栗看

~くりかん~

転倒リスク状態の看護計画の例【OP・TP・EP】

こんにちは、栗鈴です。

今回の記事は、『転倒リスク状態の看護計画【OP・TP・EP】』です!

よろしくお願いします。

 

 

 

はじめに

患者さまの安全を守るために、看護師がすべきことはなんでしょうか?

 

私はやはり、「事故を防止する」ということが第一かなぁと思います。

 

では、実際にはどんな事故があるでしょうか。
 
色々ありますが、私がすぐに思いつくのは患者さまの「転倒」および「転落」です。
どこの病院でもそうだと思うのですが、患者さまの転倒は、どうしても少なからず発生してしまうものだと私は思います。
 
看護師だって、何もない所でつまづいて、ずっコケちゃうこともありますからね。

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人生の中で一度も転んだことのない人は、誰一人いないんじゃないですかね
とはいえ、可能な限り転倒が起こらないような看護師は色々な角度から対応をしなくてはいけません。
転倒は時に交通事故レベルのダメージを身体に与えます!
例えば骨折とか‥
当たりどころ次第では、重い障害が残ることもしょっちゅうあります。
おどしてすみません!本題に入りましょう。
 
 

転倒リスク状態のリスク因子

転倒の3因子
早速ですが、転倒はなぜ起こるのでしょうか?
 
転倒が起こる要因には、大きく分けて3つの因子があります!
  1. 患者さま自身から生じる「生理的因子
  2. 患者さまのまわりから生じる「環境因子
  3. 薬による薬理作用から生じる「薬物因子

これらを、これから一つずつ勉強していきます!(^^)

1.生理的因子
いきなりですが、例えば、みなさんトイレに行きたくなったとします。
そうしたら、トイレまで歩いていきますよね。
 
「じゃあ、目を閉じたままトイレまで行ってきてください」
みなさんがこう言われたら、言うとおりに目を閉じたまま、トイレにたどり着くことができるでしょうか?
まぁなんとか気合でたどり着けるかもしれませんね。
 
では、知っている場所ではなく、知らない場所だった場合はどうでしょうか?
おそらく、たどり着くのは困難ではないでしょうか。そしたら失禁ですね( ゚д゚)
 
このように、
「目」が見えなくて転ぶとか、
「耳」が聞こえなくて、近くの人に気づかずにぶつかって転ぶとか、
「足」の筋力が低下していて、それだけで、立ったり座ったりしているだけでもバランスが取れずに転んでしまうとか‥
 
そうしたリスクのことを「生理的因子」とよびます。
 
ほかに例を挙げますと、
  1. 下肢切断、痛み、足の障害などによる「歩行困難
  2. 麻痺などによる身体の「可動性の障害
  3. メニエル病などによる「平衡機能の障害
  4. 起立性低血圧、貧血などによる「ふらつき、めまい
  5. 頻尿や過敏性腸症候群などの「排泄切迫」(慌てたり焦りなどで転んでしまう)
  6. 不眠」などにより視界不良な夜間に歩いて転んでしまう
  7. 急性期」における苦痛を伴う症状の存在
  8. 悪性新生物や低血糖などによる「倦怠感
  9. 移動に介助が必要にも関らず理解ができないことによる「認知機能の障害
などがあります。
わりと挙げるとキリが無いです。
 

 

 2.環境因子
「生理的因子」は、身体に関する転倒のリスク因子でした。
つまり、患者さまそのものに存在している「内的因子」である
といいかえることができると思います。
 
「内的因子」があれば、その反対の「外的因子」もあります。
「外的因子」それがイコール「環境因子」になります。
 
患者さまの周囲が原因で生じる転倒のリスクです。
 
例を挙げますと、
  1. 慣れない療養環境(普段布団で寝ていた患者さまが、ベッドに変わったことで眠れなくなったり、十分に休めなくなる等)
  2. 散らかった環境(チューブ、コード類等)
  3. 夜間の薄暗い照明による視界不良
  4. 排泄環境(トイレまでの距離が遠い、ポータブルトイレによる臭気や羞恥心等)
  5. 医療機器(酸素チューブや点滴、モニターのコード等)
  6. 補助器具(車椅子、歩行器、松葉杖等)
  7. 身体拘束
  8. 天候(雨や曇りで薄暗くなる等)
などがあります。
 
看護師は環境整備を日頃から行っていますが、
それを怠れば、転倒のリスクが高まると言いきっていいでしょう。
 
患者さまが気持ちよく生活できるために環境整備を行う事は、転倒の予防につながります!
 
