こんにちは、栗鈴です。
今回の記事は、『肺炎の看護計画の例(OP・TP・EP)【これでばっちり】』になります。
よろしくお願いします。
- はじめに
- 肺炎の病態生理
- 肺炎の病因・増悪因子
- 肺炎の疫学・予後
- 肺炎の症状
- 肺炎の診断・検査値
- 肺炎の治療法
- 肺炎の主な治療薬の例
- 肺炎の看護問題の例
- #1 気道に痰が貯留し換気が障害されている
- #2 身体症状に伴う安楽の変調を生じている
- #3 食欲不振やエネルギー消費増加により低栄養状態を生じている
- #4 口腔内の乾燥・衛生状態不良による二次感染リスクを生じている
- #5 病状の経過に対する不安を生じている
- #6 組織の酸素過不足、エネルギー消費増加により、活動が抑制されている
- #7 ガス交換障害が起こる危険性がある
- #8 肺炎を発症しやすい身体状態および環境状況である
- #9 病原体を媒介して肺炎を拡大させる可能性がある
- #10 肺炎の治療や予防行動を生活に取り入れ、積極的に管理しようとしている
- おわりに
- 参考文献
はじめに
肺炎は、実際に看護をする機会が非常に多く、死亡率も高い危険な疾患です!
基本的に早期の抗菌薬による薬物療法が必須です!
迅速かつ確実な投薬を行うことが、治療のカギを握っています!
病院によると思いますが、抗生剤の内服管理や、点滴の実施は、看護師が中心に行っていることが大半かと思います。
したがって、肺炎の患者様への看護は、薬物療法の重要性を十分に理解した上で看護に臨みましょう!
肺炎の病態生理
肺炎は何らかの病原微生物が肺に侵入して発症する肺実質性の急性感染性の炎症である。
- 病原微生物が咳反射や粘液線毛輸送系などの防御機構を通り抜けて肺胞領域に達しても、常に肺炎が生じるわけではない。
- 病原性の強い病原微生物が多数侵入し、肺胞マクロファージだけでは処理できず、好中球やマクロファージが動員され、肺に炎症が生じて肺炎となる。
- 空気の通りが悪い末梢の気管支から炎症が始まる。好中球が主体となった炎症が起こり、一部に膿性の分泌物が溜まることもある。
- 一般社会生活を営んでいる人に発症する肺炎を市中肺炎と呼ぶ。高齢者や糖尿病、膠原病など、種々の基礎疾患を有する人に発症した場合も、入院中の発症でなければ市中肺炎と呼ぶ。
- 病原微生物と抗生物質の感受性から、市中肺炎はさらに細菌性肺炎と非定型肺炎に分類される。
- 入院時すでに感染していた症例を除き、入院後48時間以上経過して発症した肺炎は院内肺炎とよぶ。院内肺炎の発症機序には、①宿主が易感染性である場合が多いこと②誤嚥などによる病原体の過剰侵入③病院内が交差感染しやすい場所であること、などが関与する。
肺炎の病因・増悪因子
市中肺炎の原因となる病原微生物は、
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌:Hib(ヒブ。インフルエンザウイルスとは別物)
- マイコプラズマ
- クラミジア
- レジオネラ菌
などの頻度が高い。
院内肺炎の原因となる病原微生物は、
- 緑膿菌
- インフルエンザ菌:Hib
- クレブシエラ菌
- 黄色ブドウ球菌
などの頻度が高い。
- 院内肺炎では、慢性呼吸器疾患、心不全、糖尿病、坦癌状態(癌キャリア。癌を保有している状態のこと)、人工呼吸器管理下、誤嚥などが悪化の危険因子となる。
肺炎の疫学・予後
- 罹患率、死亡率とも男性がやや多い。罹患率は高齢になるにつれ急激に増加する。
- 日本における肺炎全体の死亡順位は第4位で、年間約9万人が肺炎のため死亡している。罹患率、死亡率とも年齢と共に増加し、85歳以上の男性では死因の第2位、90歳以上の男性では死因の第1位である。
- 予後は年齢や基礎疾患なども含めた重症度によって異なり、若年者で基礎疾患がなく軽症であれば死亡率は1%未満だが、最も重症な群では死亡率は30%に及ぶ。
肺炎の症状
主要症候は、発熱、咳、痰、呼吸困難である。
- 典型例では、咳、痰、胸痛、呼吸困難などの局所症状と、発熱・全身倦怠感などの全身症状が組み合わさって急激に出現する。年齢や基礎疾患の有無で必ずしも典型的な症状が出現しない場合もあり、高齢者では食欲不振、不活発などの漠然とした症状の場合もある。
肺炎の診断・検査値
