栗看

~くりかん~

脱水の看護計画の例【看護診断、OP・TP・EPも!】

皆さんこんにちは、栗鈴です。
今回は『脱水の看護計画』です!宜しくお願い致します。

 

はじめに

人体の60%は水って、テレビでよく耳にしますね。

水≒生命の源

食事が摂れないことよりも、水分が摂れないことの方が、身体恒常性(ホメオスタシス)を維持することができず、命に関わります。

 

人間は代謝(発熱、発汗、排尿、排便)によって日常的に水分を失っています。失った分を口から補給しなければ、いずれは脱水になります。

 

また、外気温が高ければ高いほど、空気の「飽和水蒸気量」というのが上がります。すると、皮膚からの蒸散(=不感蒸泄=見えない汗とも呼ばれる)が多くなり、さらに体内の水分が失われやすくなります。

 

暑いと洗濯物がすぐ乾く」のと原理は一緒で、暑ければ当然に人間の身体は乾きやすくなります。したがって、四季の中でも気温が上がる夏は、春や秋と比べるとはるかに脱水が起こりやすいです。

 

最近の夏は、地球温暖化等の影響で、35℃以上の気温になることが当たり前のようになってしまいました。毎年のように脱水から熱中症を引き起こし、死亡してしまう事例が発生しています。

 

病院で看護をしていると、入院中に脱水を生じる患者さんは(お看取りのケースや、低アルブミン血症を生じる疾患等を除くと)滅多にいません。

 

24時間看護師が配置されていて、適切な室温調整、点滴療法や食事・飲水の介助等が施されるからです。

 

しかし、在宅では療養環境がそれぞれに全く違うため、状況は変わってきます。

 

脱水は、症状が出現してからでは、すでに重症となっている場合があるため、あらかじめ予防することが大切です。

 

ですので、夏はきちんと脱水予防を意識して過ごしていきましょう!

 

それでは宜しくお願いします。

 

 

脱水の病態生理

脱水とは体液量が減少した状態をいい、主に細胞外液の減少を指す。この際、水分とともに電解質(特にナトリウム:Na)の喪失も伴い、喪失程度の差に応じて3つの病型に分類される。

 

①高張性脱水症(水欠乏性脱水症)

Naに比べ水分が多く失われ、体液の浸透圧が上昇する脱水症

②低張性脱水症(Na欠乏性脱水症)

水分に比べNaが多く失われ、体液の浸透圧が低下する脱水症

③等張性脱水症(混合性脱水症)

水分とNaが同じ割合で失われる脱水症

 

  • 水分や電解質の喪失により細胞内液細胞外液の間に浸透圧差が生じ、細胞内外で浸透圧差が解消するように水の移動が起こる。これが要因となり脱水症の症状が発症する。

 

  • 臨床的には高張性・低張性に明確に分けることは困難で、等張性脱水症を呈する場合が多い。しかし、脱水症を治療する場合は、水とNa、どちらの喪失が優位かを考慮することが重要である。

 

  • 細胞外液間質液(細胞と細胞の間にある液体)+血漿(血液の血球以外の成分)からなる。

 

  • ネフローゼ症候群、肝硬変、悪性腫瘍(がん)等の疾患では、膠質(こうしつ)浸透圧の低下≒低アルブミン血症が顕著になり、間質液が貯留し、血漿は減少する。このような場合は全体の体液量が増加しているにも関わらず、血管内の循環血漿量は減少しており、一般的な脱水とは異なり、血管内脱水とよばれる。

 

脱水の症状

脱水の臨床症状は病型によって特徴がある。

  • 高張性脱水症:細胞外液の浸透圧が高くなり、水が細胞内から細胞外へ移動することにより、細胞内脱水が起こる。口喝、皮膚・粘膜の乾燥を生じやすい。脱水が高度になると興奮、不安、せん妄など精神症状を呈することがある。
  • 低張性脱水症:細胞外液の浸透圧が低くなるため、水が細胞外から細胞内へ移動し細胞外液が減少する。症状は、循環血液量減少、脳浮腫に由来するものが主体となっている。全身倦怠感、立ちくらみ、皮膚ツルゴール低下、血圧低下、頻脈、蒼白、四肢冷感、悪心・嘔吐、頭痛を生じやすい。進行すると、傾眠・昏睡となる。
  • 等張性脱水症:細胞内外で浸透圧は等張のため、水分の移動は起こらない。高張性脱水による口喝、低張性脱水によるめまい、血圧低下など、両方の症状が出現する。

