こんちには、栗鈴です。
今回の記事は、『出血傾向の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』になります。
よろしくお願いします!
- はじめに
- 出血傾向の病態生理
- 出血傾向の患者の訴え方
- 出血傾向の原因または考えられる疾患
- 出血傾向の随伴症状と、考えられる疾患
- 出血傾向の診断
- 出血傾向の治療法
- 出血傾向の主な治療薬
- 出血傾向の看護問題の例
- #1 皮膚、粘膜、筋肉、関節、臓器から出血する危険がある
- #2 出血傾向を改善するための自己管理ができない
- おわりに
- 参考文献
はじめに
人がケガなどをして出血をした時、時間がある程度経ったり、出血した部分をおさえたりしていると、自然に出血が止まりますよね!これは、血液が乾燥して勝手に固まっている…という事だけではありません。
その時、血液を輸送している血管では、緻密で複雑なシステムが働いて、様々な要素が連携プレーで働いて、止血が行われているのです。
しかし、一部の疾患や、疾患に対する治療の内容によっては、その止血のシステムに異常が起きて、血が止まらなくなる、という事があります。大量出血は命を脅かすことに直結します!出血傾向の患者さまへの看護について、しっかり学んでおきましょう!

出血傾向の病態生理
- 局所的な原因なしに、または普通なら出血しない程度の外傷で全身的に出血しやすい状態、または出血が止まりにくい状態を出血傾向という。
- 止血機構は、血管損傷時に血小板、凝固因子(プロトロンビン→トロンビン→フィブリノゲン→フィブリン)、血管壁が中心となって、滑らかに血管内を流れる循環血を失わないように血管壁に止血血栓を作る生体防御機構である。血管壁の損傷部位だけに蓋をして、適度なところで線溶因子(プラスミノゲン→プラスミン)がフィブリンを溶解して血栓形成の進行を止め、血管修復を促す。
- 病的な血栓形成は血管閉塞を招き、血栓症として血流がめぐるべき組織の死をもたらし、一方で止血機構を担う因子の欠損は出血をもたらす。
- 出血傾向は、血管壁、血小板、凝固因子、線溶因子のいずれか、または複合的な異常によって引き起こされる。
出血傾向の患者の訴え方
- 患者の訴えは、出血そのものを見ることや、出血部位の痛みや、腫脹である。
- 出血は、患者自ら血液を直接目にすることも多いが、関節内出血や筋肉内出血では、出血部位の痛みや腫脹を主訴とすることもある。
- 出血傾向があると、皮下や粘膜下、関節腔、組織内に出血が起こりやすく、また消化管など粘膜から外へ出血しやすい。
- 皮下または皮内の出血班紫斑、紫斑の中で帽針頭大(直径約2mm)までのものを点状出血と称し、多発することが多い。
- 大きい紫斑には斑状出血の名がある。
- 粘膜出血、歯肉出血の形で見られることも多い。
- 粘膜出血は脳出血など重篤な出血の前兆ともなる。脳出血では片麻痺、意識障害、言語障害など脳卒中の症状を呈するが、診断には CT などの 画像診断が必要となる。
出血傾向の原因または考えられる疾患
1.血管壁の異常
先天性の血管壁の異常
血管内皮下障害
- エーラス・ダンロス症候群
- マルファン症候群
血管内皮障害
- 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)
後天性の血管壁の異常
血管内皮下障害
- 単純性紫斑
- 老人性紫斑
- 壊血病(ビタミンC欠乏)
- ステロイド紫斑
- アミロイドーシス
血管内皮障害
- アレルギー性紫斑病(シェーンライン‐へノッホ紫斑病)
- 自己赤血球感作症
2.血小板の異常
血小板の減少
- 特発性(または免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)を含めた自己免疫性・薬物による血小板減少症
- 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
- 溶血性尿毒症症候群(HUS)
- 再生不良性貧血
- 急性白血病
- 骨髄異形性症候群
- 先天性血小板減少症
血小板の機能の異常
内因性(先天性)の血小板機能の異常