- 咳、痰、発熱など肺炎が疑われる症状がみられる
- 胸部X線写真で新たな浸潤影(白く写る)がみられる
- 急性炎症を反映する血液検査所見(白血球数増加、CRP増加、赤沈の高値など)がみられる
の場合は、ほぼ肺炎と診断される。
- 肺炎の確定診断、病原微生物の確定のためには痰の細菌検査や抗原検査、遺伝子検査が必要となる。
- 抗菌薬によって改善しない場合、①使用している抗菌薬が無効な感染性の肺炎、②その他の肺炎(薬物性、好酸球性、器質化肺炎:間質性肺炎など)、③ほかの疾患(肺癌、心不全、肺塞栓症など)を考える。
- 鑑別診断には胸部CTが重要である。
肺炎の治療法
- 抗菌薬を早期に開始する。
- 治療前に原因となる病原微生物が判明する率は低く、早期に治療を開始しなければ予後が悪くなることが知られている。
- 肺炎と診断した時点で、病原微生物を予測して抗菌薬を使用する。
- 診断後4時間以内の抗菌薬の開始が推奨されている。
- 病原微生物が判明した場合は抗菌薬の感受性を再検討する。
- 病原微生物が判明しない場合は治療開始後3日間の治療効果を判定し、抗菌薬の続行・変更・追加を検討する。
- 抗菌薬の終了は、解熱、白血球数の正常化、CRPの改善、胸部X線陰影の明らかな改善などを目安とする。
肺炎の主な治療薬の例
- マクロライド系抗菌薬:クラリスロマイシン(クラリス)、ロキシスロマイシン(ルリッド)、アジスロマイシン(ジスロマック)、エリスロマイシン(エリスロシン)
- ニューキノロン系抗菌薬:レボフロキサシン(クラビット)、モキシフロキサシン(アベロックス)、ガレノキサシン(ジェニナック)、シプロフロキサシン(シプロキサン)、パズフロキサシン(パズクロス)
- ケトライド系抗菌薬:テリスロマイシン(ケテック)
- ペニシリン系抗菌薬:アモキシシリン(サワシリン)、スルタミシリン(ユナシン)
- ペネム系抗菌薬:ファロペネム(ファロム)
- テトラサイクリン系抗菌薬:ミノサイクリン(ミノマイシン)
- セフェム系抗菌薬:セフトリアキソン(ロセフィン)、セフタジジム(モダシン)、セフェピム(マキシピーム)
- カルバペネム系抗菌薬:メロペネム(メロペン)、ビアペネム(オメガシン)、ドリペネム(フィニバックス)
肺炎の看護問題の例
#1 気道に痰が貯留し換気が障害されている
#2 身体症状に伴う安楽の変調を生じている
#3 食欲不振やエネルギー消費増加により低栄養状態を生じている
#4 腔内の乾燥・衛生状態不良による二次感染リスクを生じている
#5 病状の経過に対する不安を生じている
#6 組織の酸素過不足、エネルギー消費増加により、活動が抑制されている
#7 ガス交換障害が起こる危険性がある
#8 肺炎を発症しやすい身体状態および環境状況である
#9 病原体を媒介して肺炎を拡大させる可能性がある
#10 肺炎の治療や予防行動を生活に取り入れ、積極的に管理しようとしている
#1 気道に痰が貯留し換気が障害されている
看護診断
非効果的気道浄化
診断指標
咳嗽、喀痰貯留、異常な肺音
長期目標
気道における痰の貯留が消失し、換気が改善する
短期目標
正常な肺音が聴取できる
観察計画(OP)
- 呼吸状態(呼吸数、呼吸パターン、肺音)
- 咳嗽・喀痰の有無・性状
- 痰の貯留の有無・貯留部位
- 食事・水分摂取状況、脱水症状の有無
ケア計画(TP)
- 気道の保湿(湿度調整、水分摂取、含嗽、口腔ケア、吸入)により、痰の粘稠度を低くして、喀痰を促す。
- 体位ドレナージを行う。排痰体位(痰の貯留部位が肺全体で最も高く、区域気管支が垂直になる体位)を介助し、排痰を促す。
- スクイージングを実施し、喀痰を促す。
- 腹式深呼吸、ハッフィング、催咳法などを援助する。
- 状態・必要に応じて、喀痰吸引を行う。
教育計画(EP)
- 効果的な喀痰方法が実施できるように説明する。
- 痰の採取、吸引、吸入、検査、治療や医療処置の目的、それらに伴う体への負担(侵襲)について説明する。
- 喫煙者の場合は、必要に応じて禁煙指導を段階的に行う。
#2 身体症状に伴う安楽の変調を生じている
看護診断
安楽障害
診断指標
咳嗽、発熱、呼吸困難感、倦怠感、胸痛
長期目標
不快な症状が緩和し、安楽な状態で療養できる
短期目標
苦痛の軽減がみられ、十分な睡眠がとれる
観察計画(OP)
