みなさんこんにちは、栗鈴です。
今回の記事は、『気胸の看護計画(OP TP EP)【疾患知識から看護診断まで丸分かり!】』になります。
よろしくお願いします。
はじめに
皆さんは、身近に気胸を起こした人っていませんか?
私は高校生のときの友達が気胸を起こしことがありまして、お見舞いに行ったときにその友達の胸にドレーンが入っていて、『うわーきつそう…(・_・;)絶対なりたくないなぁ…』となった覚えがありますねぇ。
気胸は、若くて健康な人であっても起こりえます。
自然気胸は、若くて背の高く痩せた男性に好発する病気です。
どのような診療科であっても知っておくべき疾患の一つです。
ぜひ今回の記事を一読していただき、皆さんの知識の助けになればと思います!
では、早速やっていきましょう!
気胸
【概念】
胸腔に空気が貯留したため肺が虚脱状態になった病態を気胸という 。
空気の流入経路から内因性と外因性に分類される。
【病態生理】
- 胸膜腔には普通少量の胸膜液しかない。
- 何らかの原因によって、 胸腔に空気などの気体が入り込み、陰圧であるべき胸腔が外気と同じ圧になった状態を気胸とよぶ。
- 気胸になると、肺は収縮して無気肺の状態になる。
その成因によって、
- 自然気胸(特発性気胸)
- 外傷性気胸
- 人工気胸 などに分けられる。
1.自然気胸
主に肺尖部に生じる気腫性嚢胞(ブラ・ブレブ)が破裂することにより生じる。
ブラとは?
肺胞を囲む壁の一部が何らかの原因によって損傷し、複数の肺胞が損傷箇所を通して開通されることにより、一つの大きな気腫となった状態を指す。
ブレブとは?
ブラが肺の臓側胸膜に接触しているものを指す。ブラよりもさらに破裂しやすくなっている状態といえる。
2.外傷性気胸
胸部打撲や骨折に合併して発症するもの。
3.人工気胸
診断や治療の目的に意図的に肺を虚脱させる。肺結核の治療法の1つである。
【症状】
- 突然の胸痛(発症した時間が特定できることが多い)
- 乾性咳嗽
- 呼吸困難
- 胸部聴診にて患側の呼吸音の減弱~消失 打診上鼓音を認める。
<合併症>
緊張性気胸
空気が漏れている部位が一方向弁となっている状態。
- 胸腔内に一方的に空気が漏れ出し、胸腔内圧は陽圧になる。
- 胸部X線撮影では、縦隔の反対側へ胸腔が偏位していたり、横隔膜の低位がみられるようになる。
- 高度の低酸素血症、血圧低下、頻脈がみられ、放置すればショック状態となり生命の危機に陥る。緊急の脱気が必要である。
血胸
胸腔内に空気とともに血液が貯留する気胸。
- 外傷や、肺が虚脱するときに胸膜の血管を含む部分が離断されて出血が起こる。
- 胸腔穿刺により血液が吸引されることで診断される。
- 高度の貧血や血圧低下に陥る場合は、緊急の開胸手術の適応となる。
再膨張性肺水腫
最低3日間以上虚脱していた肺を急速に再拡張場合に、同一側に肺水腫が起こることがある。
- 咳、泡沫状の痰、呼吸困難、チアノーゼなどがみられる。
- 酸素療法で軽快することが多いが、利尿薬やステロイドが用いられることもある。
【診断】
胸部レントゲンまたは胸部CT検査により、肺の虚脱を認めれば診断は確定する。
気胸虚脱度分類
日本気胸・肺嚢胞性肺疾患学会
自然気胸治療ガイドライン案
リダイレクトの警告
軽度
肺尖が鎖骨レベルまたはそれより頭側にあるもの、またはこれに準ずる程度
中等度
軽度と高度の中間程度
高度
全虚脱またはこれに近いもの
【治療】
<内科的治療>
1安静・経過観察
2保存的治療
胸部レントゲン写真と臨床所見を総合的に判断し肺虚脱の改善を目的とする治療方法で、以下の3つの治療法が一般的である。
a)胸腔ドレナージ
b)胸膜癒着術
c)気管支鏡下気管支塞栓術
a)胸部ドレナージ
胸腔内にチューブを留置して肺虚脱を改善する治療方法である。
- 脱気目的では8~20Fr のチューブが望ましい。
- 胸水貯留例および長期間留置が予測される症例ではフィブリンにより閉塞するおそれがあり、20Fr 以上のチューブが望ましい。
