みなさんこんにちは!栗鈴です!(^∇^)
今回の記事は『呼吸のフィジカルアセスメント【視診・触診・打診・聴診】』です!
宜しくお願い致します。
- はじめに
- 呼吸のフィジカルアセスメント:準備
- 呼吸のフィジカルアセスメント:問診
- 呼吸のフィジカルアセスメント:視診
- 呼吸のフィジカルアセスメント:触診
- 呼吸のフィジカルアセスメント:打診
- フィジカルアセスメント:聴診
はじめに
いきなりですがみなさん!
「息が苦しい」
という訴えを、看護師なら
聞いたことがない人はいないですよね!?
このような訴えがあれば、バイタルサインを必ず測定しましょう!
基本的なことですが、異常がみられることが多いです!
バイタルサインに異常があった場合、急変が起こる可能性を考慮しましょう!
ところで、患者さまの急変には2種類あります。
それは、
「予測できる急変」と、
「予測できない急変」。
例えば、急変の前にバイタルサインの異常があった場合は、そこから「急変が起こるかもしれない」と考えることができるので、これは「予測できる急変」に該当します。
「息が苦しい」「胸が苦しい」など、このような症状の訴えは、呼吸や循環の異常を示している場合があります。
人間は生きている限り、無意識に心臓は鼓動を打ち、肺はガスを交換し続けています。
そうすることで、ヒトは生命を維持できているんですね。
したがって、
呼吸・循環に異常があるということは、生命維持のシステムに異常を起こしている
と考えたほうがいいです。
【呼吸・循環の異常≒生命維持のシステムの異常】
では、生命維持のシステムに異常がある状態が持続すると、何が起こる可能性があるでしょうか?おわかりですよね。そう、急変です!
【呼吸・循環の異常≒生命維持のシステムの異常≒急変のリスク】ですよ!
このように、患者様の訴え(主観的情報)や表情・症状・バイタルサインの異常(客観的情報)に気づくことで、看護師は急変の可能性をある程度予測することができます。
ですから、バイタルサイン測定時もただ単に血圧、脈拍(心拍数)、呼吸数、Spo2など
数値を見るのではなく、得られた情報をヒントに、聞いて、視て、触って、聴いて、いろいろな角度から患者さまを診て、情報を収集するように心がけましょう。
そうすることで、詳しく患者さまの状態を把握することができますよね。
これが、フィジカルアセスメントです。
ここまで観察してケアを行うのが、プロとしての看護師に求められる力でしょう。
そんなわけで、今回は
呼吸のフィジカルアセスメント
について今回書いていきたいと思います(^^)
早速やっていきましょう!
呼吸のフィジカルアセスメント:準備
呼吸のフィジカルアセスメントの必要物品
- 聴診器(肺聴診に使用する)
- サインペン、定規(横隔膜の位置の確認に使用する)
- バスタオル(羞恥心への配慮として使用する)
- 呼吸のフィジカルアセスメントは
主に胸部と背部を診ます。
- 部位によって、診るための好ましい姿勢が異なります。そのため、用途に応じて姿勢を整えます。
背部の場合
- 座位で行います。
- 椅子は背もたれのない方がいいです。(邪魔になるので)
- 座位になれない場合は、側臥位で行います。
胸部の場合
- 座位または仰臥位で行います。
- 座位で行う場合はまっすぐ腰かけるように伝えます。
- できれば上半身を露出してもらいます。
- 羞恥心と保温には、十分配慮しましょう。
- バスタオルで露出を減らすとよいです。
- 室温はエアコンで適温に調節しましょう。
- 自分の手と聴診器は温めておきましょう。(冷たいと不快ですよ(^o^))
次に、問診です。
呼吸のフィジカルアセスメント:問診
息切れ、呼吸困難
- 有無
- 程度(軽度 か 著明)
- 動作時の症状増強の有無
咳嗽
- 有無
- 種類(乾性咳嗽 か 湿性咳嗽)
- 程度(軽度 か 著明)
- 期間(いつから、いつまで症状があるのか時間帯なども確認する)
喀痰
- 有無
- 性状(白色、黄色、褐色、鮮血色など)
- 量(少量、中等量、多量)
胸痛
