みなさんこんにちは。訪問看護師の栗鈴です。今回は、精神のフィジカルアセスメントの記事になります。宜しくお願いします。
はじめに
フィジカルアセスメントで、その人の身体にどのような状態が起こっているのかを分析することができます!(*´ω`*)
そして、分析した情報から必要なケアを導き、根拠に基づいた看護を提供することが可能になります(´▽`)ノ
ぜひ、フィジカルアセスメントの知識とスキルを身に付け、 それぞれの患者さまにとっての最適なケアを行えるようになりましょう!
ところでフィジカルアセスメントといいますと、循環とか、呼吸とか、神経所見とかの、身体的な観察が代表的ですよね…
でも、フィジカルアセスメントが観察できるのは、 何も身体だけにはとどまりません。
患者さまの精神状態だって観察して分析することができます!(゜∀゜)
目と手と耳を駆使して分かることは、
なんでもフィジカルアセスメントで観察できるのです!(^∇^)
というわけで、今回のテーマはこれ。
精神状態のフィジカルアセスメント
さあ、気になったら早速やっていきましょう!
精神状態のフィジカルアセスメントの手順
<準備>
- プライバシーが確保された環境で行う。
- 観察項目の全てが必要となることは滅多にない。
- 既往歴などの問診時に、同時に精神状態をアセスメントする。
- 精神状態のアセスメントに影響を与える以下の情報を把握しておく。
- アルコール依存症や慢性腎不全(透析患者)のような、何らかの既往や健康問題
- 錯乱や抑うつの副作用がある、現在内服している薬剤
<問診>
問診を通して、
- 外観
- 行動
- 認知機能
- 思考過程と知覚
をアセスメントしていく。
例
- (家族などに対し)近頃、身なりや嗜好などの変化を感じますか ?
- ご気分はいかがですか?
- 今日は何月何日ですか?
- これまでの病歴について教えてください
事例
のび太…頭を叩かれているのに気づいておらず、痛みも感じていない
思考過程と知覚に異常あり
- 実施者の知覚と対象者の知覚が大きく異なる
- 思考が論理的でなく、辻褄が合っていない
ドラえもん…人の頭をとんかちで笑顔で叩いている
行動に異常あり
- 状況や話題に不適切な視線や表情である
[問診の注意点]
- ゆっくりとしたペースで言葉づかいに留意する
- メモを取る場合は相手に一声かける
<アセスメントの実施>
外観のアセスメント
1.服装をアセスメントする。
[正常所見]
・環境(場面)、季節(天候)、年齢、性、社会集団にふさわしく 、服は体に合っていて適切に着用されている。
・ボタンやチャックなどをきちんと閉めている。
[異常所見]
・天候や季節、環境に適していない。
・ボタンやチャックなどがきちんと閉められていない。
2.身だしなみと衛生をアセスメントする。[正常所見]
・清潔で身だしなみがよい、髪は清潔で手入れがされている。
・女性は適度に化粧をしている。男性はきれいにひげが剃られてい るか、よく手入れされている。
・爪は清潔である。
[異常所見]
・衛生的でない。
・以前はよく手入れされていた人の外観がだらしなくなった。
※ただし、身だしなみは本人の価値観が大きく影響するため、服装 の解釈は慎重に行う。
行動のアセスメント
1.視線・表情をアセスメントする。
[正常所見]
・状況に合った表情で、話題とともに適切に変化する。
・適度な気持ちのよいアイコンタクトがある。(ただし、文化的規範によって不可能な場合もある。)
[異常所見]
・表情の変化がなく、仮面様顔貌である。
・状況や話題に不適切な視線や表情である。
・視線を全く合わせない。
2.発語・会話をアセスメントする。
[正常所見]
・努力せずに喉頭音を出し、会話を適切に共有する。
・会話のペースは適度で、流暢である。
・構音は明晰で理解できる。
・語の選択は努力せずにできて、教育レベルにふさわしい。
・文章を完成させ、考えるために時折休むことができる。
[異常所見]
・発語に時間がかかり、努力を要する。
・話の辻褄が合わず、会話が支離滅裂である。
3.気分・情動をアセスメントする。
身体言語と表情、「ご気分はいかがですか」と尋ねることによって 判断する。
[正常所見]
・気分はその人の立場と状況にふさわしく、話題とともに適切に変 化する。
[異常所見]
・その場の状況や話題に不適切な気分、情動である。
認知機能のアセスメント
