こんにちは、栗鈴です。
今回の記事は、『浮腫の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』になります。
よろしくお願いします。
- はじめに
- 浮腫の病態生理
- 浮腫の訴え方
- 浮腫の原因
- 浮腫の随伴症状と考えられる疾患
- 浮腫の診断
- 浮腫の治療法・対症療法
- 浮腫で考えられる看護問題の例
- 浮腫の看護計画
- おわりに
- 参考文献
はじめに
浮腫は、むくみの事です。むくみっていうのは皆さんご存じですよね。
でも、むくみって要するにどういう状態ですか?って言われたら、皆さんは即答できますか?
「むくみっていうのは、むくんでいる状態っていう事ですよ…それ以上でも、それ以下でもありませんよ…。」…と、なってしまうようでは、ちょっと良くありませんよね!
とはいえ、実は浮腫って、意外と複雑なメカニズムで起きているんですよね。
うん、勉強してみると、結構難しかったです。
ある程度、解剖整理が体系的に分かっていないと、なかなかすんなりとは浮腫の仕組みは理解できないところがある気がします。
あらためて勉強してみて、なるほど、そうなんだな…という事が多くありました!
浮腫は実際に看護をする機会も非常に多いので、ぜひ勉強していきましょう!
それでは、やっていきます。
浮腫の病態生理
- 浮腫とは皮下に水分が貯留した状態であり、むくみともいう。
- 浮腫は血管内の静水圧の上昇、膠質浸透圧の低下により血管外に水分が移動し、間質(血管外の組織)に貯留することで生じる。
- 静水圧とは、毛細血管内圧と間質の圧の差の事で、血管内の静水圧が高いと浮腫が生じる。どちらが高いかで水分の移動の方向が決まる。
- 例えば、心不全などで心拍出量が低下すると、静脈に血液のうっ滞が生じ、毛細血管内圧が高くなり、結果として下腿などに浮腫が出現する。浮腫の時に弾性ストッキングなどの処置をするのは、間質の圧を高めるためである。
- 膠質浸透圧とは、たんぱく質(主としてアルブミン)の濃度により生じる浸透圧をいう。血管壁には小さな穴が開いており、たんぱく質などの高分子は通れず、水分やイオンは通過できる。水分は膠質浸透圧が高い方へ移動する性質があるため、血管内の膠質浸透圧が低く、間質の膠質浸透圧が高ければ、水分は血管外へ漏出し、浮腫につながる。
- 例えば、肝硬変や低栄養の場合で血中アルブミンの低下があると、血管内の膠質浸透圧が低下し、相対的に間質の膠質浸透圧の方が高くなるので、水分は血管外へ漏出し浮腫となる。
- 間質に貯留した水分はリンパ管に吸収されるため、浮腫はリンパ管の閉塞でも生じうる。
- 毛細血管の透過性が亢進すると局所性浮腫をきたす。
浮腫の訴え方
- 眼瞼(まぶた)の浮腫の場合、「朝、まぶたが腫れぼったい」という訴え方が多い。また、顔の浮腫で徐々に増悪するものは自分では見慣れてしまうため、他人に指摘されて初めて気づくこともある。
- 喉頭浮腫は、普段は普通の声の人が急にしわがれたり、声を出しづらくなることで気付かれる(嗄声)。
- 上肢の浮腫の場合、「手が腫れぼったい」という訴え方が多い。手指の浮腫の場合は「指輪がきつくなった」という訴えを認めることがある。
- 下腿の浮腫では、「脛骨前面を指で押すとへこむ」「靴下の跡がつく」「足背にむくみがある」という訴えが多い。「夕方になると足がむくむ」という訴えもよく聞かれるものである。
浮腫の原因
全身性浮腫か、局所性浮腫かで分類が可能である。
全身性浮腫の原因
- 急性心不全、慢性心不全
- 腎不全
- ネフローゼ症候群
- 肝硬変
- 低栄養
- 吸収不良症候群
- 甲状腺機能低下
- 薬剤性:解熱鎮痛剤(NSAIDs)、甘草(グリチルリチン)等
- 特発性(原因不明)
局所性浮腫の原因
- 静脈閉塞(上大静脈症候群、深部静脈血栓症など)
- 悪性腫瘍(リンパ節転移、悪性リンパ腫など)
- アレルギー(アナフィラキシー、蕁麻疹)
- リンパ浮腫
- リンパ管炎
- 炎症(熱傷、蜂窩織炎、外傷など)
浮腫の随伴症状と考えられる疾患
全身性浮腫
- 喘鳴、呼吸困難、血圧低下もしくは高血圧、頻脈、体重増加⇒心不全
- 貧血、高血圧、体重増加、呼吸困難⇒腎不全
- 腹部膨満、横断、羽ばたき振戦、体重増加⇒肝硬変
- 蛋白尿、高コレステロール血症、体重増加⇒ネフローゼ症候群
- 甲状腺腫大、徐脈、皮膚乾燥、体重増加⇒甲状腺機能低下
- 低アルブミン血症⇒肝硬変、ネフローゼ症候群、低栄養、高齢など