決して手を拔かずにきっちりやっていきましょう!
 
また、入院中だけでなく退院後の生活も考えた場合は、
退院後の生活環境についても考慮しなければいけない場合もあります。
 
例えば、65歳以上で転倒リスクが高く、独居(一人暮らし)などの患者さまの場合は、必要に応じて介護保険サービスの導入や変更が必要になることもあるでしょう。
 

 

 3.薬物因子
患者さまにとって、治療のためのお薬は欠かせない場合が多々あるかと思います。
ただ、お薬は基本的に体のシステム(生理的機能)に直接働きかけるものが多く、それに伴う副作用の出現に注意が必要になります。
 
副作用の中には、転倒のリスクを高めるものがあります。
そうしたお薬を内服している患者さまは、十分な観察が必要かと思われます。
 
下記のお薬を内服している患者さまは転倒のリスクが高まりますので、注意していきましょう!
  1. 催眠薬』(中途覚醒により、足もとのふらつきが生じやすくなります:マイスリーなど)
  2.  『利尿薬』(尿回数の増えることで、移動回数も増えるため、転倒リスクが高まります:フロセミドなど)
  3.  『降圧薬』降圧作用により、ふらつきがでやすくなる(起立性低血圧を生じる:アダラートなど)
  4.  『麻薬』(約50%程度の患者さまが眠気の副作用を生じる:オキシコンチンなど)
  5.  『抗精神病薬』(不穏、せん妄、興奮など気分変動により、危険な行動や転倒の可能性が高まります:パキシルなど)
  6.  『抗うつ薬』(眠気、注意力低下などの中枢神経症状が出やすくなる:トリプタノールなど) 
  7. 抗不安薬』(注意力低下などの症状がでやすくなる:アタラックスPなど)
  8.  『アルコールの飲用』(注意力の低下が生じる:アルコール中毒など)
   
このように、転倒のリスクをずらりと上げると、かなりの量になることが分かりました。
 
実際には、ここで挙げている以外にも、様々な要因で転倒が起きてしまっているかと思います。
 
患者さまの転倒リスクの要因を1つでも除去し、転倒が少しでも減るように行動出来るようになりましょう!
 

 

転倒リスク状態の観察計画(OP)

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1.意識レベル、精神状態(穏やかであるかどうか)

見当識がない患者さまは、時間・空間の感覚が理解できないことがあります。
すると、夜に徘徊したり、歩いている道がわからずに迷ったりすることがあります。
不穏・興奮などを生じている患者さまは、異常行動の有無に注意が必要です。
 
歩けないレベルのADLであっても、ベッドから転落する可能性があります!

2.認知症の既往の有無

認知機能低下により、異常行動や夜間徘徊、不穏を生じている場合は、転倒リスクが高い!!
 

3.治療のコンプライアンス(治療拒否、入院理由が分からないなどの訴え)

認知機能低下の有無の評価に繋がる観察となります。認知機能低下≒転倒リスク高い!!

4.麻痺の有無

麻痺で生じる感覚機能障害により、移動が困難になります。


5.運動障害の有無(下肢切断、外傷、関節拘縮、下肢筋力低下など) 

下肢切断などで移動が困難な患者さまは、転倒リスクが高まるといってよいでしょう。
 

6. ADLの状態(食事・更衣・入浴・排泄・移動)

 補助具の使用の有無を確認しましょう(杖、松葉杖、車椅子、シルバーカー、歩行器など)。

 

補助具の使用の有無によって、環境要因として転倒リスクにつながってきます。
 

7. 視力・聴力の程度(眼鏡や補聴器の使用の有無) 

麻痺と同様に、感覚障害のある患者さまは転倒リスクが高まるといってよいでしょう。
 

8.めまい、ふらつき、気分不快の有無

めまいやふらつきの程度によっては、立っていられずに倒れ込んでしまうことがあります。
 

9. 環境(ベッドの高さ、柵・ポータブルトイレの有無、廊下の障害物)

