みなさんこんにちは、栗鈴です。
今回は、『PICCカテーテル挿入の看護(物品・準備・介助・観察) 』です。
看護技術についての記事を書いていきたいと思います!
宜しくお願い致します。
はじめに
みなさんは、PICCってご存知ですか?
簡単に言うと、末梢から入れられるCV(中心静脈カテーテル)のことです。
中心静脈カテーテルの挿入に使用される血管は、主に
- 鎖骨下静脈
- 内頸静脈
- 外頸静脈
- 橈側皮静脈
- 尺側皮静脈
- 大腿静脈があります。
この中で、PICCは
4.橈側皮静脈、5.尺側皮静脈に挿入するカテーテルのことを指しています。
中心静脈カテーテルの挿入部位の第一選択は、1.鎖骨下動脈もしくは2.内頸静脈がよく選ばれます。
ですが、鎖骨下静脈は
固定がしやすく感染が比較的起こりにくい利点があるものの、挿入時に患者の恐怖心を高めやすいことと、気胸や肺塞栓症を起こしやすく、挿入後においても違和感が強く活動が制限されやすいという欠点があります。
次に大腿静脈ですが、
こちらは挿入がしやすいという利点があるものの、カテーテルが便などで汚染されるリスクがあり、歩行や更衣も難しくなるという大きな欠点があります。
そこで、PICCの出番です。
PICCの感染リスクは、鎖骨下静脈に挿入するのと同じ程度ですが、気胸、肺塞栓症を起こしにくく、挿入時の恐怖心が起こりにくく、活動も制限されにくいというメリットがあります。
つまり、
PICCは鎖骨下静脈や内頸静脈、大腿静脈から挿入するデメリットをほぼカバーできるわけです。
ただし、やはり欠点はゼロではありません。それは、鎖骨下静脈や大腿静脈に比べて血管が細いために挿入の難易度が高いことです。
また、前腕に挿入した場合は、肘の屈曲などによって点滴が落ちにくかったり、静脈炎のリスクが高まります。
患者様によっては、自己抜去のリスクも他の挿入部位より高いかもしれません。
ミギー(寄生獣:岩明均作 より)も手から侵入したせいで、脳の支配をすることにしくじってますね。鎖骨下静脈からいけば、うまくいったかもしれませんね。
あと、透析患者さんも適応外です。
シャントには刺せないし、非シャントの腕も血管を大事にしないといけませんから、PICCは無理です。残念^_^;
看護師は、中心静脈カテーテルの挿入部位におけるそれぞれのメリットとデメリットを
しっかり理解しておきましょう!( ・∀・)
中心静脈カテーテルに関連する感染や合併症は、管理が杜撰だとかなりの確率で発生してしまいます。責任を持ってカテーテル管理を行っていきましょうね!(≧∇≦)b
それではみなさんと一緒に、PICCの挿入について、手順を学んでいきたいと思います!
末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC) 手順
必要物品
- 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)キット
- 血管内留置用カテーテル
- ガイドワイヤー
- ダイレーター
- カテーテル固定具
- 穿刺針
- ドレープ
- 駆血帯
- 滅菌ガウン
- 滅菌手袋
- マスク
- キャップ
- 滅菌穴あきドレープ
- 透明フィルムドレッシング材
- 滅菌ガーゼ
- 縫合セット(持針器、縫合針)
- ナイロン糸
- シリンジ 10ml
- 注射針 18G、23G
- 消毒セット、消毒液 (0.5%クロルヘキシジンアルコールまたは10%ポビドンヨード)
- 局所麻酔薬
- ヘパリン加生理食塩水(へパリン生食)
- 使い捨て手袋
- ディスポーザブルシーツ
[必要時]
- 心電図モニター
- 経皮的動脈血酸素飽和度モニター
- 閉鎖式輸液セット
- 静脈ライン用コネクタ
- 固定用テープ
- 超音波検査機
- クリップ
手順
説明と同意
1.
