栗看

~くりかん~

循環のフィジカルアセスメント【視診・触診・打診・聴診】

こんにちは!訪問看護師の栗鈴です。

今回は、循環のフィジカルアセスメントの方法について書いていきたいと思います! 

宜しくお願い致します。

 

はじめに

循環のフィジカルアセスメントでは、

脈 と 皮膚色の性状

の観察がメインとなります。

 

「循環器といえば心臓」

なわけですが、

今回は心臓のアセスメントは取り扱いません!

 

循環器=心臓は、

あくまでも「循環をする手段」です。

 
f:id:aiko-and-sibajyun:20161118233759j:image

 

http://p.twipple.jp/user/Wind_or_KAZeより出典

 

心臓のフィジカルアセスメントを行う場合、心臓を直接見たり触ったりすることはできませんよね。

 

なので、間接的な観察のみに範囲が絞られてしまいます。

 

血液は全身を巡っていますから、循環をアセスメントする時は、全身を観察する必要があります。

 

また、心臓よりも直接的に観察できるやり方であれば、より詳しく正確な情報を得られることができると考えられます。

 

心臓のフィジカルアセスメントも大事なのですが、

今回は、より直接的なフィジカルアセスメントの方法にフォーカスを当てて書いていきたいと思います!

 

心臓のフィジカルアセスメントはまた別の記事で書いていこうと思います(´ー`)

 

それでは、やっていきましょ(o^^o)

 

 

まずは物品の準備と、体位の調整から!


<準備>

  • 秒付きの時計
  • 聴診器
  • 必要時のみバスタオル

を用意します。

 

1.観察に適した体位の調整

  • 患者さまに楽な姿勢(仰臥位またはファーラー位が観察もしやすい)になってもらいます。

 

2.観察部位の視認

  • 患者の 上肢 と 下肢 と 頸部 を露出させます。

 

3.環境調整とプライバシー配慮

  •  対象者の羞恥心や保温に配慮します。適宜バスタオルで覆い、室温を調節します。
  • あらかじめ聴診器や手は温めておきましょう!

 

 

では、次に問診です。

問診をちゃんとしておくと、フィジカルアセスメントをするときに主観的情報と客観的情報の関連性がみえてきます。

 

<問診>

1.胸痛(有無、発症状況、部位、疼痛の性質、持続時間)

2.呼吸困難(有無、発生状況、程度、頻度)

3.咳嗽(有無、発生状況、種類、持続時間)

4.倦怠感(有無、時期、頻度、発生状況)

5.皮膚チアノーゼや蒼白の有無

6.浮腫(有無、時期、部位、発生状況)

7.上下肢の皮膚(発赤、潰瘍など皮膚障害の有無)

8.下肢疼痛(有無、疼痛の性質)

9.既往歴(高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患、血管系疾患などの有無)

10.家族歴(家族内の高血圧、心疾患、血管系疾患の有無)

 

問診が終わりましたら、早速フィジカルアセスメントをやってみましょう!


<フィジカルアセスメント>

1.視診

1.頸静脈の観察

  • 対象者に、45度のファーラー位になってもらいます。
  • 胸鎖乳突筋の上で視認できる外頸静脈の拍動および怒張の有無を観察します。


[正常所見]
・静脈が見えない場合もあるが、通常45度で外頸静脈は平らになり、消失する。


[異常所見]
・外頸静脈の片側が怒張している。


解剖学的な血管の蛇行などの可能性もありますが、危険な場合として、頸動脈瘤が生じ、頸静脈が浮き上がって怒張して見えている可能性があります。

動脈瘤によって上肢への血流にも影響が生じている場合は、血圧に左右差が生まれます。チェックしてみましょう!


・45度以上の体位で外頸静脈が怒張している、または、内頸静脈の拍動が確認できる。


中心静脈圧上昇の疑いがあります!

 

中心静脈圧上昇は、右心不全でみられる症状のひとつです。

 

心不全とは、何らかの原因によって心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送り出すことができないことで、様々な症状を呈する病態のことです。

 

心不全には左心不全と右心不全がありますが、右心不全は、血液を右心室から肺動脈に送りだす際に、原因疾患によって右心室に負荷がかかることで右心房の圧が上昇し、その結果、静脈系の血流が滞り、全身のうっ血を来たした状態を指しています。

 

したがって、45度以上の体位によって静脈系の血液の環流が妨げられると、中心静脈圧の上昇=頸静脈怒張という形になって表れるのですね。


原因疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺動脈弁膜症、虚血性心疾患(心筋梗塞など)があります。


主な症状は、頚静脈怒張や腹水、浮腫、消化管浮腫による食欲不振などがありますので、随伴症状をチェックしてみましょう!