- 症状の程度、経過
- 睡眠・休息の状況、食欲・活動意欲の程度
- 表情の苦しさや苦痛の表出の有無
ケア計画(TP)
- 室温・湿度の調整、口腔ケアを行う
- 締め付けの少ない衣服の着用を促す
- 必要に応じて、食事形態の調整や、水分摂取・緩下剤による排便周期のコントロールを行う
- 必要に応じて、呼吸法(腹式深呼吸、口すぼめ呼吸)の実施を促す
- 体熱感や発汗時は保清や水分摂取を行う
- 病室環境や病室位置、トイレ位置に配慮して休息しやすい環境を調整する
- 定期的に声掛けを行い苦痛の表出を促す
- 苦痛緩和に向けた投薬(解熱薬、睡眠薬など)の必要性を患者・医師と相談する
教育計画(EP)
- 苦痛をできる限り我慢せず相談するように伝える
- 想定される苦痛の予防方法を指導する
- 睡眠・休息が阻害されている原因について話し合い、解決策を相談する
#3 食欲不振やエネルギー消費増加により低栄養状態を生じている
看護診断
栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
診断指標
食事摂取量の低下、高熱の持続、アルブミン値の低下
長期目標
必要な食事量が摂取でき、栄養状態が改善する
短期目標
食欲の改善がみられる
観察計画(OP)
- 食欲、食事摂取状況、食事量
- 栄養状態(総蛋白、アルブミン値、体重、脱水の有無)
- エネルギーを消費する因子(発熱、咳嗽など)の有無
ケア計画(TP)
- 食事中・食後の姿勢(1~2時間程度の起座位保持など)を支援する
- 口腔ケアを実施する
- 食事内容・量を調整する
- 食事の嗜好に配慮する
- 医師の指示に従い、輸液を確実に実施する
教育計画(EP)
- 体力の回復や感染防御能と関係づけて、食事摂取の必要性を説明する
- 嗜好に合わせた補食について患者・医師と相談する
#4 口腔内の乾燥・衛生状態不良による二次感染リスクを生じている
看護診断
口腔粘膜障害
診断指標
口内の乾燥
長期目標
口腔内の衛生が保たれ、不快感や障害が起こらない
短期目標
定期的な口腔ケアが実施できる
観察計画(OP)
- 口腔内の乾燥、食物残渣、喀痰の有無、不快感の程度
- 清潔ケアの実施状況(歯磨き、技師洗浄、含嗽)
- 水分摂取状況
- 発熱・呼吸器症状(口呼吸や喀痰)の有無
ケア計画(TP)
- 水分摂取、含嗽を促し、口腔内の保湿環境を整える
- 口腔内の清潔を促し、セルフケア力の程度に応じて保清を支援する
- 毎食後、就寝前の歯磨き、義歯洗浄、食物残渣や痰の除去を行う
教育計画(EP)
- 感染予防と関連付けて、口腔ケアの必要性の説明を行う
- 必要に応じて、口腔ケアの方法を説明する
#5 病状の経過に対する不安を生じている
看護診断
不安
診断指標
睡眠障害、食欲低下、呼吸困難感、活動意欲低下
長期目標
不安をコントロールできていることを表出できる
短期目標
不安が表出できる
観察計画(OP)
- 発熱、呼吸状態、胸痛等の程度・経過
- 睡眠や休息障害、食欲低下の有無
- 生活価値動画抑制されている認識や思いの有無
- 不安の表現や表出の状態
- 症状や治療に関する認識や、治療経過に関する思い
ケア計画(TP)
- 睡眠・休息がとれる環境の調整
- 感情に寄り添って思いを傾聴する
- 定期的に声かけを行い、患者の不安に対する関心を示す
教育計画(EP)
- 現在の生活目標(お風呂に入りたい、等)について話し合う
- 睡眠や休息が阻害されている原因について話し合う
- 不安の原因になっている状況をコントロールする機会をつくる(深呼吸、瞑想など)
#6 組織の酸素過不足、エネルギー消費増加により、活動が抑制されている
看護診断
活動耐性低下リスク状態
長期目標
日常生活の活動範囲が拡大する
短期目標
活動と休息の時間を調整することができる
観察計画(OP)
- 活動中または活動後のバイタルサインの変化の有無・程度
- 活動中または活動後の呼吸状態の変化の有無・程度
- 血液データにおける炎症所見(白血球、CRP)
- 活動意欲、活動内容・量・時間・頻度
- 休息の時間・頻度
ケア計画(TP)
- 1日の生活の中で活動と休息の時間の調整を促す
- 出来る限り活動範囲の拡大を促し、行動の機会を設ける
教育計画(EP)
- 1日の生活スケジュールを患者とともに計画する