- 血小板無力症
- ベルナール・スーリエ症候群
外因性(後天性)の血小板機能の異常
- フォン・ヴィレブランド病(VWD)
- 尿毒症
- Mタンパク血症
- 薬剤性(非ステロイド性抗炎症薬など)
3.血液凝固の異常
- 血友病
- 循環凝固血素(凝固因子インヒビター)による後天性血友病
- 抗凝固薬投与
- ビタミンK欠乏症
4.線溶(線維素溶解)の異常
- 血栓溶解薬投与も含めたプラスミノゲンアクチベーターの増加
- プラスミノゲンアクチベーターインヒビター欠損
- プラスミンインヒビター欠損
5.複合異常
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 肝疾患
出血傾向の随伴症状と、考えられる疾患
- 発熱:急性白血病、再生不良性貧血、骨髄異形性症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
- 貧血:急性白血病、再生不良性貧血、骨髄異形性症候群、TTP、溶血性尿毒症症候群(HUS)、出血を伴う自己免疫性・薬物性血小板減少症
- 腫瘤:DICまたは骨髄浸潤を伴う悪性腫瘍、血管腫
- リンパ節腫脹:DICまたは骨髄浸潤を伴う悪性リンパ腫、膠原病、急性白血病
- 肝脾腫:肝・造血器腫瘍、肝硬変
- 関節腫脹:血友病などの凝固因子欠損症、膠原病、アレルギー性紫斑病
- 腹痛:アレルギー性紫斑病
- 筋肉痛:血友病などの凝固因子欠損症
- 関節の過伸展、可動域の拡大:エーラス・ダンロス症候群
- 長い四肢、クモ状指、水晶体脱臼:マルファン症候群
出血傾向の診断
- 出血傾向は血管壁、血小板、凝固、線溶因子の異常によって引き起こされる。
- 過去に出血傾向の既往があれば、出血の誘因や状況、過去の抜歯・手術時の止血の具合、家族歴、随伴症状(発熱、関節痛、腹痛など)、服薬歴などについて問診する。家族歴があれば先天性の疑いが強くなる。
- 体表から見えない出血症状の広がりを見る時のCTなどの画像診断、消化管出血が疑われる際の内視鏡検査も速やかに行う。造血器疾患が疑われる場合は骨髄穿刺も行う。
- 血小板数の低下を認める場合は血小板減少症を疑う。
- 血小板数が正常である場合は、出血時間を確認する。
- 出血時間の延長を認める場合は、血小板機能異常症、フォン・ヴィレブランド病(VWD)を疑う。
- 出血時間が正常である場合は、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を確認する。
- PT、APTTともに延長を認める場合は凝固異常(フィブリノゲン活性低下)を疑う。
- PTの延長、APTTの正常を認める場合は外因性凝固異常を疑う。
- PTの正常、APTTの延長を認める場合は内因性凝固異常を疑う。
- PT、APTTともに正常を認める場合は、線溶・血管系の異常、第XIII因子欠損を疑う。
- 血小板数の増加を認める場合は、骨髄像で巨核球の増加があるかを確認する。巨核球の増加を認める場合は、本態性血小板血症などの骨髄増殖性疾患を疑う。
出血傾向の治療法
- 出血傾向の原因を確定し、それぞれに応じた治療を行う。
- 特発性(または免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)の慢性型では、出血症状が認められる患者または血小板数2万/μL以下の患者が治療の対象となる。副腎皮質ステロイドによる免疫抑制療法が第1選択となる。ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性の場合は除菌療法も第一選択となり得る。難治性ITPに対して血小板産生を刺激する経口薬も発売された。
- 急性白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、肝硬変症、脾機能亢進症などの原病があって起こる続発性血小板減少では、出血症状が見られる時のみ必要最小限、1日1回10単位程度の血小板輸血を行う。化学療法時などに予防的投与を行う場合も血小板数1万μL以上を保つよう必要最小限とする。血小板機能異常による出血傾向で血小板輸血が必要となることは後天性では稀であるが、先天性の場合は消化管出血、観血的処置前などで時に行われる。