医師より、末梢挿入型中心静脈カテーテル(peripherally inserted central catheter:PICC)挿入の必要性と実施内容、および合併症のリスクを患者または家族へ説明し、同意を得る(緊急時の状況下では処置後に説明を行う場合がある)。
- 看護師は同意書を確認し、必要ならば補足説明を行う。
- 侵襲が大きく、合併症出現のリスクの高い処置であるため、事前のインフォームドコンセントを十分に行う。
- 不安や痛みの増強により協力動作が得られないと安全に処置を行えない恐れがあるため、患者の不安を軽減し、理解・協力を得る。
2.
患者本人であることを確認する。
- 患者誤認防止のため、リストバンドでフルネームを確認する。可能であれば患者に氏名を名乗ってもらう。
準備・介助
3.
可能な場合、シャワー浴を行う。
- 皮脂などの有機物が残存していると消毒効果が減少する。
4.
患者に、排泄の有無を確認する。
- 処置の中断を避けるため、事前に排泄を済ませてもらう。
5.
十分なスペースのある病室や処置室で行い、ドアやカーテンを閉め、羞恥心に配慮する。
- 清潔野が汚染されないよう、十分なスペースを確保する。
6.
医師は挿入肢と穿刺部位を選択する。
- 看護師は必要ならば、超音波の準備を行い、介助する。
- また、患者の既往歴や禁忌事項を確認する。
- 血管走行および深度を把握することで、安全でスムーズな挿入を行うことができる。
- 可能であれば患者の利き手でない側を選択し、患者の生活の妨げとならないようにする。
7.
手指消毒後、使い捨て手袋を装着する。
- 微生物の伝播を予防する。
8.
室温を調節し、穿刺部位を露出する。タオルケットやバスタオルを使用し、不必要な露出を避ける。
- 患者のプライバシーを保護するとともに、保温に努める。
9.
穿刺部位の周囲にディスポーザブルシーツを敷く。
- 血液や消毒液による汚染を防止する。
10.
挿入部周囲の皮膚状態を観察し、必要な場合にのみ挿入部周囲の除毛を行う。
- 体毛によるドレッシングの剥がれを予防する。
- 除毛による皮膚損傷は感染症のリスクを増大させるため、必要な場合のみ行う。
- 実施するときは皮膚を損傷しないよう電気クリッパーや除毛クリームを使用して、直前に行うことが推奨されている。
11.
挿入肢の清拭を行う。
- 皮脂などの有機物が残存していると消毒効果が減少する。
12.
使い捨て手袋を外し、手指消毒を行う。
- 微生物の伝播を予防する。
13.
挿入前に呼吸音、呼吸回数、胸郭運動、経皮的動脈血酸素飽和度、血圧、脈拍、心電図、意識状態を確認し、必要ならばモニタリングを行う。また、血液凝固能に問題がないか、採血データをチェックする。
- 穿刺・挿入に伴い循環・呼吸状態に影響を及ぼすリスクがあるため、事前のアセスメントとモニタリングにより異常の早期発見に努める。
14.
予定穿刺部位から肩までの長さと、肩から胸骨正中線までの長さをメジャーで計測し、長さを決める。
- 挿入するカテーテルの長さの目安をつける。
15.
医師の指示に従い、患者の体位を整え、カテーテル挿入時の四肢固定の補助を行う。
- 挿入を容易にするほか、挿入時の血管壁損傷の防止に役立つ。
- 血管走行や体格によって穿刺しやすい体位はさまざまであるため、医師と相談しながら、患者の安楽にも配慮しつつ、適切な体位を整える。
- 患者の不穏状態が挿入の妨げになるようであれば処方に応じて鎮静剤を投与する。
16.
駆血帯を挿入予定部位よりも中枢側に配置する。
- 清潔野の汚染を回避するよう、穿刺部位から離れた位置に配置する。
17.
手指消毒後、使い捨て手袋、マスク、キャップを装着する。
- 微生物の伝播を予防する。
18.
必要物品を医師が手に取りやすいように準備する。無菌で使用する物品は、ワゴンの上に清潔野を作り、その上に用意する。
- 清潔野が汚染されないよう注意する。
- 挿入キットを使用する場合は、医師が滅菌手袋を装着した後に外装を開封し、開封後の内容物の準備は医師が無菌操作で行う。
19.