高張性脱水の原因

水分摂取不足

  • 全身衰弱、食欲不振、意識障害、渇中枢障害、嚥下障害

腎外性水分喪失

  • 皮膚からの発汗・発熱
  • 肺からの過換気や気管切開

腎性水分喪失

  • 高血糖、高カロリー輸液、造影剤などによる浸透圧利尿
  • 尿崩症などによる尿濃縮力の低下

低張性脱水の原因

腎外性体液喪失

  • 嘔吐・下痢・消化管出血などによる消化管からの喪失
  • 熱傷・滲出性皮膚疾患などによる皮膚からの喪失

腎性体液喪失

  • 塩類喪失性腎症
  • 副腎皮質機能不全(アジソン病)
  • 利尿薬の過剰投与

血管外への体液移行

  • 腸閉塞・腹膜炎などによる、腹腔内や腸管への貯留
  • 熱傷による浮腫、水疱形成

脱水の治療・対症療法

第一にバイタルサインの確認を行い、ショックや意識障害などの異常があれば急速輸液を行うなどの緊急処置をとり、バイタルサインの安定化を図る。

  • 意識が正常かつ嚥下が可能で消化管障害がなければ経口からの補液を行う。
  • 経口摂取困難、中等度の脱水(体重の5%前後程度の減少が目安)がある場合は、経静脈的に輸液を行う。
  • 高度の脱水(体重の10%前後程度の減少が目安)があれば急速輸液を行う。

 

脱水の看護問題の例

  1. 大量の発汗により体液量が不足している
  2. 悪心・嘔吐による水分摂取量の不足から電解質異常を生じる可能性がある
  3. 皮膚・粘膜の乾燥、尿量減少により、呼吸器・尿路感染症の可能性がある
  4. 循環血液量の減少に伴う血圧低下等により転倒、身体損傷の可能性がある
  5. 患者・家族が症状悪化、再発に対する不安を生じている

脱水の看護計画の例

1.大量の発汗により体液量が不足している

看護診断:体液量不足

関連因子:実在する体液喪失(発熱による不感蒸泄の増加 等)

長期目標:水分摂取量・電解質異常が改善し、症状の軽減がみられる

短期目標:皮膚・口腔粘膜の乾燥が改善する 

OP

  • 水分摂取量
  • 発汗の有無
  • 口喝・口腔粘膜乾燥の程度
  • 眼球陥凹
  • 尿検査:尿量、尿比重、蛋白、糖、Na、Cl、Ca、浸透圧など
  • 血液検査:赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血清総蛋白、アルブミン、Na、K、Cl、Ca、尿素窒素、クレアチニン、血糖、血液ガス分析など
  • 体重
  • 水分出納

TP

  • 水分、食事、輸液、尿量、便、発汗の有無・程度を定期的に記録する
  • 経口での水分補給を促す
  • 経口摂取できない場合は含嗽を促す
  • 医師の指示により輸液、薬剤を投与する
  • 室温・衣類・掛け物を調整し、体温を調節する
  • 皮膚・粘膜をマスクや外用薬などで保護する

EP

  • 状況に応じて、輸液の必要性について説明する
  • 経口からの水分・栄養摂取の必要性を説明する
  • 脱水症状の観察方法を説明する
  • 水分出納のチェック方法を説明する
  • 皮膚・粘膜の乾燥を防ぐ方法を説明する

 

2.悪心・嘔吐による水分摂取量の不足から電解質異常を生じる可能性がある

看護診断:電解質平衡異常リスク状態

関連因子:嘔吐

長期目標:悪心・嘔吐がなくなり、電解質が正常範囲内に維持される

短期目標:悪心が軽減し、嘔吐の回数、量が減少する

OP

  • 悪心の有無、程度
  • 嘔吐の回数、量、性状、食物残渣の有無、胆汁・血液混入の有無
  • 口腔・皮膚の乾燥の程度
  • 精神症状の有無、程度

TP

  • 安静を保持できるよう臥床、安楽体位姿勢での休息を促す
  • 嘔吐時は含嗽や口腔清拭を行う
  • 室温・湿度調整、換気により体温を調節する

EP

  • 状況に応じて、輸液の必要性について説明する
  • 経口からの水分・栄養摂取の必要性を説明する
  • 脱水症状の観察方法を説明する
  • 水分出納のチェック方法を説明する