各種測定ツールを用いると経時的に評価できる。
1.ミニメンタルテスト(MMSE)
Folstein MF, et al: “Mini-Mental States”; a practical method for grading the cognitive states for the clinician. J Psychiatr Res, 12: 189-198, 1975 森悦朗ほか:神経疾患患者における日本語版Mini-Menta l Stateテストの有用性. 神経心理学,1:82-90, 1985. より
2.長谷川式認知症スケール(HDS-R)
(加藤伸司ほか:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R )の作成. 老年精神医学雑誌, 2: 1342, 1991より)
1.見当識をアセスメントする。
一連の面談を通して見当識を識別できる。
以下の項目についてアセスメントする。
- 時:何年、何月何日、何曜日、季節
- 場所:自身が生活している所、現在の場所、地名
- 人:自身の名前、年齢、アセスメント実施者が誰か
[正常所見]
・入院患者の多くは正確な日付について答えられないこともあるが 、そのほかの事項については正確に答えられる。
[異常所見]
・見当識障害がある。
->せん妄、認知症との識別が必要
2.注意持続時間をアセスメントする。
集中力についてアセスメントする。
注意のそれやすさや、実施者への注意困難に気をつける。
あるいは、一連の指示を与えてそれに対する行動が正確かどうか観察する。
[異常所見]
・注意持続時間の低下
->不安を抱えている、疲労している、薬物中毒
・注意力(集中力)の低下
->せん妄、認知症との識別が必要
3.近時記憶をアセスメントする。
24時間の食事を思い出してもらい、近時記憶をアセスメントする 。
[異常所見]
・直近の記憶が曖昧である。
4.遠隔記憶をアセスメントする。
過去の健康状態や最初の仕事、誕生日と記念日、歴史的出来事など 、会話の中で検証できる過去の出来事を尋ねる。
[異常所見]
・過去の記憶が曖昧である。
5.判断をアセスメントする。
会話の中で判断についてアセスメントするために、職務、社会または家族における責務、将来の計画についての答えを観察する。
また、個人的な健康管理についての合理性や、医師の指示に従うことについての判断を尋ねる。
[正常所見]
・行動や決定が現実的である。
[異常所見]
・行動や決定が非現実的である。
4.思考過程と知覚のアセスメント
1.思考過程・思考内容をアセスメントする。会話に合理性があるかどうか、対象者の発言は辻褄が合っているかどうかをアセスメントする。
[正常所見]
・思考の道筋は論理的で目標があり、首尾一貫し妥当で、完結する 。
[異常所見]
・思考が論理的でなく、辻褄が合っていない。
2.知覚・せん妄の有無をアセスメントする。
[正常所見]
・一貫して現実を知覚している。
・対象者の知覚は、実施者の知覚と一致する。
[異常所見]
・実施者の知覚と対象者の知覚が大きく異なる。
3.うつ傾向の有無や自殺企図のためのスクリーニングをする。
思考過程の問診例
- 周囲の人は、あなたに対してどのように接しますか?
- 自分をみじめに感じたり、人に迷惑をかけていると繰り返し思うことはありますか?
- 自分からもう終わりにしたい、消えてしまいたいと思うことはありますか?
- 何をしても楽しくないと感じることはありますか?
[異常所見]
・うつ傾向や自殺企図がある。
以上になります!
いかがでしたでしょうか。
おわりに
患者さまの観察は、つい身体所見ばかり集中して見てしまいがちですよね。でも、それと同等に精神状態のアセスメントにも心を配って観察するようにしていきましょう。
身体面・精神面の両方のフィジカルアセスメントがとれるようになると、患者さまのちょっとした仕草や訴えから苦しみや痛み、喜び、悲しみなどが感じ取れるようになります。ドラマなどを見ていても、登場人物の行動や考え方が分析できるようになりますので、自分の感受性がすさまじく鋭くなっているのにきっと驚くとおもいますよ(^∇^)
精神状態のフィジカルアセスメントの知識と技術を習得し、人の思いに寄り添える感性(センス)を持った看護師を目指していきましょう!
おわり!ご意見をお待ちしています。