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~くりかん~

狭心症の看護計画の例(OP,TP,EP)【知識から看護問題・看護診断もばっちり】

こんにちは、栗鈴です。
今回の記事は、『狭心症の看護計画の例(OP,TP,EP)【これでばっちり】』です。よろしくお願いします。

 

 

はじめに

「胸がしめつけられる感じがする」という言葉がありますが、狭心症とはまさに実際に胸がしめつけられている状態です。心筋梗塞とともに「虚血性心疾患」と呼ばれており、心筋の酸素需要と、冠動脈の血流量のバランスが崩れて、心筋に障害を生じている状態です。狭心症は冠動脈の血流が不足している状態であり、命に関わる疾患です。循環器疾患の中では関わることの多い疾患になるので、しっかり学んでおきましょう!

 

狭心症の病態生理

狭心症は、動脈硬化による冠動脈の狭小化を原因とする労作性狭心症と、冠動脈の攣縮を原因とする異形狭心症に大別される。

  • 狭心症は、動脈硬化による冠動脈の狭小化(狭窄:きょうさく)によって血流量が常時低下しているために運動、興奮、排便、入浴などの労作により症状が誘発される労作性狭心症と、冠動脈の攣縮(れんしゅく;スパズム)によって一過性に血流が低下することにより生じる異型狭心症(血管攣縮性狭心症)の2種類に大別される。
  • 労作性狭心症は動脈硬化による冠動脈の狭小化が原因であり、要因は食生活(高コレステロール、過食)、肥満、ストレス、運動不足、喫煙などである。
  • 異形狭心症は、狭窄のない血管にも生じる。安静時、特に夜間から明け方にかけて発作が起こり、日本人は発症しやすいという特徴がある。
  • 長期間無症状であった後に新たな狭心症が出現した場合や、症状が安定していた狭心症の症状が増悪した場合を不安定狭心症という。不安定狭心症の原因として、冠動脈に生じた粥腫(じゅくしゅ;プラーク)の崩壊が関連することが指摘されており、不安定狭心症の約2~3割は心筋梗塞に移行する危険性が高いとされ、入院加療が必要となる。
  • 急性心筋梗塞、不安定狭心症、心臓突然死は、いずれも粥腫の破綻に関連した冠動脈内腔の閉塞を共通の基盤とし、これらの病態をまとめて急性冠症候群とよぶ。

狭心症の症状

  • 主症状は胸痛で、2~3分から5分以内に消失する。
  • 訴えは多彩であり、胸部圧迫感、胸がしめつけられる感じ、不快感、息切れなどと表現されることが多い。
  • 胸痛は左前胸部から左肩にかけて生じるが、腹部、歯、首、左上腕に痛みを生じることもある。

狭心症の診断・検査値

  • 症状から鑑別診断(区別するべき疾患)の対象となるのは、胆石症、胃炎、逆流性食道炎、肋間神経痛などである。
  • 狭心症の初期は右季肋部痛を生じることがあるため、胆石症と間違われることがある。また、上腹部痛を生じる時には、胃炎、胃潰瘍などの誤診となることもある。
  • 数秒間程度の痛みは、狭心症の症状ではなく、肋間神経痛や期外収縮などの不整脈が原因である可能性が高い。
  • 胸が終日重かったり痛かったりする場合は、胸膜や肋骨、筋肉の痛みであったり、精神・神経に関連する症状である可能性が高い。
  • 狭心症の診断には、症状の部位、持続時間、発症時間、誘因などを詳細に聴取することが手掛かりとなる。
  • 検査による診断では、心電図検査がもっとも一般的である。発作時に心電図でST部分が1㎜以上低下する場合は狭心症と診断可能である。ただし、異型狭心症ではST部分の上昇が認められることが特徴である。
  • 狭心症の発作時に心電図を記録することは、入院時以外には困難であるため、種々の検査を用いて診断を確定することが必要となる。
  • ホルター心電図は24時間の心電図を記録することが可能であり、胸痛発作時の心電図をとらえることができる。
  • エルゴメーター、トレッドミルなどの運動負荷試験も有用である。
  • MRIやCTで冠動脈を直接画像化することにより、狭窄病変の有無を診断することも可能である。
  • 種々の検査によっても診断が困難な場合や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行う場合には、冠動脈造影が行われる。