- ストレッチや座位での運動など、酸素消費の少ない運動を指導する
#7 ガス交換障害が起こる危険性がある
看護診断
ガス交換障害
診断指標
動脈血液ガス分析値の異常、呼吸状態の異常
長期目標
動脈血液ガス分析値のデータの改善がみられる
短期目標
動脈血酸素飽和度が正常値で維持できる
観察計画(OP)
- SpO2の低値、チアノーゼ、呼吸困難感の有無
- 動脈血液ガス分析値(PaO2、PaCO2、PH、HCO3)
- 日常生活動作能力の程度
ケア計画(TP)
- 医師の指示に従い、酸素療法を実施する
- ベッド上での安静を促す
- 障害されている日常生活動作を支援する
教育計画(EP)
- 酸素使用時の注意点やCO2ナルコーシスについて説明する
- 呼吸困難時における口すぼめ呼吸を指導する
#8 肺炎を発症しやすい身体状態および環境状況である
看護診断
感染リスク状態
長期目標
治療後を想定した肺炎予防の対策が実施できる
短期目標
感染予防の方法を説明できる
観察計画(OP)
- 基礎疾患、治療薬、年齢、栄養状態、嗜好、嚥下機能
- 入院前の生活状況、環境
- 基礎疾患や肺炎に対する知識、学習能力
ケア計画(TP)
- 栄養・水分摂取、活動・休息を促す
- 必要に応じて食事形態の変更や食事時の姿勢を調整し誤嚥を予防する
- 換気など、環境調整を行う
- 含嗽、口腔ケア、手洗い、入浴などの保清を増やす
教育計画(EP)
- 肺炎を起こした原因を患者と話し合う
- 栄養状態の改善など、感染防御力を高めるための要素について患者と話し合う
- 本人の嗜好に応じて、禁煙、節酒の目的・方法を指導する
- 住環境やペットの飼育の有無など、生活環境を振り返り、感染防止の必要性を説明する
- スタンダードプリコーションに基づく衛生学的手洗いの方法を説明する
#9 病原体を媒介して肺炎を拡大させる可能性がある
看護診断
感染仲介リスク状態
長期目標
感染の拡大を防ぐ方法が実施できる
短期目標
感染経路に応じた予防方法を話し合うことが出来る
観察計画(OP)
- 肺炎の感染経路など、肺炎に関わる知識の有無・程度
ケア計画(TP)
- 感染経路(接触感染・飛沫感染・空気感染)に基づくスタンダードプリコーションの実践
- 喀痰に用いたティッシュの廃棄など、簡単な環境整備の実施を促す
教育計画(EP)
- 感染経路(接触感染・飛沫感染・空気感染)について指導する
- 衛生学的手洗い、マスク着用、喀痰の廃棄方法などを説明する
- 療養指導については同居する家族も参加できるように調整する
#10 肺炎の治療や予防行動を生活に取り入れ、積極的に管理しようとしている
看護診断
効果的治療計画管理
診断指標
疾患の治療に対する自己管理を希望する様子がみられる
長期目標
肺炎の治療における服薬管理が自身で行える
短期目標
服薬・点滴の作用を説明できる
観察計画(OP)
- 与薬開始時期と症状の変化
- 与薬に伴う有害作用の出現の有無
- 肺炎の治療に対する理解の程度
ケア計画(TP)
- 正確な与薬を行う
- 与薬に伴う有害作用が生じた場合はすぐに医師に報告し対処方法を確認、実施する
教育計画(EP)
- 薬の作用・副作用について説明し、正確に服薬するよう指導する
- 治療後の定期受診を促す
おわりに
肺炎の治療は、基本的に薬物療法が必須です!
ですが、食事・飲水・活動・休息・保清など、基本的な生活部分が改善されるかによっても経過が大きく変化する疾患です!
肺炎の治療が完了しても、その間の栄養が摂れていなかったり、活動が減少してしまっていると、体力は元通りになっておらず、筋力低下などから廃用症候群(フレイル)や転倒、骨折などの別の問題を起こしてしまう可能性があります!
したがって、肺炎の治療を行いながらも、きちんと元通りの日常生活が送れるように、セルフケアの支援やリハビリテーションを通して生活機能の改善を促していくことを念頭に置きながら、ケアを実践していきましょう!
おわり!
参考文献
病期・病態・重症度からみた疾患別看護過程+病態関連図 15‐40P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院
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