こんにちは、訪問看護師の栗鈴です。
みなさんは、
在宅療養でメジャーな疾患といえば
何が思い浮かびますか?
- 認知症
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 末期がんのターミナルケア
- 消化器系がん術後のストーマ管理
などが、代表的でしょうか?
私が勤める訪問看護ステーションでは、
上記の疾患のご利用者様は
それほど多くありません。
意外と結構多いのが、
- 変形性膝関節症
- 腰椎圧迫骨折
- 大腿骨転子部骨折
- 頚部骨折
- 脊柱管狭窄症 など
外科系の疾患の方が、
リハビリテーションのために
訪問看護を多く活用されています。
訪問看護では、
整形外科系疾患の方が多く利用されているんですね。
骨折したり、体の痛みが強い高齢の方は、ADLや栄養状態が急激に低下していきます…
ですので、訪問看護は内科系の知識だけではなく、外科系の知識も必要になります。
廃用(フレイル)予防や、ADLの範囲拡大など、介護予防・介護負担軽減のケアも大事なので、リハビリの知識・技術も必要です。
私が病院に勤めていた時は、内科系の病棟だったので、腰部脊柱管狭窄症の看護はあまり経験がありませんでした。なので、これを機に少し勉強してみようかなと思いました!
というわけで今回は、
『腰部脊柱管狭窄症の術前・術後看護計画(OP・TP・EP)』です!
それでは、やっていきましょう!
- 腰部脊柱管狭窄症
- 【概念】
- 腰部脊柱管狭窄症(術前)の看護計画
- ♯1看護問題:歩行障害
- ♯2看護問題:脊髄症状による痛みや痺れによる安楽の変調
- 腰部脊柱管狭窄症(術後)の看護計画
- ♯3看護問題:手術・侵襲ラインの存在からの感染のリスク
- ♯4看護問題:全身麻酔、ベッド上安静による呼吸機能変調のリスク
- ♯5看護問題: 安静保持や創痛により有効的な体位変換が行えないことによる皮膚統合性障害のリスク
- 【考えられる看護診断名候補と共同問題】
- まとめ
腰部脊柱管狭窄症
【概念】
加齢により、以下の病態を生じることがある。
- 椎骨の変形(骨棘形成)
- 黄色靭帯
- 椎間関節の変性や肥厚
- 異常可動性(ぐらつき)
- 腰椎椎間板ヘルニア など…
- これらが進行してくると、脊髄神経(馬尾神経) が圧迫を受け、神経症状が出現する。
- 脊柱管構成要素(椎間関節、椎間板、靱帯)は、 加齢変性により肥大や膨隆が起こることから、多くは中年以降にみられる。
- ライフスタイルも影響する。スポーツや職業などで腰に負担がかかる生活をしている方は、 神経症状を起こしやすい。
【症状】
① 腰痛
初期症状として腰痛がみられる。長期間に渡って症状が持続することが多い。
徐々に、あるいは急速に下肢の症状が進行していく。
② 間歇性跛行
- 安静時は症状を自覚していないが、 短距離を歩行しただけで下肢の痛みや痺れ等が出現し、 歩行が続けられなくなる症状を指す。
- 休息するとまた歩くことが出来るようになる。
③ 知覚異常
- 下肢の冷感を伴うことが多い。
- 寝る時には夏でも靴下が必要になるという場合が多い。また、逆に足が火照ると訴える方もいる。これらの症状は、 自律神経の機能傷害によると考えられている。 下肢のしびれもよく見られるが、罹患期間の長い患者や高度狭窄のある患者では手術後も神経症状が残ることがある。
- 突出した椎間板が脊髄神経を圧迫している時には、 坐骨神経痛と呼ばれる下肢の神経に沿った電撃痛が認められる。
④ 排尿障害
尿が出にくい(尿閉)、尿を漏らしてしまう(失禁)、 残尿感等の症状がある。
【診断】
以下の検査にて画像診断を行う。
- MRI
- 脊髄造影
- CT
【治療】
- 症状が軽微な場合には、消炎鎮痛剤・筋弛緩剤・ ビタミン剤などの服用、腰部牽引など保存的療法を行う。
- 神経症状が進行性で、画像上脊髄圧迫が明らかな場合には、 手術による減圧術が選択される。