散らかっていたり、不適切な場所に補助具を置くなどの要因により転倒リスクが高まります。
 

10.衣服・靴(活動しやすいものであるかどうか) 

患者さまの身につけているものも環境要因として観察するようにしていきましょう。
 

11.検査データ(Hb、血糖、その他異常値)、 脱水症状、出血傾向の有無 

貧血や脱水症状により、めまいやふらつきを生じやすくなります。
循環血液量の低下により、ショックを起こすことがあるからです。
 

12.ドレーン、ルート類の有無・状態(固定の状態や部位、絡んでいないか等)

整理れていないルート類は、転倒や自己抜去のリスクが高まります。

 
13.薬物の使用状況と離脱症状の有無

薬物

  1. 降圧薬
  2. 利尿薬
  3. 睡眠薬
  4. 抗うつ・抗不安薬
  5. 麻薬

離脱症状

  1. 眩暈
  2. せん妄
  3. 発熱
  4. 嘔吐
  5. 痙攣
  6. 不穏 
薬剤によってはめまい、ふらつき、意識レベル低下などを起こすことがあります。
確認しておくようにしましょう。
 

14.羽ばたき振戦、痙攣発作の有無(肝機能の異常、アンモニア値の異常など)   

肝性脳症の既往に注意しましょう。
 
意識レベル低下や異常行動をおこすことがあります。
 

 

転倒リスク状態のケア計画(TP)

1. 転落アセスメントスコアシートを用いたアセスメント

 施設によりますが、患者様が入院した時点で転倒リスクの程度を評価することが多いですね。転倒リスクの程度を、点数として表示している施設が多いのではないでしょうか。例えば、
  • 歩行に見守りや介助が必要なら 1点
  • 歩けなければ         2点
  • 軽度の認知症があれば     1点
  • 重度の認知症があれば     2点
  • 頻尿・失禁があれば      1点
など、転倒のリスク因子を点数化して評価をします。
 

ちなみに、私が以前勤めていた病院では、上記の評価項目で、5点以上となった患者さまは要注意としてリストアップしていました。患者識別用の腕ベルトに黄色いリボンをつけ、転倒への注意喚起を行っていました。

2. ベッド周囲の環境整備 

  •  ベッドは座った状態で床に足底がつく高さにする 。
  • 患者の状態に応じてベッド柵を使用し、使いやすいように柵の種類や位置を選択する。
  • 床頭台、オーバーテーブル、ポータブルトイレ、尿器の位置を使いやすいように整理する 。

3. 離床センサーの使用

  • ナースコールを押さずに移動するなど、指示が守れない患者さまは少なくありません。離床センサーを使用して、早期に危険行動を察知し転倒を予防しましょう。

4. 転倒を起こしやすい症状があれば安静を促す

痙攣発作、意識レベル低下、めまい、ふらつきの症状の可能性がある場合は、安静を促す!

5.チューブ類の管理を行う

 ドレーンや点滴ルート類で移動が制限されている患者さまは、ルート類を整理しましょう。

• 不要なルート類がある場合は除去しましょう。• 歩行時の転倒のリスクが高い場合、一旦ルート類を外し、ヘパリンロックするのもアリ!

6. 入院前の生活に近づける

入院前の患者の環境や生活リズムに近づけるように支援しましょう。


例えば、

  • トイレまでの距離を自宅の環境に近づける。
  • 自宅で使用していた寝具を用意していただく。

など。

7. 日中の活動を促す

出来る限り日中の活動を増やし、筋力の低下の予防や気分転換を図りましょう。

8.履き物を変える 

履き物は、滑りにくくつまづきにくい運動靴などをすすめましょう。運動靴をご家族様に購入してもらうことも検討します。

9. 排泄リズムを把握しておく

排泄行動に介助を要する患者さまは、排泄が切迫しないように早めに誘導しましょう。

  • 状況に応じて尿器、ポータブルトイレをベッドサイドに準備しましょう。
  • ポータブルトイレ時の移動で転倒が懸念される場合は滑り止めマットを敷きましょう。
  • 夜間は足もとの照明やヘッドライトで適切な照度を保ちましょう。
  • 必要時、病室やトイレに目印やラインを引き、わかりやすく表示するのもアリ!