浮腫の診断
浮腫の診断は、まず病歴(基礎疾患、体重増加、摂食状態、内服歴)で得た情報を考慮の上、浮腫の場所により全身性か局所性かを鑑別していく。
全身性浮腫
- 重力の影響により下腿浮腫として現れることが多い。
- 長期の臥床者では背部や臀部に認められる。
- 全身性なので手指、顔面、眼瞼など他の部位に現れることも多いが、全例に全てそろった形で出現するわけではない。
- 下腿では脛骨の前面を指で10秒程度軽く押した後にできる圧痕の有無を確認する。圧痕を認めれば軽度の浮腫を診断することが出来る。
局所性浮腫
- 左右差がみられる。
- 上大静脈症候群では、両側または一側の上肢、顔面、眼瞼の浮腫が著明となるが、通常下肢には浮腫が出現しない局所性の浮腫に分類される。
- 深部静脈血栓症は下肢の静脈に起こる頻度が圧倒的に高く、上肢と下肢両方同時に起こることは極めて稀である。
- 乳がんの術後でリンパ節切除後に起こる上腕の浮腫の場合、左右差が著明で、上腕から前腕まで全体的に主張している所見を認めることがある。
浮腫の治療法・対症療法
治療は浮腫の原因となっている疾患の確定診断の後、それぞれの治療法が選択される。原因疾患の治療により浮腫も改善することが多い。
- 心不全、腎不全、肝硬変などの全身性浮腫に対しては利尿薬が処方される。
- 利尿薬の投与により血清カリウム値が低下する場合は、カリウム製剤を投与したり、カリウム保持性利尿薬を併用したりする。
- 腎不全の患者では血清カリウム値が上昇していることが多いため、カリウム保持性利尿薬を使用する際は投与前にカリウム値を確認することが必須である。
- 利尿薬の長期投与により脱水をきたしたり電解質異常をきたすことがあるので、投与患者では腎機能(BUN:尿素窒素、Cr:クレアチニン)や電解質(Na:ナトリウム、クロール:Cl、カリウム:K)などを定期的に検査する。
- リンパ浮腫は乳がんの手術によりリンパ管が切除された患者に多く出現する。弾性包帯や弾性ストッキングを着用する。リンパマッサージが有効な場合もある。
- 高齢者で、日中車いすに座っている時間の長い患者では下肢の浮腫をきたしやすいため、下肢はなるべく挙上させておく。
- 深部静脈血栓症の場合は、血栓の生成予防のためワルファリンが投与される。
- アレルギー性の浮腫は掻痒感を緩和せる軟膏や内服のアレルギー薬が処方される。
- 蜂窩織炎のような炎症性浮腫の場合は抗菌薬の内服や外用薬で対応することが多い。
浮腫で考えられる看護問題の例
#1 浮腫がある
#2 浮腫による身体変化への不安がある
#3 浮腫による皮膚損傷のおそれがある
#4 浮腫により日常生活活動が障害されている
#5 感染症を起こす可能性がある
浮腫の看護計画
#1 浮腫がある
看護診断
体液量過剰
診断指標
浮腫、呼吸副雑音、短期間での体重増加、水分摂取量が排泄量より多い
長期目標
浮腫が消失する
短期目標
浮腫による二次障害が起こらない
観察計画(OP)
- 浮腫の部位
- 浮腫の程度(上肢・下肢・腹囲などの周囲径を測定する)
- 下着や靴下の跡、衣類のしわの跡の有無
- 浮腫に伴う四肢の屈曲困難、把持困難の有無
- 食事量、飲水量、輸液量、尿量、体重
- 治療内容と効果の程度、薬剤の副作用の有無
- 随伴症状の有無、症状の変化(倦怠感、呼吸困難、食欲低下、末梢冷感など)
- 検査データ(心機能、腎機能、肝機能、総蛋白、アルブミン、胸部X線所見)
- 皮膚の損傷の有無
ケア計画(TP)
- 安静を保持する
- 安楽な体位を工夫する(ファーラー位や起座位)
- 衣服による圧迫を取り除く
- 浮腫のある部位を枕・クッションなどで挙上する
- 決まった時間で体重測定、腹囲・上下肢の周囲を計測する
- 定期的に声掛けを行い、浮腫に対する不安の有無の表出を促す
教育計画(EP)
- 浮腫の現状や治療内容などを分かりやすい言葉で説明する
- 浮腫の原因疾患の治療の継続と、生活管理の必要性を説明する
- 身体的苦痛や不安の増強などある場合には遠慮せず話すように説明する
#2 浮腫による身体変化への不安がある
看護診断
ボディイメージ混乱
診断指標
身体の変化に対する非言語的な対応、身体に対する否定的な感情
長期目標
浮腫に伴う身体的変化を受容したことを言葉に出して表出できる
短期目標
身体的変化への不安が軽減したことを言葉に出して表出できる
観察計画(OP)