- 有無
- 部位(右、左、両方、中心、背部)
- 程度(軽度 か 著明)
- 性状(鋭い痛み、チクチクと刺される痛み鈍い痛み、グググと押される痛み、焼かれるような痛み など)
- 持続時間(いつから いつまで)
- 痛みを誘因する因子(動作時、深く呼吸した時 など)
既往歴
-
呼吸器系疾患(肺がん、気管支喘息、COPD、肺水腫、気胸など)
- 治療経験(手術、ステロイド、放射線治療など)
喫煙歴
- 1日に吸う本数
- 喫煙年数
生活環境、職場環境
- 工場、製パン、大工、研究所など(化学薬品の取り扱いや、粉塵が生じる環境が肺疾患を起こすことが指摘されている)
次に、視診です。
ここから実際に患者さまのフィジカルアセスメントを実施していきます。
呼吸のフィジカルアセスメント:視診
- 患者さまに落ち着くよう声かけをかけます。
- 呼吸数、呼吸の性状を観察します。
[呼吸数・性状の正常]
- 呼吸数:規則的に14~20回/分
- 静か
- 喘鳴が聴取されない
[呼吸数・性状の異常]
- 前傾姿勢
- 緊張・不安・不穏・興奮
- 疲労
- 苦悶様表情
- 喘鳴
- 傾眠傾向
異常がある場合、下記の状態の可能性がある
- 低酸素血症(苦悶様表情)
- 気管支炎(喘鳴、不安)
- 喘息発作(喘鳴、苦悶様表情、前傾姿勢)
- CO2ナルコーシス(傾眠傾向、不穏、興奮)(特にCOPDの既往歴がある場合)
次に、前胸部、背部の皮膚状態を観察します。
[胸背部の正常]
- 皮膚の腫脹・損傷・発赤など皮膚の異常はなく、正常な色調である。
[胸背部異常]
- 腫脹・損傷・発赤・皮下気腫など皮膚の異常がある。
- 皮膚色がチアノーゼや蒼白である。
続いて、触診です。
呼吸のフィジカルアセスメント:触診
- まず、呼吸による胸郭拡張に異常所見が無いか触診します。
- 対象者の体に触れることを説明し、了解を得ます。
- 前面から、肋骨弓の下付近に両方の拇指を置きます。
- 背面からの場合、肺の下部、第10肋骨付近 (みぞおちよりやや下の高さ) の左右肋骨縁に、両拇指を置きます。
- ほかの指と手掌で胸部側面を包みます。
- 拇指を少し内側に寄せ、皮膚に軽くたるみをつくります。
- 対象者に深呼吸をしてもらいます。
- 看護師は自分の指間の角度の開き、手掌の動きを観察します。
[触診の正常]
- 吸気時に胸郭の拡張が見られます。
- 左右拇指が左右対称に3cm位広がります。
[触診の異常]
- 胸郭拡張が左右非対称(無気肺、肺炎、肋骨骨折など胸郭の外傷や気胸の可能性がある)
- 広がりが異常に小さい(肺気腫の可能性がある)
- 深呼吸で痛みを伴う(胸膜炎の可能性がある)
次に、声音振盪(声から伝わる胸部の振動)に異常所見が無いか触診します。
- 対象者の背部に手を置きます。
- 「ひとーつ、ひとーつ」などと低めの声で発声してもらいます。
- 中指の関節の骨を用いて、上から下へと左右対称に触れ、声音振盪(声から伝わる胸部の振動)を確認します。
[声音振盪の正常所見]
- 響きが左右対称に触れる。
- 上方で強く、下方ほど弱くなり、横隔膜より下では触れない。
- 痩せた人では響きやすく、肥満や筋肉質の人では響きにくい。
[声音震盪の異常所見]
- 左右非対称である。
- 一部で声音振盪が強く触れる。(肺炎や肺水腫の可能性がある)
- 一部で声音振盪が弱く触れる。(肺気腫、気胸、胸水の可能性がある)
最後に、胸部の皮膚の表皮と皮下に異常所見が無いか触診します。
- 指を使い胸壁全体を優しく触診します。
[胸部の皮下の異常]
- 圧痛がある。
- 皮膚に腫瘤(こぶ、しこり)や損傷がある。
- 熱感、冷感を感じる部位がある。
- きめの粗いパチパチするような感覚が皮膚表面で触診できる。(皮下気腫の可能性がある)
呼吸のフィジカルアセスメント:打診
- 前面、背面それぞれ肺尖部から始めます。肺尖部は、肺の最上部のところです。
- 肋間を左右対称に下へと打診します。
- 約5cmの間隔で打診します。
- 肩甲骨と肋骨の直下は避けます。
[打診の正常所見]
