EP)
- 患者・家族の障害に対する気持ちと援助の必要性に関する認識を確認する
- 患者が行おうとする意思を尊重する(必要以上に代行することは患者の依存心を高めるので留意する)
- 麻痺などにより、できにくい行為については補助具の使用を提案するなど極力自力でできるように支援する
#5 話す能力、相手からのメッセージを受け止める能力に障害がある
看護診断
コミュニケーション障害
診断指標
会話や返答が不適切、またはみられない
話す際、正しい言葉を表出することに問題がある
長期目標
意思疎通を図ることが出来る
短期目標
自分の意志を簡単な方法(非言語的手段を含む)で伝達できる
観察計画(OP)
- 患者に送ったメッセージを理解できているか観察する
- 何らかの意味を持つサインを発していないか観察する
- 閉じ込め症候群(認知機能は正常であるが、動くこと、話すことが障害され、域伝達ができない覚醒状態)ではないことを確かめる
ケア計画(TP)
- 正面を向いてはっきりと明瞭に話す
- 複雑でない、わかりやすい説明・指示をする(患者の反応がなくとも同様)
- タッチングしながら話す
- 静穏な環境で話しかけ、話しかける際は一人だけが話しかける
- 患者が誤ったことを言っても指摘しない
- 看護師が患者のメッセージを理解できない時は、理解できないと伝える
教育計画(EP)
- 意思疎通ができないこと、病状の見通しが不明瞭なことなどの家族の不安に寄り添う
- 家族が状況を理解し、現実的な見通しをもつように指導する
#6 家族が予後や意思疎通ができないことに対する不安を抱いている
看護診断
不安
診断指標
緊張した表情
落ち着きがない
心配
長期目標
家族が心理的・身体的安楽が増大したことを表現できる
短期目標
家族が不安を言葉に出して表現できる
患者の表情や身振りにより、苦痛が軽減していることを理解し、家族の不安が軽減される
観察計画(OP)
- 家族の不安や緊張の表情、落ち着きがない様子の有無
- 家族の不安や心配の訴え、怒り
- 家族の身体的反応:ふるえ、または手指の振戦、頻脈、頻呼吸
- 家族が述べる患者の状態や治療に関する質問の有無、内容
ケア計画(TP)
- 不安が表出できるような態度で接する
- 患者の健康状態の変化など、不安を増大させている要因を取り除く
- 治療や処置を行う場合は、説明を十分に行い、心配や質問がないか聞き、丁寧に答える
教育計画(EP)
- わからないこと、心配なことがあれば質問するように伝える
おわりに
意識障害は、早期の原因疾患の治療が重要です!
呼吸・循環の障害を随伴している場合は、まずそこからの対応が必要です。
また、意識障害からの体動困難に伴う褥瘡、誤嚥、転倒、感染、便秘などのリスクが高まるため、合併症を起こさないことが大切です!
急性の意識障害が発生した際は本人・家族ともにショックが大きくなる可能性が高いため、傾聴や対話を通した精神的支援を欠かさずに行うことも大事です。
状態改善のために、全体像を捉えながらスキのない看護を心がけていきましょう!!
以上になります!
あと、X(旧ツイッター)『栗鈴』もやっております!
適当なことばっかりポストしておりますが、プロフィールの方にアドレスがありますので、お暇があれば覗きにきてください~
記事のリクエスト、はてなブックマーク、コメントもお待ちしております!
ページの下の方なのですが、コメントくださった方には必ず返事しますので、よかったらどうぞ!
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参考文献
緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図 336‐354P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院