- 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)や溶血性尿毒症候群(HUS)の際は、出血よりも血栓症状が主体となるが、血小板輸血は血栓を誘発するため、原則的に禁忌である。TPPは自己免疫疾患の一種であることがわかり、血漿交換と副腎皮質ステロイド免疫抑制療法が第1選択となる。ITP では血小板輸血を行ってもすぐ血小板が破壊されるため、止血効果はあるものの、血小板数を増やすための血小板輸血を考えてはならない。命に関わるような脳出血や消化管出血の際に救命的に止血を試みる際にのみ、血小板と抗血小板抗体の複合体がマクロファージにより貪食されるのをブロックする大量γ(ガンマ)グロブリン療法との併用も考える。
- DIC合併時の出血症状には、抗凝固療法との併用のもとに、適宜血小板輸血や凍結血漿輸注を行う。
- 凝固因子欠損症の出血傾向では、凝固因子製剤や凍結血漿による補充療法が基本である。
- 凝固因子(第Ⅷ因子が大部分)インヒビター例では、バイパス製剤補充療法や免疫抑制療法が行われる。
- DICは原疾患の治療が第一であるが、低分子ヘパリンや合成プロテアーゼ阻害薬などの抗凝固療法も行われる。血小板や凍結血漿の補給も適宜行われる。
- 抗線溶薬トラネキサム酸の投与は線溶制御因子の先天性欠損症例の出血傾向に有効であるが、ITPや血友病などの出血にも補助的に用いられる。
出血傾向の主な治療薬
- ITP 慢性型の副腎皮質ステロイド免疫抑制療法:プレドニン錠(副腎皮質ホルモン製剤)
- ITP慢性型のヘリコバクターピロリ菌除菌療法:ランサップ(抗ピロリ菌製剤)、ビオフェルミンR(抗菌薬に耐性の乳酸菌製剤)
- 血友病:アドベイト注 (遺伝子組み換え第Ⅷ因子製剤)
- 上記と同様例で 第Ⅷ因子インヒビター 合併があるとき:ノボセブン(バイパス製剤の遺伝子組み換え活性型第Ⅶ因子製剤)
- 救急外傷(敗血症に合併したDIC症例):フラグミン注(抗凝固薬の低分子ヘパリン)※頭蓋内や消化管出血時は避ける。
- 急性白血病に合併したDIC症例: エフオーイー 注(抗凝固・抗線溶薬)※静脈炎予防のため中心静脈より投与する。
- 血友病患者の抜歯時、消化管出血時などに凝固因子製剤(アドベイト注など)と併用 :トランサミン錠(抗線溶薬)
出血傾向の看護問題の例
#1 皮膚、粘膜、筋肉、関節、臓器から出血する危険がある
#2 出血傾向を改善するための自己管理ができない
#1 皮膚、粘膜、筋肉、関節、臓器から出血する危険がある
看護診断
身体損傷リスク状態
リスク因子
血液体液成分の異常(血小板減少、 凝固因子の変調)
栄養不良
物理的因子
長期目標
出血の誘引を回避し、出血を起こさない
短期目標
出血しやすい状態であることを述べる
出血の誘因を述べる
出血傾向による症状を述べる
出血を予防する行動をとれる
出血時に適切に対処できる
観察計画(OP)
- 出血傾向の症状の有無と程度
- 皮膚の出血班、輸液ライン刺入部からの出血
- 鼻出血、歯肉出血
- 便の性状、吐血・下血
- 尿の性状、血尿
- 通常よりも多い月経血、不正性器出血
- 血痰、喀血
- 眼球結膜出血、眼底出血
- 出血に伴う症状の有無と程度
- 頭痛
- 意識障害
- 嘔吐
- 痙攣
- 麻痺
- 視力低下
- 胸痛
- 呼吸困難
- 食欲不振
- 排尿時痛
- 腹痛
- 腰背部痛
- 関節の腫脹
- 関節可動域制限
- しびれ
- 筋肉痛 など
- 抜歯や手術後の止血困難の有無
- 血液検査結果
- 出血傾向があることへの認識
- 出血の予防方法の理解とその実施状況
- 出血時の対処方法の理解とその実施状況
ケア計画(TP)
- 打撲や圧迫を回避する
- 長時間の同一体位を避ける
- 寝衣・寝具のシワや衣服の緊縛を避ける
- ベッド周囲やベッド上を整理整頓する
- スポンジなどを用いてベッド柵を保護する
- 滑りにくい履物で転倒を予防する
- 駆血帯やマンシェットによる圧迫を最小限にする
- 摩擦を回避する
