こんちには、栗鈴です。
今回は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の看護計画です。宜しくお願い致します。
はじめに
医療用語ってアルファベットの略語が多いですよね!
SpO2とか、ADLとか、AEDとか…
だんだん使い慣れてくるのですが、英語が苦手だと、なかなかスッと入ってこない。
きちんと理解できてないまま、わかってるふりして言葉を使っちゃうことが、看護師歴10年超えても、割とあります…。
デクビとか、ケモとかも…妙な略語も使われがちだし…
女性が多い仕事だから、ですかね??(と言ったら怒られそう…)
COPDというのも、覚えたてのうちは、ピンとこなかった看護学生さんは、多いんじゃないでしょうか?
COPDも、慢性閉塞性肺疾患も、どっちも言いづらい!!
COPDの正式名称は、Chronic Obstructive Pulmonary Disease です。
Chronic(クロニック:慢性的な)
Obstructive(オブストラクティブ:閉塞性の)
Pulmonary(パルモナリー:肺)
Disease(ディジーズ:疾患)
ということで、COPDの和名は、慢性閉塞性肺疾患です。
和名でも、なかなかピンときませんね。何が閉塞してんの?って感じで…
医療用語で使われる閉塞というのは、血液や物質や空気等の出入りが悪くなることをいいます。
つまり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)というのは、肺・気道の中の空気の出入りが悪くなる(気流制限)病気ですよ、という事です!
ここまできたら、なるほど~という感じですよね!
というわけで、やっていきましょう!
COPDの病態生理
COPDは、たばこの煙などの吸入によって生じた肺・気道の炎症反応による進行性の気流制限を呈する疾患である。
- 気流制限の主要因は、末梢気道病変である。
- 肺胞の破壊が進行して気腫(肺胞の弾力が失われて酸素が取り込みにくい状態)が多くなる型(気腫優位型)と、気道の状態悪化が進行する型(気道病変優位型)になるものとがある。
- リスク因子の回避と適切な管理で有効な予防と治療が可能である。
COPDの病因・増悪因子
- COPDのリスク因子には、喫煙や大気汚染などの外因性危険因子と、患者側の内因性危険因子がある。
- 喫煙が最大の外因性危険因子だが、発症するのは喫煙者の15%程度で、喫煙に対する感受性が高い人が発症しやすいと考えられている。
- 内因性危険因子は、α1-アンチトリプシン欠乏症(指定難病231)などの先天性疾患があるが、日本では稀である。
COPDの疫学・予後
- 喫煙歴のないCOPDは稀である。喫煙者の約15%がCOPDを発症する。
- 在宅酸素療法(HOT)を導入した患者の5年生存率は40~50%とされる。
- 薬物療法、呼吸リハビリテーション、栄養療法などを組み合わせることで、全体の5年生存率は70~80%に改善している。
COPDの症状
労作性呼吸困難と、慢性的な咳・痰が主症状である。
- 気腫優位型では、労作性呼吸困難が主体であり、喫煙を継続すると進行していく。進行例では樽状胸(肺が膨張して球状の形になる)やばち指(爪周囲を中心に指先が厚くなる)がみられる。
- 気道病変優位型では、慢性的な咳、痰が主症状であり、進行すると呼吸困難を生じるが、症状の乏しい症例も存在する。
COPDの診断
症状、画像所見(胸部X線撮影、CT)、喫煙歴などから疑い、肺機能検査(スパイロメトリー)で確定する。
- ガイドラインによる診断基準では気管支拡張薬を吸入後の肺機能検査で、1秒率( 深く息を吸い、一気に吐き出した空気の量に対して、最初の1秒間で吐き出した量の割合) が70%未満で、他の気流制限を生じる可能性がある疾患(気管支喘息、肺がんなど)を除外できたものをCOPDと定義している。
COPDの合併症
肺がん、虚血性心疾患、消化性潰瘍、肺高血圧症、肺性心などの合併率が高い。
COPDの治療法
基本的に根本的治療法はなく、対症療法が主体となる。
