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~くりかん~

貧血の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】

こんにちは、栗鈴です。

今回の記事は、『貧血の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』です。

よろしくお願いします。

 

はじめに

『なんだか体がだるい。もしかしたら、貧血かも…』と感じたことはありますか?

感じたことがある方は、おそらく大多数が「女性」の方だと思います。

 

ほとんどの貧血は、「赤血球の血管外での喪失」で起こっています。

つまり「出血」が原因です。

 

女性であれば「月経」で定期的な出血が起こるため、そこで貧血を起こしている方が多いということですね。

 

もちろん、出血だけが貧血の原因とは限りません。

衰弱していたり、特定の疾患を持っている患者様では、出血以外で貧血を起こしている方も多くみられます。

 

また、重度の貧血では「輸血」が必要になることもあります。

貧血の原因、治療、ケアについて、しっかりと勉強しておきましょう!

 

それでは、やっていきます。

貧血は全身の症状なので、あらゆる症状が起こり得ます。思ったより怖いかも…!?

 

貧血の病態生理

貧血とは、様々な原因により、末梢血液中の赤血球(RBC)数、へモグロビン(血色素)量、ヘマトクリット(Ht)値が減少することを指す。診断はヘモグロビン量が減少していることで行われ、起立性低血圧(いわゆる脳貧血)とは異なる病態である。

  • ヘモグロビンの役割は肺から取り込んだ酸素を各臓器へ運ぶことであり、ヘモグロビンの減少により各臓器の酸素が不足して貧血の症状が現れる。
  • ヘモグロビンの基準値は年齢・性別で異なるが、男性では14g/dl、女性では13g/dlが1つの目安となる。高齢者では11g/dl程度が目安となる。

赤血球が失われる原因は、大きく分けて2つある。

  1. 出血により赤血球(ヘモグロビン)が血管外に失われる
  2. 赤血球の寿命による損失のほか、溶血などのさまざまな原因で血管内で失われる

貧血の症状・訴え方

  • 貧血の症状は血液中のヘモグロビンの減少により各臓器の酸素が不足することで引き起こされる。大きく2つに分けられる。

1、臓器の酸素不足による症状

  • 全身症状:倦怠感、易疲労感
  • 中枢神経症状:頭痛、めまい、耳鳴り
  • 心臓の症状:狭心痛(心窩部痛)
  • 消化器の症状:食欲不振、下痢、便秘

2、酸素不足を補うための生体の代償作用による症状

  • 動悸、頻脈、収縮期心雑音(代償作用により、心拍数を上げ、1回拍出量を増大させる働きが起こることで症状が出現する)
  • 労作時呼吸苦、頻呼吸(肺からより多くの酸素を取り込もうとする働きが起こることで症状が出現する)

 

貧血の診断

  • 貧血の原因を調べるには、まず平均赤血球容積(MCV:赤血球の大きさ)と、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC:赤血球中のヘモグロビンの量)を計算する。
  • MCVとMCHCがともに低値のとき、小球性低色素性貧血という。
  • MCVとMCHCがともに正常のとき、正球性正色素性貧血という。
  • MCVが高値のとき、大球性貧血という。
  • 腎障害があるとエリスロポエチンという造血に関わるホルモンな産生が低下し、赤血球の産生低下が起こる(腎性貧血)。

鉄欠乏性貧血

  • 貧血の原因として最も多くみられる疾患である。
  • 末梢血液検査(血算):小球性低色素性貧血
  • 血液生化学検査:血清鉄(Fe)の低値、総鉄結合能(TIBC)の高値、血清フェリチンの低値(体内の貯蔵鉄の減少)
  • 原因:骨髄の造血機能は正常だが、ヘモグロビンの材料である鉄の不足で貧血が起こる。主な原因疾患は、成長期における体内の鉄の需要の増加、月経による出血、婦人科疾患(子宮筋腫、子宮癌など)、消化器疾患(胃潰瘍、胃癌、大腸癌など)、慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)である。