- 不安や緊張の表情、落ち着きがない様子などの有無
- 活気、精神症状の有無
- 睡眠の状況
- 身体の変化に対する否定的な言葉や不安の訴え
- 状態や治療に対する質問の有無、内容
ケア計画(TP)
- 定期的な声掛けを行い、落ち着いた態度で接する
- 感情や悲嘆などを声掛けで表出させる
- 足浴、温罨法、リラクゼーションなどを用いて安楽を促す
教育計画(EP)
- 浮腫に対する質問を積極的に受け入れ、必要に応じてカウンセリングなどの資源の活用を提案する
#3 浮腫による皮膚損傷のおそれがある
看護診断
皮膚統合性障害リスク状態
長期目標
創傷・褥瘡を起こさない
短期目標
創傷・褥瘡の予防方法について話すことが出来る
観察計画(OP)
- 浮腫の部位・程度
- 皮膚の乾燥・湿潤状態の程度
- 皮膚の発赤・紅斑の有無
- 衣類や寝具による皮膚のしわや圧迫の様子
- ベッドや寝具の硬さ
- 自力での体位交換の頻度
- 食欲、食事摂取量、血液データ(総蛋白、アルブミン)
- 利尿薬の服薬状況
- おむつ使用、尿失禁の有無
ケア計画(TP)
- 締め付けや圧迫の少ない衣服を選ぶ
- 体位変換の援助を状態に応じて定期的に行う
- 体圧分散寝具(エアーマットやウレタンフォームマットレスなど)を使用する
- 発赤部位の保清は刺激の少ない洗浄剤を用いる
- 腋窩、鼠径部、陰部等、皮膚の2面が接する部位は十分に乾燥させる
- 浮腫を認める部位での注射は避ける
教育計画(EP)
- 体位変換や体重移動の必要性について説明する
- 栄養状態を改善する必要性について説明する
- 清潔を維持する必要性について説明する
#4 浮腫により日常生活活動が障害されている
看護診断
活動耐性の低下
診断指標
労作時の疲労感、呼吸困難、倦怠感の訴え
長期目標
日常生活動作の活動範囲が拡大する
短期目標
活動範囲の拡大に向けた積極的な発言が認められる
観察計画(OP)
- 表情、活気
- 倦怠感、呼吸困難感の程度
- 浮腫による活動制限(体位変換、座位、立位、歩行、関節可動域など)
- 睡眠状況、熟眠感の程度
- 日中の休息の有無・程度
- 活動への不安に関する発言・訴え
ケア計画(TP)
- 必要な日常生活の援助を行う(体位変換、移動、排泄、清潔、整容、更衣、食事)
- 栄養状態改善に向けて食事摂取を促す
- バイタルサインの安定、自覚症状の有無を確認しながら徐々に活動範囲を拡げていく
- ベッドのギャッチアップや枕・クッションを用いて休息・睡眠時の体位を調整し、安楽な睡眠を促す
教育計画(EP)
- 毎日の活動・休息のスケジュールを一緒に計画し、活動・休息時間の配分を調整できるように説明する
#5 感染症を起こす可能性がある
看護診断
感染リスク状態
長期目標
感染を起こさない
短期目標
皮膚・粘膜の清潔が保たれる
観察計画(OP)
- 倦怠感、疲労感の有無
- 皮膚・粘膜の損傷の有無、程度
- 外傷、褥瘡の有無、程度
- カテーテルや点滴刺入部の状態
- 栄養状態(総蛋白、アルブミン、体重、BMI)
- 感染徴候を示す検査データ(白血球数、CRP)
ケア計画(TP)
- 全身の清潔ケアを行う
- カテーテル挿入部位の清潔保持に努める
- 皮膚・粘膜の清潔保持に努める
- 軟らかい寝衣、寝具を選択する
- 爪による擦過傷の予防にために爪切りを行う
- 医療者・面会者の手洗いを徹底する
- 処置時の清潔操作を徹底する
教育計画(EP)
- 感染予防における清潔や栄養補給の重要性を説明する
- 患者・家族に感染の徴候と症状について指導を行い、それがみられた場合は報告するように説明する
以上になります!
おわりに
浮腫は単なるむくみだと油断してはいけません!
浮腫を生じた皮膚は常に緊張しており、皮膚トラブルが起こりやすくなっています。
また、原疾患により栄養状態が低下している患者さまも多いため、軽い皮膚の擦過傷や外傷から、短期間で蜂窩織炎などの皮膚感染症を起こすことがあります。
浮腫がある患者さまは、皮膚トラブル防止に向けた介入を徹底していきましょう!
おわり。
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参考文献
緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図 120‐151P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院