- 肺野では、打診音が共鳴音(清音:トントントン‥空気が入っている音)となる。
- 肩甲骨や肋骨などの骨の部分や肝臓、内臓の上では、濁音(ゴッゴッゴッ‥)となる。
[打診の異常所見]
- 過共鳴音(ポンポンポン‥)がする。(肺気腫の可能性がある)
- 肺部から濁音がする。(肺炎、胸水貯留、腫瘍、無気肺の可能性がある)
次に、横隔膜の位置と可動域を観察します。
- 背面の肩甲骨のやや下から、肋間を下方へ約1cm間隔で打診します。
- 対象者に、息を吐いた状態で息を止めてもらいます。
- 打診し、共鳴音が濁音に変わる位置にペンで印をつけます(≒呼気時の横隔膜の位置)。
- 対象者に、息を深く吸った状態で息を止めてもらいます。
- 印をつけた場所から下に向かって打診します。
- 共鳴音が濁音に変わる位置にサインペンで印をつけます(≒吸気時の横隔膜の位置) 。
- 両点の距離を定規で測定します。
- 測定値を横隔膜の可動域とします。
- 以上を両肺で行います。
[横隔膜の正常]
- 横隔膜は、通常の呼吸時には第10肋骨付近に位置し、左右差はない。ただし右側は肝臓があるため、やや高いことがある。
- 横隔膜可動域は、男性5~6cm 女性3~4cm 位である。
[横隔膜の異常]
- 横隔膜の位置が、正常よりも上昇している。(胸水貯留、無気肺の可能性がある)
- 横隔膜の位置が、正常よりも下降している。(肺気腫の可能性がある)
- 左右非対称、可動域が欠乏している。(横隔膜の麻痺の可能性がある)
次で最後になります。聴診です。
フィジカルアセスメント:聴診
- 1.可能であれば、対象者に大きめの口呼吸をしてもらいます。
- 上から下へ左右対称に、肩甲骨や肋骨などの骨を避けて聴診します。
- 1ヵ所につき、吸気と呼気の両方を聴きます。
- 前面では頸部気管(胸骨角上)も聴診します。
[聴診の正常]
- 肺野全体では、肺胞呼吸音が聴取されます。(吸気:呼気=約3:1の時間 低音)
- 気管分岐部付近では、気管支肺胞呼吸音が聴取されます。(吸気:呼気=約1:1の時間)
- 頸部の太い気管部位では、気管支音が聴取されます。(吸気:呼気=約2:3の時間 粗く高い音)
[聴診の異常]
- 肺野で気管支音や気管支肺胞呼吸音が聴取されます。(肺炎の可能性がある)
- 左右差、減弱・消失部位があります。(無気肺、胸水貯留、気胸の可能性がある)
- 呼気が延長しています。(気管支喘息の可能性がある)
- 副雑音が聴かれます。
おわりに
フィジカルアセスメントを用いて身体所見を取ることで、何が正常で、何が異常なのかということが判断できるようになります。
単に「息が苦しい」という訴えだけ聞いても、その人が実際、身体にどれだけの異常が生じているのか、どれだけ緊急なのかを判断することはできません。
むしろ、呼吸苦やSpo2の低値だけで安易に酸素吸入を開始したりすると、かえって意識低下やCO2貯留などを起こし、状態が悪くなることもあります。
十分な情報収集を怠ったまま、ケアを実践するのは、危険なのだということを理解しましょう。
ただし、フィジカルアセスメントは、ある程度の経験を積まなければ適切な判断を行うことはできません。
よく分からないままに「これは異常な呼吸音だ」「清音だ」と簡単に決断するのは危険です。
はじめは経験のある先輩と一緒にフィジカルアセスメントを行いましょう。経験を積み、正常と異常の判断する力を少しずつ磨いていくことが大事です。
また、自分のアセスメントに相当の自信があったとしても、必ずリーダー看護師と担当医への報告・連絡・相談は忘れずに行いましょう。
酸素吸入などのケアは、医師の指示に必ず従って実施してください。
最終的な判断(アセスメント)はチームで行う
これが医療の鉄則です!
フィジカルアセスメントの経験をチームとして磨き上げ、医療チームの底力を確かなものにしていきましょう!それが必ず急変の予防につながります!
(*´∀`)
おわり!
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