- 深呼吸や咳嗽でも空気漏れが無い事を確認後、半日以上ドレーンを クランプして、胸部単純X線写真で虚脱が無ければ抜管する。
- 可能な場合はさらに半日後に胸部単純X線写真で再虚脱の無いことを確認する。
b)胸膜癒着術
癒着剤を胸腔に注入して、胸膜の癒着をはかり気胸再発を防止する 。
癒着剤として
- テトラサイクリン系薬剤
- OK-432
- 自己血
- フ ィブリン糊
などがある。
- 一般には肺尖部分を中心に癒着剤が胸腔に広がるように体位変換することが重要である。
- 空気漏れがあるのでクランプはせず、薬液がすぐに排出されないようにチューブを身体より高い位置にする。
- 一般的には軽症例や手術非適応症例に施行する。
*薬剤の保険適応は認められていないが臨床的に多くの施設でおこなわれている。
c)気管支鏡下気管支塞栓術
破裂したブラ・ブレブに通じる責任気管支を塞栓することにより空気漏れを無くす手技。
気管支ファイバースコープ下バルーンカテーテル(フォガティーカテーテルなど)により、責任気管支を同定し、区域、亜区域気管支に塞栓子を充填する。
塞栓物質として、フィブリン糊が一般的であるが、コラーゲン製止血剤も用いられている。
一般には軽症例や手術非適応症例に施行する。
<外科的治療>
手術療法
胸腔鏡下手術法が進歩しており、自然気胸は良い適応である。
- 症例数も増加している。
- 全身麻酔での手術適応となる。
手術適応
1)再発を繰り返す症例
2)空気漏れの持続例
3)両側性気胸
4)著明な血胸
5)膨張不全肺
6)社会的適応
手術の種類
a)ブラ焼灼術(cauterizing)
b)ブラ結紮術(looping、clipping)
c)肺縫縮術
d)ブラ切除肺縫縮術
e)肺部分切除術
f)肺区域切除術
g)肺葉切除術
h)壁側胸膜切除術
*h)は追加処置であり、擦過術、掻爬術も含まれる。
看護問題
♯1.呼吸困難や胸痛、咳などの呼吸症状がある
♯2.再発の恐れがある
看護目標・看護計画
♯1.呼吸困難や胸痛、咳などの呼吸症状がある
長期目標
呼吸症状が軽減される
短期目標
安楽姿勢を保ち安静に過ごすことが出来る
観察計画(OP)
①2~4 時間毎に呼吸状態の観察をする
胸痛、息切れ、咳
②聴診
③動悸、チアノーゼ、顔面蒼白などの循環
器症状を観察する
④不安、錯乱、意識障害などの精神症状を
観察する
ケア計画(TP)
①安静
②呼吸が楽にできる姿勢をとらせる
③酸素吸入
④胸痛があれば鎮痛剤を投与する
⑤四肢の運動を4 時間毎に行う
⑥乾燥、埃、塵などにさらされないように
環境を整える
⑦体位変換、深呼吸を2~4 時間毎に行う
教育計画(EP)
①呼吸苦の増強があればすぐに連絡するよう説明する
②胸腔ドレーン挿入部は出来る限り動かさず安静にするよう説明する
③痛みがあれば遠慮せず伝えるよう説明する
④必要時、移動希望時は移動前に連絡するように説明する
♯2.再発の恐れがある
長期目標
肺合併症が起こらない。
短期目標
痛みが軽減したことを表出できる。
観察計画(OP)
①呼吸状態の観察は継続する
ケア計画(TP)
①呼吸状態に注意しながら運動を勧める
教育計画(EP)
①禁煙し粉塵や有毒ガスを避けるように
指導
②激しいスポーツは避ける
③強い咳をしない
④突然の胸痛、呼吸困難があったらすぐに
診察を受けるように指導する
挙げられる看護診断の例
- 手術創術中の体位・ドレーン挿入に伴う疼痛
- 入院・手術によるストレスの増大・侵襲的チューブ類の挿入による易感染状態
以上になります!
いかがでしたでしょうか。
おわりに
気胸の看護には、胸腔ドレーンの管理の方法も知識と技術が必要になります。
胸腔ドレーンの挿入介助・管理方法についてはまた別の記事で書いていきたいと思います!
その際は今記事の下部にリンクを載せますので、載ってたらぜひそちらも参照ください!
おわり
ご意見をお待ちしています。