腰部脊柱管狭窄症(術前)の看護計画
♯1看護問題:歩行障害
-
看護目標
転倒を起こさない
-
観察計画(OP)
O1:ADL状況や疼痛の有無
-
ケア計画(TP)
T1:適切な補助具を選択する
T2:必要時は介助を行う
-
教育計画(EP)
E1:転倒に注意するよう説明
E2:足に合った滑りにくい靴を履くよう説明
♯2看護問題:脊髄症状による痛みや痺れによる安楽の変調
-
看護目標
- 症状が軽減したことを言葉で話す
- 疼痛・痺れのコントロールができる
観察計画(OP)
O1:痛み・痺れの程度、維持時間、NRS
ケア計画(TP)
T1:温罨法やマッサージなどの症状の緩和の方法を検討し施行
T2:鎮痛剤や湿布の使用
教育計画(EP)
E1:疼痛・痺れの増強時はNSへ伝えるよう説明
腰部脊柱管狭窄症(術後)の看護計画
♯3看護問題:手術・侵襲ラインの存在からの感染のリスク
-
看護目標
感染徴候がない
-
観察計画(OP)
O1:創感染の症状、徴候の観察
O2:侵襲ラインの固定状況、皮膚の観察(発赤・疼痛・腫脹・ 掻痒感・潰瘍)
O3:排尿時痛、残尿感の有無、尿量、尿回数、尿の性状
O4:検査データー(WBC・CRP・尿検・尿培・創培・体温)
ケア計画(TP)
T1:ガーゼ汚染時は当てガーゼ施行。または、包帯交換施行(Dr 確認)
T2:処置時、清潔操作の徹底
T3:尿混濁、排尿異常がある時はDr へ報告する
T4:ルート交換時、清潔動作の徹底
教育計画(EP)
E1:創部・リリアドレーンには触らないよう指導する
E2:点滴施行時、異常(発赤・腫脹・疼痛・掻痒感) がある場合は、看護師に知らせるよう説明する
♯4看護問題:全身麻酔、ベッド上安静による呼吸機能変調のリスク
-
看護目標
- 十分な肺機能を示す
- 必要時深呼吸運動と咳嗽運動を行うことができる
-
観察計画(OP)
O1:呼吸数、肺聴診、SATモニターの確認
-
ケア計画(TP)
T1:安静度に応じて、安楽な体位の保持を支援する
T2:術後の呼吸状態に関する思いや不安の表出を促し、安楽が保持できるよう努める
-
教育計画(TP)
E1:深呼吸、咳嗽運動をするように指導する
♯5看護問題: 安静保持や創痛により有効的な体位変換が行えないことによる皮膚統合性障害のリスク
-
看護目標
褥瘡の発生を予防するために有効的な体位変換ができる
-
観察項目(OP)
O1:皮膚の状況の確認(褥瘡好発部位を観察)
O2:装具による皮膚障害の有無の確認
O3:栄養状態の観察(食事量、検査データ)
-
ケア計画(TP)
T1:ブレーデンスケールを評価し、適切なマットレスを選択する
T2:2~4時間毎に体位変換を施行する
T3:寝衣、シーツのシワがないようにベッドメイクを行う
T4:装具のカバー交換を定期的に行う
-
教育計画(EP)
E1:体位変換の必要性を説明し、協力を得る
【考えられる看護診断名候補と共同問題】
1.転倒のリスク状態
2.安楽の変調
3.感染のリスク状態
4.呼吸機能の変調のリスク状態
5.皮膚統合性の障害のリスク状態
以上になります!
いかがでしたでしょうか。
まとめ
腰部脊柱管狭窄症は加齢や過度な運動によっても生じるような、とてもありふれた疾患です。
しかし、看護・介護をしていると腰が痛くなることもあるし、その積み重ねで脊髄の神経が圧迫されることも決して珍しいことではないと思うので、ひとごとではないなあと記事を書きながら思いました…。
腰部脊柱管狭窄症になった患者様は、その過程の中で、他疾患の闘病や、仕事、育児など、様々なことで色々無理をしながらも頑張って生活してきた歴史があったんだろうな…と。
その人の生活・人生に寄り添った看護ができるように、また頑張っていかないとなと思いました!
また勉強したことがあれば、ブログに載せていきますので、
これからもよろしくお願いいたします!
おわり