狭心症の治療法

治療の選択肢となるのは、大まかに

  1. 薬物療法
  2. カテーテルによる治療(PCI)
  3. 外科療法(冠動脈バイパス術)  である。

狭心症の治療薬

  • 薬物療法の際に用いられる薬剤は、主に硝酸薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬の3種である。

硝酸薬(ニトロペン、アイトロール等)

  • 硝酸薬は狭心症治療で最も多く用いられる薬剤である。
  • 狭心症発作(心筋虚血)は、心筋の酸素消費量が酸素供給量を上回った場合に発生する。
  • 硝酸薬の作用は、
  1. 冠動脈を拡張し、心筋の酸素供給量を増加させる作用
  2. 全身の静脈を拡張し、静脈還流量を減少させ、心筋の酸素消費量を減少させる作用
  3. 全身の動脈を拡張し、血圧を低下させ、心筋の酸素消費量を減少させる作用

があり、狭心症発作の治療に有効である。

カルシウム拮抗薬(アダラート等)

  • カルシウムは心筋や血管の収縮に関与している。カルシウムの働きを遮断することにより、血管を拡張させる。
  1. 冠動脈を拡張し、心筋の酸素供給量を増加させる作用
  2. 全身の動脈を拡張し、血圧を低下させ、心筋の酸素消費量を減少させる作用

があり、狭心症に有効である。

  • また、異型狭心症に対しても、冠動脈攣縮を予防する作用があり、有効である。

β遮断薬(メインテート、セロケン等)

  • 体内の主要臓器に存在するβ受容体を、カテコールアミンと競り合って阻害する。
  • 心臓でβ受容体が刺激されると、心拍数、心筋収縮力が増加し、心臓の酸素消費量が増加して、心筋虚血を誘発しやすくなる。β遮断薬は、β受容体を阻害することにより、心臓の酸素消費量を減少させる。
  • 労作時にも、心拍数の増加を抑制するため、狭心症発作が出現しにくくなる。
  • β遮断薬は労作性狭心症にの治療には有効であるが、異型狭心症では逆に発作が起こりやすくなることもある。
  • また、気管支喘息患者においては喘息発作を増悪させたり、心機能の低下した症例では心不全を悪化させることもあり、投与には注意を要する。

経皮的カテーテルインターベンション(PCI)

  • 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、大腿動脈や橈骨動脈などの血管から、カテーテルを挿入して、冠動脈の狭窄部位を治療する方法である。
  • 当初はバルーンを用いた冠動脈の拡張が行われていたが、冠動脈乖離、急性冠動脈閉塞、再狭窄などの課題があり、様々なデバイス(器具)が開発された。代表的なものは、ステント、ロータブレーター、DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)が挙げられる。
  • 2004年より、再狭窄の原因となる細胞増殖を抑制する免疫抑制剤や抗癌薬をステントの表面にコーティングした、薬剤溶出性ステント(DES)が使用可能となった。

冠動脈バイパス術

  • 虚血に陥った心筋への血流回復を目的として行われる手術である。
  • 上行大動脈起始部から主に大伏在静脈を用いる方法と、内胸動脈を用いて狭窄・閉塞した冠動脈の末梢側に血流の迂回路(バイパス)をつくり、心筋虚血の改善を図る方法がある。
  • 適応となるのは、左主幹部病変、多枝病変、慢性閉塞病変、PCIで再狭窄を繰り返す症例などである。
  • 体外循環や人工心肺を用いず小開胸で行うMIDCABと呼ばれる手術法も行われるようになった。さらに、心臓の拍動下で冠動脈バイパス術を行うoff-pump法も導入されている。これらの低侵襲手術により合併症を減らし、早期離床、早期退院に繋がることが期待されている。(医龍でもやってましたね!)