- 柔らかいタオルを使用する
- 排便後の処置は温水洗浄便座を使用し、トイレットペーパーによる摩擦を避ける
- 口腔内への刺激を最小限にする
- 柔らかい歯ブラシを使用する
- 出血傾向が強い場合は液体歯磨き剤でうがいする
- 注射・採血時の出血を予防する
- 可能な範囲で細い注射針を使用する
- 筋肉注射、皮下注射を最小限にする
- 注射・採血後の止血を確実に行う
- 静脈穿刺後は5分以上、動脈穿刺後は10分以上圧迫する
- 圧迫による内出血に注意する
- 排便時の努責を避けるために便通を調整する。必要であれば下剤を投与する。
- 激しい咳を避ける
- 必要であれば 鎮咳薬を投与する
- 室内の温度・湿度を調整する
- 出血傾向の程度に応じて行動範囲を制限す
- 指示された薬剤を正確に投与する
- 指示された輸血を正確に行う
- 脾臓摘出手術が行われる場合は、周手術期管理を行う
- ベッドサイドにボスミン(アドレナリン)綿球を準備しておく
- 出血時は迅速に対象 ケアを行う
- 圧迫が可能な部位であれば 清潔なガーゼやタンポンで圧迫する
- 出血部位を心臓より高くして出血部位の血流を少なくする
- 出血時は感染予防に努める
- 口腔・上気道の清潔を保つ
- 血尿、下血、不正出血がみられる場合は、陰部を清潔にする
- 出血に対する不安を軽減する
教育計画(EP)
- 出血が起こりやすい状態であることを説明する
- 出血傾向に伴う症状を説明し、それらが見られた場合はすぐに報告するよう指導する
- 出血の原因となる刺激を説明し、それを最小限にする方法を説明する
- 出血時の対処方法を説明する
- 出血時の感染予防の必要性と方法を説明する
#2 出血傾向を改善するための自己管理ができない
看護診断
非効果的自己健康管理
診断指標
治療計画を毎日の生活に組み込むことができない
指示された治療方法を実施するのが難しいと言葉に出す
長期目標
出血傾向の原因・病態を理解し、出血傾向を改善するための自己管理を行うことができる
短期目標
出血傾向の原因と病態を述べることができる
指示された薬剤を確実に服用できる
出血傾向の改善に必要な食品を理解し、それらを摂取できる
観察計画(OP)
- 出血傾向の原疾患についての患者・家族の知識、認識
- 治療や服薬に関する患者・家族の認識、考え
- 入院前の食事内容
- キーパーソン、協力者
ケア計画(TP)
- 食事内容を振り返ってもらい、出血傾向を改善するための食事を一緒に考える(ビタミン B12、葉酸、ビタミンK、カルシウムを多く含む食品を具体的に示し、患者の食事に取り入れられるように工夫する)
- 患者の自己管理能力を判断し、必要であれば 、家族の協力を求める
教育計画(EP)
- 原疾患と出血傾向の関係を説明する
- 薬の作用と副作用を説明し、患者自身で服薬管理ができるよう支援する
- 出血傾向の原因によっては食事療法が必要であることを説明し、摂取することが望ましい食品を紹介する
- 定期受診の必要性を説明する
以上なります!
おわりに
急性期では、出血傾向による症状が強い場合は、大量出血によるショックや頭蓋内出血、喀血による気道閉塞など、重篤な症状を合併する可能性があります!また、DIC(播種性血管内凝固症候群)を起こすと致命的な状況となります…。全身状態の把握と、緊急対応の準備・早期対応が重要です!
回復期では、患者さま自身が出血傾向による症状を自覚し、出血の予防や出血時の対処方法を理解して実施できるように指導することが大切です!出血傾向の原因に応じて、出血傾向を改善するための薬物療法、食事療法についても指導をしていきましょう!
参考文献
緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図 272‐286P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院
ブログを見て下さり、ありがとうございました!そこで、皆様へお願いがございます!
『栗看』は、はてなブログのランキングに参加しております!
記事を増やすための原動力になるので、
クリックよろしくお願い致します!!
お手数をおかけします…
↓