 

2.上下肢の皮膚の色調と皮膚障害の有無を観察する。


[異常所見]
・皮膚の色調変化、腫脹、発赤、潰瘍、静脈瘤などの皮膚障害が見られる。

末梢における循環不全や動脈硬化進行の疑いがあります!

末梢冷感や痺れ、痛みなどの感覚障害を併発していないかチェックしてみましょう!


3.爪の色調と形状を観察する。
[正常所見]
・爪床はピンク色で、肥厚はない。
[異常所見]
・爪床が蒼白


チアノーゼ所見です。

末梢循環不全のため、酸素、栄養、熱が末梢組織まで届きにくくなっている状態です。

 

・ばち状指が見られる。
->末梢循環不全による手指のうっ血により、爪の根元のあたりの皮膚が浮腫んだようになるため、ばち状ゆびがみられるようになるのです。

視診は以上になります!

視診で観察すべきなのは、中枢の循環の異常と末梢の循環の異常です。 

中枢の血管である頸静脈と、末梢の循環である手足の皮膚(毛細血管)を観察することで、効率よく異常の早期発見ができると思います!

では次に、触診です(ゝω・)

触診


1.頸動脈を触診します。

  • 頸動脈洞の圧迫を避けるため、頸部の下半分で、気管と胸鎖乳突筋の間にある頸動脈を探し、左右片方ずつ触診します。(両方いっぺんに触診してしまうと、脳への血流が遮断されて失神する危険あり!)  
  • 脈拍の数、リズム、強さ、左右差の有無を一側ずつ触診する。
  • 視診で異常が疑われてなければ、橈骨動脈での触知でも問題ないです(^∇^)


[正常所見]
・中程度の強さで、リズム不整や左右差はない。
[異常所見]
・脈拍数の異常値、脈拍の微弱、または亢進、左右差がある、リズム不整がある。

不整脈の所見です!

定期的に問診と症状の観察を継続していきましょう!


2.手背を用いて上下肢とも左右対称に、末梢から中枢側に向かって触診を行う。
[正常所見]
・皮膚温に左右差はない。
[異常所見]
・部分的に冷感や熱感を感じる。

循環障害や血栓症の疑いあり!

痺れ、痛み、麻痺、感覚の程度など感覚障害が無いかチェックしてみましょう!

 

3.脛骨、足背部を、拇指を用いて5秒程度圧迫して指を離し、圧痕の程度から浮腫の有無を観察する。
[正常所見]
・圧痕は認められない。
[異常所見]
・圧痕が認められる。

浮腫の所見です。

末梢循環不全、右心不全、低アルブミン血症、腎障害などの可能性あり!

浮腫自体は大きな苦痛にはなりにくいですが、悪化すると肺水腫や静脈血栓症の発症など、重症化することがあります。注意して観察しましょう!

 

4.各動脈の脈拍の強さ、リズム、左右差の有無を確認する。

  • 上肢の動脈(橈骨動脈、尺骨動脈、上腕動脈)
  • 下肢の動脈(膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈、大腿動脈)

[正常所見]
・1分間に60~80回程度でリズム不整はなく、強さは中程度である。
[異常所見]
・明らかな左右差がある。

触知部位における動脈閉塞の疑いあり!

症状をチェックしてみましょう!
・リズム不整がある。

不整脈の所見です。

定期的に問診と症状の観察を継続していきましょう!

・脈拍の微弱、または亢進している。

ほとんどの箇所で微弱な場合は、もともと脈波が弱いことが多いようです。冷えや浮腫が起きやすい人の特徴といえますね。

ただ、末梢循環不全や血圧低下(ショック)、塞栓症などの可能性もありますので、油断せずに観察しましょう!

 

 

最後に、聴診になります。

打診は、有効な観察方法を私は学んでいないので、ここでは割愛させていただきます´Д`)

では、あと一息です!

 

聴診


1.以下の3ヵ所の頸動脈に、聴診器のベル側を軽くあて、聴診します。

呼吸音が聞こえやすい部位なので、聴診の間は息を堪えてもらいます 。

  • 顎の傾斜部
  • 頸部の中間
  • 頸の基底部

 

[正常所見]
・雑音は聴取されない。心音が聴こえるのは正常である。


[異常所見]
・ザラザラとした雑音が聴こえる。

血管の石灰化、つまり頸部における動脈硬化の進行の可能性あり!

 

以上!いかがでしたでしょうか!

 

おわりに

こうして書いていると、チアノーゼの観察など、基本的なアセスメントもありますが、呼吸のアセスメントよりもずっとマイナーで、つい見落としてしまいがちな観察事項が多かった印象がありますね。

 

かといって循環不全を見落とすと、心筋梗塞や動脈瘤などの重大な疾患を見落としてしまうことにもなりかねません。

 

油断せずにとにかく観察して経験を積むようにしていきたいですね!

 

おわり

 

皆さんのご意見をおまちしています!