- COPDの大部分が喫煙によって生じることから、禁煙指導を徹底し、病状の進展を阻止することが必須である。その上で薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法を組み合わせる。外科療法が適応になる症例もある。
- 感染による増悪が病状を進行させるため、インフルエンザワクチン等の予防接種が推奨される。
- 気道閉塞に対する気管支拡張薬(β₂刺激薬、抗コリン薬)、テオフィリン製剤や、痰の多い患者に対する去痰薬、抗炎症作用としてのステロイド薬、感染合併例への抗生物質などの使用が一般的である。
COPDの薬物療法
- 禁煙補助剤(ニコチネルパッチ 等)
- 去痰薬(ムコダイン、カルボシステイン 等)
- 気管支拡張薬(テオドール、セレベント:吸入薬、サルタノールインヘラー:吸入薬、ホクナリンテープ:貼付薬 等)
- 抗コリン薬:気管支収縮を抑制する(スピリーバ:吸入薬 等)
- ステロイド薬(キュバール:吸入薬 等)
COPDの酸素療法
COPDによる慢性呼吸不全のうち、動脈血酸素分圧(PaO2)が55mmHg以下、またはPaO2が60mmHg以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素血症を示す者、肺高血圧を合併しているものが適応となる。
COPDの看護計画
COPDの看護問題
- 効果的な咳嗽が行えない
- 呼吸困難や窒息に対する恐怖から不安を抱いている
- ADLに必要な酸素供給が低下している
- 不適切な栄養摂取量のために体重減少をきたしている
- 症状、治療、感染予防、急性増悪の徴候についての知識が不足している
- 在宅酸素療法について不安がある
- 家族が療養生活を支援する過程で、身体的・精神的・社会的・経済的な負担を生じる可能性がある
#1効果的な咳嗽が行えない
看護診断:非効果的気道浄化
関連因子:粘液分泌の亢進
長期目標:気道の浄化が維持できる
短期目標:効果的な咳嗽が行える
OP
- 異常呼吸音の有無
- 呼吸数、リズム、深さ
- 呼吸困難の有無
- 喀痰の性状、量
TP
- 口腔ケア
- 適切な水分状態を維持する
- 体位ドレナージ
- 排痰補助
- 咳嗽介助
- 喀痰吸引
EP
- 咳嗽による排痰法(ハッフィングを指導する)
#2 呼吸困難や窒息に対する恐怖から不安を抱いている
看護診断:不安
関連因子:呼吸困難 窒息に対する恐怖
長期目標:不安が軽減する
短期目標:呼吸困難が改善する 不安を表出することが出来る
OP
- 呼吸困難の程度
- 姿勢、起座呼吸の有無
- SpO2
- スパイロメトリーによる肺気量測定値
- 意識障害の有無
- 不安の程度
TP
- 医師の指示のもと酸素投与を行う
- 薬物療法を適切に管理する
- 安楽な体位が保持できるように援助する
- 不安が軽減されるような声掛けやケアを行う
- 環境整備
EP
- 口すぼめ呼吸、腹式呼吸を指導する
#3 ADLに必要な酸素供給が低下している
看護診断:活動耐性低下
関連因子:酸素供給の低下
長期目標:活動レベルが上昇する
短期目標:効果的な呼吸方法を実施できる
OP
- 安静時の血圧、脈拍、呼吸数の測定
- 活動レベルの観察
- 栄養状態(体重減少、BMI、血清アルブミン、総蛋白)
- 睡眠状態、休息時間
TP
- ADLに応じた介助を行う
- 活動中に胸痛、めまい、混乱等がみられた場合は活動を中止し、改善がみられない場合には医師に報告する
- 安静度、医師の指示の範囲で徐々に活動を増やす
EP
- 喫煙が酸素需要を高めることについて説明する
#4 不適切な栄養摂取量のために体重減少をきたしている
看護診断:栄養摂取消費バランス異常:必要量以下
関連因子:呼吸困難、不適切な栄養摂取
長期目標:活動レベルと代謝需要に従って栄養必要量を摂取することができる
短期目標:十分栄養を摂取することの大切さを理解できる
OP
- 身長、体重の増減
- BMI
- 食事摂取量、内容、回数
- 悪心・嘔吐・便秘・下痢の有無
- 1日のカロリー所要量
- 嗜好品の摂取の有無