 

 

狭心症の看護問題・看護診断

#1 心筋虚血に伴う胸痛がある(認知‐知覚パターン:急性疼痛)

#2 狭心症症状のために日常生活に制限がある(活動‐運動パターン:活動耐性低下)

#3 夜間・早朝の胸痛発作のために十分な睡眠をとることができない(睡眠‐休息パターン:不眠)

#4 患者・家族が疾患に対する不安を抱えている(自己知覚‐自己概念パターン:不安)

#5 安静による運動不足のために便秘を起こしている(排泄パターン:便秘)

#6 薬の副作用によるめまいや血圧低下によって転倒のリスクがある(健康知覚‐健康管理パターン:転倒リスク状態)

#7 狭心症についての知識が不足している(認知‐知覚パターン:知識不足)

#8 適切な服薬ができないために薬の効果が減少している(健康知覚‐健康管理パターン:ノンコンプライアンス)

#9 狭心症を再発しないための生活習慣を獲得できない(健康知覚‐健康管理パターン:非効果的治療計画管理)

#10狭心症症状によって活動が制限されるために家事や仕事などの役割を遂行できない(役割‐関係パターン:非効果的役割遂行)

#1 心筋虚血に伴う胸痛がある

長期目標

胸痛の原因となる活動を明らかにし、軽減することが出来る

短期目標

胸痛の原因となる活動を避けることが出来る

胸痛が起こった時の対処方法を実行することが出来る

観察計画(OP)

  1. 症状の部位を確認する
  2. 疼痛の程度を観察する
  3. 症状が出現した状況を観察する

ケア計画(TP)

  1. 発作時は安静を促し、医師の指示に従って、硝酸薬の舌下投与を実施する

教育計画(EP)

  1. 発作時は速やかに医療者に伝えるよう指導する
  2. 発作の原因となる活動について話し合う
  3. 発作が起こったときは安静にして硝酸薬を舌下で溶かすように指導する

#2 狭心症症状のために日常生活に制限がある

長期目標

発作を起こすことなく日常生活を送ることが出来る

短期目標

発作の原因となる活動を避けながら、日常生活を送ることが出来る

観察計画(OP)

  1. 発作が起こる時の症状、活動状況を観察する

ケア計画(TP)

  1. 発作が起こったときは、安静を促して医師へ報告し、硝酸薬の使用を検討する

教育計画(EP)

  1. 寒暖差に注意し、衣類や暖房などで調整するよう指導する
  2. 必要時、活動の途中に休息をはさむよう指導する
  3. 胸痛が起こったときは、安静にして硝酸薬を使用するよう指導する

#3 夜間・早朝の胸痛発作のために十分な睡眠をとることができない

長期目標

睡眠に伴う障害を生じずに日常生活を行うことが出来る

短期目標

不眠の原因を取り除くことが出来る

観察計画(OP)

  1. 睡眠時間、熟眠感の有無を観察する

ケア計画(TP)

  1. 患者が安静に入眠できる環境を整える
  2. 睡眠薬の内服、および内服のタイミングと量を医師に相談する

教育計画(EP)

  1. 生活リズムを規則正しく整えるよう指導する

#4 患者・家族が疾患に対する不安を抱えている

長期目標

患者・家族の疾患に対する不安が軽減され、心身ともに安定した生活を送ることが出来る

短期目標

不安の軽減方法を検討することが出来る

観察計画(OP)

  1. 患者・家族の疾患に対する受け止め方を確認する
  2. 不安の原因を確認する

ケア計画(TP)

  1. 不安の表出がしやすい環境の調整に努める
  2. 不安の原因を除去することができるように十分に声掛けを行う

教育計画(EP)

病状や検査・治療についてわかりやすく説明をする

#5 安静による運動不足のために便秘を起こしている

長期目標

規則正しい排便があり、腹部不快感が消失する

短期目標

便の性状を観察することができる

腹部マッサージを行うことが出来る

観察計画(OP)