挿入直前にも、患者本人であることと挿入予定部位を確認する。腕に滅菌穴あきドレープが掛かること、挿入中は体を動かさないことを説明する。必要ならば、超音波検査の介助を行う。
- 患者誤認防止のため、リストバンドでフルネームを確認する。
- 可能であれば患者に氏名を名乗ってもらう。JCI(国際医療機能評価機構)ならびにWHOは患者認証における患者参加を推奨している。
- 事前に説明し患者の理解・協力を得ることで急な体動による事故を予防する。
- 痛みが強い場合や異常を感じたときは、急に動いたりせずに声に出して知らせるようにあらかじめ伝える。
- 発語が困難な場合はナースコールを利用する。
- 超音波検査器により、視覚的に確認することで、カテーテル挿入の施行回数と挿入による合併症を減らすことができる 。
20.
患者に穿刺部位と反対側を向いてもらう。
- 患者の気道に由来する微生物による滅菌野の汚染を予防する。
21.
医師は滅菌手袋、ガウン、マスク、キャップを装着する。
- マキシマルバリアプリコーション(高度無菌遮断予防策)の実施により、カテーテル関連血流感染率が低下する。
22.
医師はポビドンヨード液で3回程度消毒することが推奨されている。ポビドンヨードにアレルギーがある場合は、消毒薬を変更する。消毒後は2分以上乾燥させる。
- CDC(米国疾病管理予防センター)ガイドラインでは>0.5%クロルヘキシジンアルコール製剤の使用を推奨しており、禁忌がある場合、ヨードチンキ、ヨードフォア、70%アルコールのいずれかを代替消毒薬として使用可能としている 。
- 日本では0.5%クロルヘキシジンアルコールまたは10%ポビドンヨードが推奨されている。
- 消毒液を完全に空気乾燥させる 3)。
23.
必要ならば、カテーテル穿刺処置を介助する。医師は以下の手順に沿ってカテーテルを挿入する。
- 患者の不安を軽減させるため、声をかけながら行う。
- 処置中は患者の観察を強化し、状態変化時にはすぐ医師に知らせる。
- カテーテル挿入の刺激による不整脈出現や、誤挿入による呼吸困難、血圧低下などが起こる可能性があるため、注意して全身状態を観察する必要がある。
- ヘパリンにアレルギーのある患者の場合は生理食塩水を用いる。
- 選択したPICCキットの使用方法に従って挿入処置を実施する。
a.
駆血帯を穿刺部位よりも15cm程度中枢側に巻き、駆血する( 看護師が駆血を介助する場合、鉗子を用いるか滅菌ドレープの下から清潔野を汚染しないように駆血する)。
- 十分な術野を確保する。
b.
看護師から滅菌穴あきドレープを無菌操作で受け取り、患者にかける。
c.
必要時、静脈穿刺部位の隣接部分に局所麻酔薬(経皮鎮痛剤クリームまたは1%リドカインなど)を使用する 。
d.
患者の顔を挿入側に向け顎を引いてもらう。
- 内頸動脈への誤挿入を防ぐ。
e.
選択した種類のカテーテルの穿刺方法を守り、カテーテルの挿入を実施する。看護師は必要時に無菌操作で物品を医師へ渡す。
f.
カテーテルを挿入したら無菌的に駆血帯を外す。(医師が行う場合はあらかじめ配置した滅菌ガーゼを用いる。看護師が行う場合は鉗子を用いるか、滅菌ドレープの下から清潔野を汚染しないように行う。)
24.
看護師は患者の呼吸や循環動態を観察し、患者に声かけをしながら、痛みの有無や意識状態を観察する。
- 穿刺の痛みや不安の増強によって体動が生じる場合がある。
- 動脈穿刺、空気塞栓、誤挿入などの異常を早期に発見する。
カテーテル固定
25.