10.補助具を用いる 

歩行が不安定な時は付き添い、必要時は車椅子などで移動を行いましょう。

11. オリエンテーションを行う

病院では転倒が起こりやすくなるということを根拠を持って説明しましょう。治療や検査、手術などで療養環境が変化する場合も、時にはあるでしょう。事前に、今後の環境の変化についてイメージできるようオリエンテーションを行いましょう。 

12. 手すりや滑り止めを使用する

入浴・シャワー時には浴槽の滑り止めや手すりについて説明し、使用してもらいましょう。

 

 

転倒リスク状態の教育計画(EP)

患者さまがはじめて入院するとき、患者さま・ご家族さまはこう考えているかも…

病院は、家よりも安全な場所だ」と。

 

一般的には、それで間違いないでしょう。

病院は、治療を行いながら落ち着いて過ごすことができる環境であるべきです。

安全・安心が保証されることは当然だと思います。

 

ですが、


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  • 廊下にモニター類などの機器があり、障害物がある
  • 車椅子、歩行器、ストレッチャーなどの用意で廊下が阻まれることがある
  • 点滴類に繋がれながら生活するなどにより、歩きづらくなる
  • 状態により、行動範囲を制限されたり、ベッド上に安静にしなくてはいけなくなる
  • 慣れない環境である
  • 医師・看護師・他の患者様などの出入りでぶつかってしまうなどの可能性がある
など、実は病院は事故が起こりやすい環境の温床になっています
したがって、病院は事故および転倒の危険性がある施設だといえるのです。
 
入院時や検査・手術の際に、患者様とご家族様に転倒リスクについて説明をした方がよいでしょう。
 
事前に転倒の可能性を意識してもらうことで、「転ばないように気をつけよう!」と思っていただけますよ。

1.ベッドサイドの環境調整方法を説明する   

  • ベッドの高さの調整やベッド柵の上げ下ろしの方法を説明しましょう。
  • ヘッドライト、床頭台、オーバーテーブル、ロッカーの使用法を説明しましょう。
  • 散らかすことなく、安全な環境で生活するように説明しましょう(*´∀`)
  • 転倒のリスク因子について説明しましょう。
  • 転倒を起こしやすい要因について、できるかぎり簡単な言葉を使って説明しましょう。

また、転倒を予防するための方法について説明しましょう。

 

例えば、降圧剤や催眠薬を内服している患者さまは、めまい・ふらつきを起こす可能性が高まります。なので、そのことについて分かりやすく説明しましょう。

それに加えて、起き上がり時や立ち上がり時は急に動かずにゆっくり動くようにお伝えしましょう。

そうすることで、患者さま自身が転倒に対する予防行動をしてくれることにつながりますよ。

2.可能ならば、日中はできるだけ活動を増やすよう説明する

安静が必要でなければ、できるだけ日中の活動を促すことが望ましいでしょう。

日中の活動が少ないと、夜間における不眠や倦怠感が起こりやすくなります。

それによってふらつきや注意力の低下など、転倒に直結する症状に繋がる可能性があります。

日中の活動の必要性について説明することで、転倒リスク因子を減らすことができますよ。

3.家族にも転倒のリスクについて説明する

患者さまの本来の生活の場は病院ではありません。

病院を退院すれば、自宅で過ごしたり、介護施設などに転院するでしょう。

病院を退院しても、患者さまの転倒のリスクは完全になくなるわけではありません。

患者様だけでなく、サポートを行うご家族様にも、転倒のリスク因子や安全な環境の必要性について説明しましょう。

自宅や介護施設での転倒を防ぐことは、骨折や脳出血などの重篤な外傷を防ぎ、臨時の再入院を減らすことにつながります。

 

以上になります!

いかがでしたでしょうか。

 

 

おわりに

日頃から転倒のリスク因子の有無を評価し、意識的に観察を行いましよう!

すると、自然に患者様・ご家族様への説明・指導ができるようになっていくと思います!若い人でも、病気のない人でも、全ての人に転倒が起こる可能性があるということを意識しましょう。

日頃から、全ての患者さまに対して転倒のリスク因子が無いかアセスメントしましょう。

そうすることで、転倒を予防するあなたの「看護力」が鍛えられると思います!

私も日々の中で五感を研ぎすまし、家のなかでも家族の転倒ゼロを目指していますよ。

 

おわり!

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