溶血性貧血

  • 末梢血液検査(血算):正球性正色素性貧血、網状赤血球の増加(赤血球の造血の亢進による)
  • 血液生化学検査:乳酸脱水素酵素(LDH)の高値、間接ビリルビンの高値、ハプトグロビン(Hp)の低値
  • 原因:先天性疾患(遺伝性球状赤血球症、サラセミアなど)、後天性疾患(自己免疫性溶血性貧血、溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症など)
  • 多くは自己免疫性溶血性貧血であり、血管外溶血(脾臓などでの溶血)がみられる。クームス試験が陽性となる。
  • 発熱、倦怠感などの先行する感冒症状に注意する。

再生不良性貧血

  • 末梢血液検査(血算):正球性正色素性貧血、骨髄での造血細胞の減少により白血球減少、血小板減少がみられる(汎血球減少)
  • 血液生化学検査:血清鉄の高値、総鉄結合能の低値、血清フェリチン高値
  • 原因:不明であることが多い(特発性)。薬剤性、放射線、ウイルス感染(肝炎後など)の原因で特定される場合がある。
  • 部位により骨髄細胞密度にばらつきがある可能性があり、骨のMRI(特に椎骨)も実施される。

巨赤芽球性貧血

  • 末梢血液検査(血算):大球性貧血、汎血球減少がみられることも多い。
  • 血液生化学検査:LDHの高値、間接ビリルビンの高値、血清ビタミンB12、葉酸の低値により診断される。
  • 原因:胃切除によりビタミンB12吸収に必要な内因子の欠乏を起こす。胃癌が原因となりうるので注意が必要である。抗胃壁細胞抗体、抗内因子抗体などの自己免疫が原因となる場合がある。
  • ビタミンB12欠乏が原因で、胃粘膜萎縮と自己免疫が関与しているものを特に悪性貧血と呼ぶ。悪性貧血では深部知覚低下、反射低下、筋力低下などの神経症状を伴うことがあり、貧血が改善した後も症状が残る。
  • 舌、消化管粘膜の細胞増殖の異常により、ハンター舌炎(舌乳頭萎縮)や消化器症状がみられる。

 

貧血の治療・対症療法

鉄欠乏性貧血の治療

  • 鉄の補充を行うとともに、原因の検索を実施する。
  • 悪性腫瘍の可能性に注意する。
  • 鉄剤投与開始後2週間で貧血の改善が始まるが、血清フェリチン低値で体内の貯蔵鉄はほとんど失われた状態であるため、貧血が改善した時点で鉄剤投与を中断すると短期間で再発する。鉄剤は少なくとも3-4か月以上は連続して服用する必要がある。

溶血性貧血の治療

  • 自己免疫性溶血性貧血では副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与が行われる。
  • ステロイドが無効な例では免疫抑制剤の投与を実施する。
  • 遺伝性球状赤血球症では、赤血球が破棄される場の1つとなっている脾臓の摘出が行われる(摘脾術)。

再生不良性貧血の治療

治療法は重症度により決定される。

  • 軽症例:経過観察またはタンパク同化ホルモンの投与が行われる。
  • 中等症例:免疫抑制療法が行われる。
  • やや重症~重症例:免疫抑制療法が行われる。年齢、ドナーの有無、臓器機能により造血幹細胞移植を検討する。
  • 頻回の赤血球輸血により、鉄過剰を起こし臓器障害を起こすことがあるため、鉄キレート剤の使用を考慮する。
  • 頻回の血小板輸血により、抗HLA抗体の産生を招くことがあり、その場合は血小板輸血が困難となる。
  • 高度の貧血、出血を伴う血小板減少に対しては輸血が実施されるが、上記理由により最小限の回数のみ行われる。

巨赤芽球性貧血の治療

  • ビタミンB12欠乏症ではビタミンB12製剤の筋肉注射を行う。経口投与は無効である。

貧血の主な治療薬の例

  • 鉄欠乏性貧血鉄剤(フェロミア錠、フェジン注)
  • 溶血性貧血→副腎皮質ホルモン製剤:ステロイド(プレドニン錠)、免疫抑制薬(イムラン錠)、抗がん剤(エンドキサン錠)
  • 再生不良性貧血→タンパク同化ホルモン(プリモボラン錠)、免疫抑制薬(ネオーラルカプセル)、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(ATG)製剤(サイモグロブリン点滴静注)、顆粒球コロニー刺激因子製剤(グラン注)
  • 巨赤芽球性貧血ビタミンB12製剤(フレスミンS注)