 

3.皮膚・粘膜の乾燥、尿量減少により、呼吸器・尿路感染症の可能性がある

看護診断:感染リスク状態

関連因子:不適切な第1次防御機構、免疫抑制など

長期目標:感染の危険因子と感染予防に必要な注意事項を説明できる

短期目標:感染経路の清潔が保たれる

OP

  • 発熱、白血球数上昇、CRP値上昇の有無
  • 尿量、尿の性状、排尿回数、排尿時痛、残尿感
  • 自覚症状の有無と変化
  • 感染症の既往の有無と症状に対する態度

TP

  • 状況に応じて皮膚処置を行う
  • 皮膚・粘膜を保護する
  • 褥瘡を予防する
  • 水分と十分なエネルギー、たんぱく質摂取を促す

EP

  • 感染の可能性と予防の必要性を説明する
  • 皮膚・粘膜の乾燥を防ぐ方法を説明する
  • 感染徴候の観察方法を説明する
  • 経口からの水分・栄養摂取の必要性を説明する

 

www.aikoandsibajyun.info

 

 

4.循環血液量の減少に伴う血圧低下等により転倒、身体損傷の可能性がある

看護診断:身体損傷リスク状態

関連因子:立ちくらみ、めまい、血圧低下、倦怠感

長期目標:転倒・転落や身体損傷なく療養生活を過ごすことができる

短期目標:安全対策がとられた状況で療養することが出来る

OP

  • バイタルサイン
  • 尿・血液データ
  • 自覚症状の有無と変化
  • ベッド周囲の環境

TP

  • 柵、ベッド周囲物品などの環境整備を行う
  • 意識状態、バイタルサインに応じて移動時の介助を行う

EP

  • 安静の必要性を説明する
  • 身体の変化が出現した場合は、すぐに伝えるよう説明する

 

5.患者・家族が症状悪化、再発に対する不安を生じている

看護診断:不安

関連因子:表情の緊張、注意障害

長期目標:身体・心理的不安が軽減し、生活環境を整えることが出来る

短期目標:不安や苦痛を言語化して表出できる

OP

  • 表情、落ち着きがない様子
  • 冷汗、蒼白などの不安を示す生理的変化の有無
  • 不安・心配の訴え
  • 状態や治療に対する質問の有無・内容
  • 夜間の睡眠状態
  • 食欲と食事摂取量

TP

  • 感情を表出しやすい環境づくりをする
  • 患者・家族の訴えに丁寧に対応する
  • 不安を助長させないように、相手の表情をみながらゆっくりと患者のペースに合わせて声掛けする
  • 必要時には不安や緊張を取り除く音楽、リラクゼーション法やマッサージなどを取り入れる

EP

  • 分からないことや心配なことがあれば質問するように伝える

 

以上になります!

おわりに

脱水は高齢者に起こりやすいです!

高度の脱水は死に至る危険性もあります!

そのため、迅速な対応が必要です!

まずはバイタルサインをすぐチェック!

意識は、はっきりとしていますか?

血圧は普段より下がっていませんか?

意識障害・ショック(血圧低下)がある場合は、超・緊急です!

すぐに人(在宅なら、家族、隣人、ケアマネージャー、訪問看護師、ホームドクター、救急隊など)を呼びましょう!

急速補液などの対応が行えるように体制を整えましょう!

 

また、私の体感ですが

脱水を起こしたことのある患者さまは、気温が上がる5~7月頃から、毎年のように脱水を繰り返す、という方が多いように思います。

 

脱水の再発予防に向けて、脱水が起こらないような環境づくりをあらかじめ準備しておきましょう!

 

看護・介護計画を立てて、

水分・食事を1日どのくらいとればいいのか、

体重はどのくらいだと安全か、

尿の回数や量はどの程度なら問題ないか等、

あらかじめ話し合っておきましょう!

異常の予防・早期発見に向けたセルフチェックが脱水予防ではとても重要です!

徹底して行えるようにしていきましょう!

 

おしまい。

 

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参考文献

緊急度・重症度からみた症状別看護過程 104‐117P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院