- 血液データ(血清総蛋白、血清アルブミン、血清ヘモグロビン等)
TP
- 身体症状が軽減するよう、声掛けや、安楽体位の保持ができるように支援する
- 食事内容、量、回数を調整する
EP
- 適切な栄養摂取の必要性を説明する
- 味付けの工夫や食事前の休息など、食事量を増加させる方法を見出して実践できるように支援する
#5 症状、治療、感染予防、急性増悪の徴候についての知識が不足している
看護診断:非効果的治療計画管理リスク状態
関連因子:不十分な知識
長期目標:急性増悪を防止するための管理ができる
短期目標:現状の病状を把握できる 急性増悪の予防方法を述べることが出来る
OP
- 疾病過程、現在の病状、治療、合併症に関する理解の程度
- 職業、職場環境
- 喫煙歴
- 療養生活に対する不安、意欲低下の有無
EP
- 呼吸器感染の予防の必要性と方法を指導する(手洗い・うがい・予防接種・早期受診等)
- 息切れ、痰の増加、食欲低下などの増悪の徴候について指導する
- 右心不全の徴候(急激な体重増加、浮腫、動悸など)について指導する
- 体重、浮腫の有無、食事摂取量等はセルフチェックが行えるように指導する
#6 在宅酸素療法について不安がある
看護診断:不安
関連因子:在宅酸素療法
長期目標:在宅酸素療法を日常生活に適応させることが出来る
短期目標:在宅酸素療法の必要性、方法について理解できる
OP
- 在宅酸素療法の受け入れ状態、理解度
- 疾患、治療についての理解度
- ストレスに対する対処行動の内容
TP
- 在宅酸素療法に伴う日常生活における問題点が挙げられるように支援する
- 訪問看護の必要性について、他部門の専門職と連携して検討する
- 患者のそばに寄り添い、訴えを傾聴する
- 効果的なコーピング行動がとれるように援助する
EP
- 在宅酸素療法の必要性について指導する
- 機器の使用方法(酸素濃縮器、携帯用酸素ボンベなど)の管理方法について指導する
- 在宅酸素療法試行中の注意点について説明する
- 在宅療養で利用できる社会資源について説明する
#7 家族が療養生活を支援する過程で、身体的・精神的・社会的・経済的な負担を生じる可能性がある
看護診断:家族介護者役割緊張リスク状態
関連因子:主な介護者としての責任、長期的な介護、不十分な介護休暇
長期目標:心身ともに安定した日常生活をおくる準備ができる
短期目標:効果的なストレスマネジメントの方法を述べることが出来る
OP
- 家族構成、役割、キーパーソン
- 住環境
- ストレスに対する対処行動の内容
TP
- 訴えを傾聴する
- 効果的なコーピング行動がとれるように支援する
- 家族間の役割調整を支援する
EP
- 在宅で利用できる社会資源について説明する
- 患者の病状について理解を促し、必要な援助と方法について説明する
以上になります!
おわりに
COPDは呼吸器症状ばかりに着目されがちですが、呼吸困難感や酸素需要増加による呼吸数増加や咳などによって、通常よりもエネルギー消費が多くなるためか、体重減少を起こしてしまっている患者さまが多い印象です。少しでも症状を軽減しながら過ごしていただくために、禁煙、服薬管理はもちろんのこと、栄養管理、活動量の調節、リハビリ計画立案など、少しでも栄養状態が維持されるような療養生活について指導を十分に行うことが大切だと思います!ただ、禁煙が高いハードルになっている患者さまも多いので、精神的なケアも行いつつ、本人の意思をくみ取りながら少しずつ生活の改善が行えるように、粘り強い支援ができたら、患者さまのQOL向上につながっていくと思います!頑張っていきましょう~!
おしまい!
参考文献
病期・病態・重症度からみた疾患別看護過程+病態関連図 103‐120P:編集 井上智子/佐藤千史:医学書院
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ページの下の方なのですが、コメントくださった方には必ず返事しますので、よかったらどうぞ!
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