 

貧血の看護問題の例

#1 組織の酸素不足に伴う症状によって必要な活動が出来ない

#2 組織の循環不全に伴う粘膜損傷・皮膚トラブルのリスクがある

#3 貧血を改善するための自己管理が不足している

#1 組織の酸素不足に伴う症状によって必要な活動が出来ない

看護診断

活動耐性の低下

診断指標

倦怠感、労作時の呼吸困難

長期目標

症状が出現しない範囲で、適度な活動がが行える

短期目標

貧血によって生じる症状を述べることができる

OP(観察計画)
  • 貧血の程度、血液データ(Hb、Ht、MCV、MCHC、血清フェリチン、尿素窒素、クレアチニン)
  • ふらつき、息切れ、動悸等の随伴症状の有無 
  • 貧血の原因、治療方法とその効果の程度
  • 活動量、活動時の症状、安静時の症状軽減の程度
  • 発熱、不眠など、貧血以外に活動を阻害する因子の有無
TP(ケア計画)
  • 貧血の程度と自覚症状に応じて適切な行動範囲を示し、それが守れるように支援する
  • 活動前後な安静が保てるように配慮する  
  • 可能な範囲で安全に活動ができるように環境調整を行う
  • セルフケアを制限する場合は制限に応じてセルフケアを支援する
  • 指示された薬剤を正確に投与する
EP(教育計画)
  • 起き上がりや起立の際に、ふらつきなどがないことを確かめてから次の動作に移るよう指導する
  • 活動によって症状が出現する時は、活動を中止するよう説明する

 

#2 組織の循環不全に伴う粘膜損傷・皮膚トラブルのリスクがある

看護診断

身体損傷のリスク状態

診断指標

組織の低酸素症、低栄養

長期目標

皮膚・粘膜のトラブルが出現しない

短期目標

皮膚・粘膜が損傷しやすいことを言語化して表出できる

OP(観察計画)
  • 皮膚、粘膜の色調、口内炎、舌炎、浮腫の有無・程度
  • 皮膚・粘膜が傷つきやすいことの認識の有無
  • 皮膚・粘膜のスキンケアや保護の実施状況および実施方法の理解の程度
TP(ケア計画)
  • 皮膚、粘膜のケアを行う
  • 口角炎や舌炎がある時は口腔内の清潔を保ち、指示された軟膏を塗布する
  • 衣類、寝具などで保温し、室温調整を行う
EP(教育計画)
  • 貧血に伴う皮膚・粘膜の保護の必要性や、保護の方法を説明する
  • 口角炎や舌炎がある場合は、鉄分、ビタミン、葉酸を多く含む食品が食事に取り入れられるように食事指導を行う

 

#3 貧血を改善するための自己管理が不足している

看護診断

非効果的自己健康管理

診断指標

指示された治療方法を実施するのが難しいと話す

長期目標

貧血改善の自己管理ができる

短期目標

指示された薬剤を確実に服用する

OP(観察計画)
  • 貧血の原因疾患についての患者・家族の知識、認識
  • 入院前の生活習慣、食事内容、活動量
  • 退院後の生活調整に対する意欲
TP(ケア計画)
  • 貧血による症状が現れた場面を振り替えってもらい、症状の予防方法と、症状が出現した場合の対処方法を一緒に考える
  • 活動の範囲に応じた症状出現の有無や程度について把握し、活動量の目安を一緒に考える
EP(教育計画)
  • 貧血による症状について説明する
  • 薬の作用・副作用を説明し、自身で服薬管理が出来るように支援する
  • 鉄剤は、ビタミンCを同時に摂取すると吸収しやすくなること、服用により便が黒色になることを説明する

おわりに

貧血は、症状と血液検査の結果から、貧血の程度と病因を把握することが大切です!

栄養だけでは治療しきれないことが多いので、鉄剤などの薬物療法、輸血療法が正しく行われるように管理することも超重要です!

貧血の治療によって日常生活への影響や変化がみられるか確認し、少しずつでも活動範囲やQOLの向上がみられるように、看護師は励ましながら介入していきましょう!

 

おわり!

 

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