挿入後のカテーテル固定を介助する。
- カテーテルの抜去を予防する。
- 患者の顔を再度、挿入部と反対側に向ける。
- 患者の気道に由来する微生物による滅菌野の汚染を予防する。
*カテーテルキット内の固定板を使用して固定する方法(無縫合式固定器具)と、カテーテルと皮膚を2~3ヶ所縫合する方法がある。
- カテーテルを直接縫合する場合は、縫合糸がカテーテルを締め付けて閉塞するリスクがあるため、注意を要する。通常は固定板の使用が推奨される。
- 医師は滅菌穴あきドレープを外し、再度穿刺部位をポビドンヨード液で消毒し、2分以上乾燥させる。
- ポビドンヨードが作用するためには皮膚との接触時間が少なくとも2分程度必要である 。
-
透明フィルムドレッシング材を空気が入らないように密着させて挿入部に貼付する。
-
止血できていないときは、滅菌ガーゼで圧迫固定を行う。
-
ドレッシング材を貼付した日付と時間をドレッシング材の外側に記入する 。
-
カテーテル挿入部位を被覆するため、滅菌ガーゼもしくは滅菌・透明・半透過性のドレッシング材を使用する。
-
患者に発汗、出血・浸出がある場合はガーゼによるドレッシングが望ましい 。
- ガーゼドレッシングを透明ドレッシングで覆うと、湿度が高くなり細菌が増殖しやすい環境となるため避ける。
- ドレッシング材は端を持ち、内側が不潔にならないよう注意する。
- ルートにループを作ることで、張力がかかった場合に挿入部への直接の影響が減少し事故抜去のリスクを減少できる可能性がある。
挿入後の観察・対応
26.
看護師は挿入部の観察を行い、バイタルサインを測定する。
- 挿入直後の出血、疼痛、腫脹、違和感の度合いなどの観察は、その後の異常の早期発見に有用である。
27.
患者に終了したことを告げ、余分な消毒液を落とし、寝衣を整える。
- 自己抜去のリスクが高い場合は、患者に説明を行うだけでなく、確実な固定と抜去予防策を行うまで患者から目を離さないようにする。
28.
使用した物品を適切な方法で片付け、手袋を外し、手指洗浄を行う。
- 微生物の伝播を予防する。
29.
胸部X線写真を撮影する。
- カテーテルが誤った位置に挿入された状態で輸液を開始した場合、患者の生命に関わる事故につながる危険性がある。
- PICC挿入が透視下で行われない場合は、胸部X線でカテーテル先端の留置場所を確認する必要がある。
30.
胸部X線検査で問題がなければ、医師の指示に基づき輸液を開始する。輸液ルートが引っ張られないように、クリップなどで寝衣に固定する。
- 複数の内腔を持つ(ダブルルーメン、トリプルルーメン)場合はどのラインに接続するか指示を確認する。
- 必要ならば、事故を防ぐためルートにラベルをつける。
- 輸液ポンプを使用する場合も必ず自然滴下を確認する。
31.
処置の内容と結果、カテーテルの太さと挿入の長さ、何針で固定されたのかを医師へ確認し、カルテに記録する。
- 抜去のリスクを減らすために、挿入の長さや固定方法を記録し、随時観察する必要がある。
32.
カテーテル挿入中は、定期的にルートの屈曲・ねじれ・破損・接続の緩みや外れがないか、ルート内に空気の混入がないかを確認する。
- 見落としのないようルートを手でたどりながら確認する。
33.
ドレッシング材の交換はガーゼドレッシングの場合、2日毎、透明ドレッシングの場合、少なくとも7日毎に行う。ただし、ドレッシングが明らかに剥がれているときや汚染されているときは、ただちに交換する 。
- [閉鎖環境が維持できないと、感染のリスクが高まる。
おわりに
以上になります!
いかがでしたでしょうか?
とにかく中心静脈カテーテルで大事なのは、挿入後の清潔管理です。きちんとドレッシング材を交換したり、必要時に消毒ができていないと、たちまちにカテーテルを経路として感染が起こってしまいます。
看護チームが一体となって感染予防ができるように、協力して行動できるように取り組んでいきましょう!
おわり
ご意見をお待ちしています。