  1. 排便回数、便の性状を観察する
  2. 腹部不快感の有無・程度を観察する
  3. 腸蠕動音を観察する

ケア計画(TP)

  1. 適切な水分摂取計画(飲水制限などを遵守しながら)に沿って水分摂取を促す
  2. 必要に応じて腹部マッサージや温罨法を行う
  3. 2日以上排便がなければ、医師と相談のうえで下剤の調節や坐薬を検討する

教育計画(EP)

  1. 安静によって便秘になりやすいことを説明し、ケア計画について指導する

 

#6 薬の副作用によるめまいや血圧によって転倒のリスクがある

長期目標

転倒しないための予防行動をとることができる

短期目標

転倒のリスクを高める因子を明らかにできる

観察計画(OP)

  1. 内服薬の作用・副作用の程度の観察する
  2. 硝酸薬を使用した際の効果の程度を観察する
  3. 四肢の筋力の程度を観察する

ケア計画(TP)

  1. 四肢の筋力低下がある場合は、リハビリテーションを一緒に行う

教育計画(EP)

  1. 硝酸薬は血圧低下を生じやすいため、安全な環境で使用するよう指導する
  2. 転倒を生じやすいことを説明し、手すりなどを使って歩行するように促す

#7 狭心症についての知識が不足している

長期目標

狭心症の検査および治療について理解し、協力することが出来る

短期目標

治療や検査についてわからないことを明言できる

観察計画(OP)

  1. 治療や検査に対する患者の協力の様子を観察する

ケア計画(TP)

  1. 治療や検査の流れが予測しやすいように、定期的に説明・声かけを行う

教育計画(EP)

  1. 治療・検査について出来るだけわかりやすい表現を用いて説明する

#8 適切な服薬が出来ないために薬の効果が減少している

長期目標

適切な服薬行動によって最大の治療効果を得ることが出来る

短期目標

適切な服薬方法を述べることが出来る

観察計画(OP)

  1. 内服薬の服薬方法を確認する
  2. 適切に服薬できない要因を明らかにする

ケア計画(TP)

  1. 患者からの希望を確認し、服薬の量や時間を医師と相談できるように支援する

教育計画(EP)

  1. 薬の作用・副作用について説明し、正確に服薬するように指導する

#9 狭心症を再発しないための生活習慣を獲得できない

長期目標

再び狭心症にならないために生活を改善することができる

短期目標

生活の中でリスク因子となることを述べることが出来る

観察計画(OP)

  1. 日常生活におけるリスク因子(食生活、ストレス、喫煙、家族歴等)を確認する

ケア計画(TP)

  1. リスク因子の多い生活の改善方法について患者と話し合う
  2. 改善方法が実行可能であると思えるように支援する

教育計画(EP)

  1. リスク因子を減らす理由を説明する

#10 狭心症症状によって活動が制限されるために家事や仕事などの役割を遂行できない

長期目標

狭心症発作を起こさないための生活に適した役割遂行の方法を見つけることできる

短期目標

役割のなかで狭心症の発作の原因となることを話すことが出来る

観察計画(OP)

  1. これまでの役割(家事・仕事など)について確認する
  2. 発作の誘因について明らかにする

ケア計画(TP)

  1. これまでの役割遂行が可能か患者と話し合う
  2. 役割遂行のための改善方法について話し合う

教育計画(EP)

  1. 狭心症発作を再び起こさないための行動の必要性と理由について説明する

 

以上!いかがでしたでしょうか。

おわりに

狭心症は労作性狭心症と異型狭心症、そして不安定狭心症があります。不安定狭心症は、心筋梗塞に移行する危険性が高いため、速やかな治療が必要です。薬物療法やPCI、バイパス手術が適切に行われるためには、観察・ケア・指導がとても大事になってきます!患者さまが安心して退院し、退院後も健康的に過ごせるように関わっていきましょう!

参考文献

病期・病態・重症度から見た疾患別看護過程+病態関連図 154‐175P:編集 井上智子/佐藤千史 医学書院

 

 

www.aikoandsibajyun.info

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